プロが教える家づくりのヒント HINT

家づくり

土地探しのコツ



住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。

今回のテーマは
家づくりの最初の一歩ともいえる
「土地探しのコツ」です。


家づくりを考え始めたお客様にとって
土地探しは最初の関門ではないでしょうか。

「広~いリビングで
家族でのんびり過ごしたい」

「ホームパーティーが好きだから
オリジナルキッチンがほしいなあ」

家を建てようと決めたら
そんな夢がどんどん膨らんでいくものです。

ネットや雑誌で好みの家を探す時間が
楽しくてたまらなくなるという人も
たくさんいるようです。

でも、そんな夢を実現するには
まず土地が必要です。

注文住宅の場合、
土地がなくては何も始まりません。


じゃあ土地を探そう!
となったとき、
注文住宅を建てたいというお客様が
相談する先はだいたい2つ。

不動産会社と住宅会社です。

当社のお客様のように
「自分に合う住宅会社を
じっくり選んで建てたい」
と思っている場合、
土地と建物を切り離して
建物に関してしがらみのない不動産会社に
土地探しを依頼するケースが多いです。

だって、住宅会社に土地を探してもらったら
その会社で建てなきゃいけなくなるので。

いわゆる「条件付き」じゃなくても、
見つけてもらったらやっぱり・・・

※条件付き:建築条件付き土地。
 指定された施工業者で建築することを条件に
 売買される土地のこと。

だから「不動産屋さんに依頼して、
土地が決まってから住宅会社を探す」
という判断は間違ってないと思います。

でも、不動産屋さんが紹介してくれた
土地を見るときには
ぜひぜひ住宅会社に相談してください。

なぜって、不動産屋さんと住宅会社では
土地の見方が違うから。

本当に建てたい家を建てられるかを
判断できるのは、
建築の専門家である
住宅会社しかないからです。

今日は不動産屋さんと住宅会社の
土地の見方の違いと
住宅会社に相談するメリットを
お話ししていきます。



目次


1.いい土地じゃなくてもいい家は建ちます
2.ちょっと・・・という土地でも
  住宅会社なら判断できます

3.土地情報を見るときに
  気をつけてほしいこと


 



一般的に“いい土地”と言われるのは
どんな土地なんでしょうか。
 
「いい土地 条件」で検索してみると
 
・駅から近い
・学校、病院、スーパーなど
生活に便利な施設が近くにある
・公園など住環境がいい
・広い道路に面している
・前面道路が南側にある
・間口が広い
・正方形、長方形など形が整っている
・道路との高低差がない

といったところのようです。

確かに、
誰が聞いても“いい土地”ですね。

不動産屋さんが“いい土地”
というのもこういう土地で
言い換えれば、
資産価値の高い土地
だといえます。
 
でも、資産価値が高いということは
当然購入価格も高くなってしまいます。

予算がたっぷりあるのであれば、
いい土地を買うに
越したことはありません。

けれども、
限られた予算をやりくりして
いい家を建てたいと願っているなら
土地と建物にかける
お金のバランス
も大切です。
 
土地にばかりお金をかけて、
ご家族が何十年も暮らす建物にかける
お金が少なくなってしまったら
本末転倒です。
 
※ただし、現在の不動産市場では
築年数が経つにつれて
建物の評価は低くなり、
20年も経つとほとんど
ゼロになってしまいます。

一方、土地は資産になりますから、
そういう意味で土地にお金をかける
という判断はもちろんアリです。

 
「でも立地条件が悪いと
いい家は建たないんじゃ・・・」
というあなたに、
中島工務店からのアドバイスです。

土地そのものの問題は
建て方しだいでなんとかなることも多いので
優先順位は下げても大丈夫です!!!

土地そのものの問題というのは、
例えば
前面道路と高低差がある「傾斜地」
市街地で日当たりや風通しが心配な「狭小地」
きれいな長方形や正方形ではない「変形地」
などです。

これらの土地では、
建築に当たってクリアすべき条件が
多くなってしまいます。

しかしながら、
これらの土地でも
お客様の希望を叶える建築が
可能な場合があり、
住宅建築のプロならそれを
判断することができるんです。

だから、この部分の優先順位は
いったん下げて、
周辺環境など
自分ではどうにもならない条件

まずは重視してください。

学校や病院、スーパーなどの生活関連施設や
用途地域・建ぺい率・容積率などの条件が
希望に合っていれば、
不動産屋さん的には「ちょっと・・・」
というような土地も紹介してもらえるよう
お願いしておきましょう。


 


不動産屋さんから「ちょっと・・・」
という土地を紹介してもらったら、
住宅会社のスタッフに
見てもらってください。
 
住宅建築のプロは、
土地を見ればどんな家が建つか
だいたいわかります!

どうやってその土地に建つ家を
イメージするのか、
ちょっとだけプロの頭の中を
覗いてみましょう。

土地を見たときに、
プロはこんな手順で考えます。


例1. 傾斜地だったら
 
①必要な車庫スペースを確保する
②車庫スペースを除いた奥行が
 十分あるか判断する
③奥行があれば車庫の奥に建物を配置する
 なければ車庫の上に建物を配置する
 このとき「がけ条例」などの
 各種規制も考え合わせる
④お客様の希望や周辺環境を検討して
 ゾーニングを考える
 
※がけ条例
 安全のため、がけから建物までの距離を
 一定に保たなければならないという条例。
※ゾーニング
 どこにどんな空間(機能)を置くか
 だいたいの配置を考えること

 

傾斜地の場合、
上の図のように元の斜面(赤い点線)を
2段以上の高低差のある平地に
整地することから
始めなくてはいけません。

「1.土地の奥行が十分ある場合」と
「2.土地の奥行が足りない場合」では、
土地の使い方も室内のゾーニングも
違っていますね。

このほかにも、条件によっては
1階と2階のあいだに
中2階を設けるなど
スキップフロアにする方法もあります。

2の案は1の案に比べて
プライベート空間が限定されていますが、
ご家族の暮らし方によっては
こちらを好まれる方も
たくさんいらっしゃいます。

傾斜地については、
こちらの記事も参考にしてください。
傾斜地に家を建てるなら

 

例2.三方を隣家に囲まれた
   狭小地だったら


①必要な車庫スペースを確保する
②周囲に必要なスペースを確保する
(規制上必要な隣家との距離+できるだけ庭)
③残ったスペース(間口×奥行)に
 お客様が希望する大きさの家が建つか
 判断する。
④お客様の希望や周辺環境を検討して
 ゾーニングを考える。

さらに西側道路で
光と風を取り入れるのが難しい場合などは
中庭を設けるなどの方法を考えます。


車庫が1台分か2台分かで
ゾーニングが変わりました。

車が2台で、
かつどうしても庭がほしいという場合は
この土地に建てるのは難しい
という判断になりそうです。


例3.変形地だったら

①必要な車庫スペースを確保する
②お客様の希望や周辺環境を検討して
ゾーニングを考える



どちらのパターンも庭に面して
団らんスペースとキッチンがとれるので、
気持ちよく過ごせそうです。

変形地の場合は、
車庫・庭・建物を
どのように配置するのかが重要ですから
配置をしっかり考えれば
いい家になる可能性が十分あります。


ここにご紹介した3つの例のように
「この土地にどんな家が建てられるのか」を
土地購入前に相談に乗ってもらえる
のが
住宅会社に相談する最大のメリットです。

住宅会社はお客様にとって
いい家が建てられるかどうかを
“いい土地”の判断基準にしますから
一般的にいわれる“いい土地”ではないけど
自分の希望が叶えられる土地

見つかることは十分あります。

もちろん、土地を購入する前に
住宅会社に見てもらうためには、
その時点で相談できる
住宅会社がなくてはいけません。

つまり、土地探しと
住宅会社探しは同時に始めて

土地から相談しながら
家づくりを計画するのが
土地と建物にバランスよくお金をかけて
いい家を手に入れる、
ひとつの方法というわけです。





最後に、土地情報を見るときに
気をつけてほしいことをお伝えします。

駅までの距離や
周辺にスーパーや学校、病院などの
生活に必要な施設があるかどうかなどは
誰しも気にすることでしょう。

それと同じくらい注意して見てほしいのが
用途地域と建ぺい率、容積率です。

用途地域とは、都市計画法で定められた
「その土地をどんな用途に使ってよいか」
という規定です。

商業地域・工業地域・
住居専用地域などに分かれていて、
それぞれ建ててよい建物の用途が
決まっています。

戸建住宅の場合、
第一種低層住居専用地域・
第二種低層住居専用地域が
「環境がよい」として
好まれることが多いのですが、
これらの地域には住む人を守るために
様々な規制があることに注意が必要です。

例えば、第一種低層住居専用地域では
コンビニすら建てられませんから、
静かで落ち着いた暮らしが叶う一方で
「すぐ近所にコンビニ!」
というわけにはいかなくなります。
 
逆に、準工業地域では
ほとんどどんな用途の建物でも
建てられますが、
「今後、周辺に何が建つかわからない」
という意味でもあります。

建ぺい率
敷地面積に対する建築面積の割合のことで
例えば敷地面積40坪の土地で
建ぺい率60%という場合、
建築面積24坪まで建てられる
という意味です。

一方、容積率
敷地面積に対する延床面積の割合で、
敷地面積40坪の土地で
容積率200%という場合は
延床面積80坪までの建物を
建てることができます。

※建築面積
建物を真上から見たときに影ができる面積。
ただしバルコニーや軒や庇など
開放性の高い箇所は含まない。

住居専用地域の場合、
住環境を守るために
建ぺい率や容積率が
低く抑えられていることがあります。

ここに気をつけていないと、
土地購入後に実際に設計を始めてから
「思ったより小さな家しか建たない!」
とわかって困ってしまうことがあります。

また「建ぺい率が40%しかないから、
40%ギリギリまで建てよう」と
つくった場合、
建ぺい率が見直されない限り、
将来的な増築は不可能です。

もうひとつ、「市街化調整区域」でも
気をつけてほしいことがあります。

市街化調整区域も
都市計画法で定められたもので、
新築や増築をできるだけ抑える地域
となっています。

市街化調整区域で家を建てるためには
所定の基準を満たして
開発許可を取得しなければいけませんが、
一般的に市街化調整区域は
住居専用地域などに比べて
土地の価格が低く抑えられているため、
敢えて市街化調整区域に土地を購入したい
と考えられる方もいらっしゃいます。

基準を満たしていれば開発許可を取得して
新築することも可能ですが、
それには時間とお金が必要です。

開発許可に要するコストをよく考慮しないと
結果的に住居専用地域などに建てるより
高くなってしまうこともあります。

最初にも書いた通り、
自分では変えられない条件は
最初にしっかり検討しなくてはいけません。
 
不動産屋さんから土地の情報をもらったら、
これらについてもよく確認し
自分が求める環境に合っているか
判断しましょう。