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家づくり

古家付き土地を買う前に
確認しておきたいこと

 
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回のテーマは
「古家付き土地を買うときの注意点」です。
 
土地を探していると
『土地 ※現況古家あり』といった
表記がされた情報に当たることも
多いと思います。

中古住宅が建ったままの状態で
「土地」として
売りに出されているものですが、
その中古住宅=古家の築年数や状態は
様々です。

このような土地を買う場合、
買い手は中古住宅を
①解体して新築する
②リフォーム(リノベーション)する
というどちらかを選択することになります。
 
でも、いま家が建っているからといって
必ずしもそこで建て替えが
できるとはいえなかったり、
建てたい家が建てられない
といったこと
もあるんです。
 
買ってから「え?知らなかった!」
となったら大変ですよね。

今日はそんな
古家付き土地を買うときの注意点を
①敷地そのものについて
②建て替える場合
③リフォームする場合
に分けてまとめます。


目次


 

まずは古家が建っている敷地
そのものの状況について
注意したい点を見ていきましょう。

更地を買うのとは
ちょっと違った見方が必要です。


①地盤の強度
 
地盤調査が事実上義務化されたのは
2009年です。

住宅瑕疵担保履行法の施行により
建築業者の多くが保険に入りましたが、
保険法人が地盤や基礎に起因する事故を
防ぐために地盤調査を義務化したからです。

逆にいうとそれ以前は
必ずしも地盤調査が
必要だったわけではありません。

つまり2009年より前に
建った建物がある土地では、
今まで家が建っているからといって
地盤の強度が十分だとはいえない

というわけです。

古家付き土地を購入する場合も
地盤改良にかかる費用は
見込んでおきましょう。

なお解体→建替えの場合は
改めて地盤調査を行いますが、
既存の中古住宅をリフォームする場合も
超音波検査(表面波探査法)で
地盤強度を確認した方が
安心できるでしょう。

※瑕疵
 欠陥のこと。
 住宅瑕疵担保履行法では
 構造耐力上主要な部分と
 雨水の浸入を防止する部分の
 欠陥を指します。

※瑕疵担保履行法
 瑕疵が見つかった場合、
 事業者が補修したり
 瑕疵によって生じた損害を賠償する責任を負い、
 そのための資力(お金)確保を
 建築業者に義務付けるもの。
 資力確保のため、
 多くの建築業者が保険に加入している。

地盤改良(柱状改良)の様子



②土留め・擁壁の強度
 
敷地と前面道路や周辺の土地に
高低差がある場合、
必ず土留めや擁壁があります。
 
土留めや擁壁について
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
傾斜地に家を建てるなら

気をつけたいのは
土留めや擁壁の強度です。

そこに建っている家が古い場合、
通常、土留めや擁壁も同じくらいか
それ以上の年数が経過しているはずです。

その土留めや擁壁が
現在の基準で必要な強度を満たしているのか
つくったときの図面など
構造的な根拠を示す書類

見せてもらいましょう。

図面がない場合は、
建築業者など専門家に
見てもらった方がよいでしょう。

擁壁の基本的な構造は
少し掘り返せば確認できることもありますし
非破壊検査という方法もあります。

土留めや擁壁には
地盤を支える重要な役割がありますから、
建替えなどの際に
「この地盤じゃムリ!」となると
つくり直さなくてはいけません。

規模にもよりますが、
擁壁をつくり直すとなると
多額の費用が必要
です。

土地を買ってから
「家を建て直すには
擁壁もつくり直さなきゃいけない!」
なんてことにならないように、
土地購入前に確認しましょう。
 

 

次に、古家付き土地を購入後に
古家を解体して建替える場合に
注意したいことを見ていきましょう。

できれば更地にしてもらってから
購入したいところですが、
実際には「土地 ※現況古家あり」と
売り出されていたら、
購入者が買ったあとに解体から
始めなければいけないこともあります。

 
①市街化調整区域だと建替えできないかも

市街化調整区域は
都市計画法で定められた
「市街化を抑制する地域
(都市計画法第7条)」で、
この地域では原則として
新たに家を建てることはできません
(※具体的な運用は
自治体によって異なります)。

でもすでに家が建っているところを
建て替えるんだからいいんじゃないの?
と思ってしまいそうですが、
 
そこには業界用語で
「線引き」といわれるルールがあって、
1970年の指定日以前から
「宅地」として登記されていて
且つ現在まで継続して宅地である場合なら、
所有者が変わっても
住宅の建築が認められます
(1970年の何月何日が指定日になって
いるかは自治体によって異なります)。

具体的には登記事項証明書で
確認
しなくてはいけません。

まずは検討している土地が
市街化調整区域なのか
市街化区域なのかを確認し、
もしも市街化調整区域だったら
不動産屋さんにお願いして
登記事項証明書を見せてもらいましょう。

線引き後に宅地になっていた場合、
その土地の売買は厳しく制限されていて、
購入や建替えには
都市計画法の許可が必要です。

詳しい条件は自治体によって異なりますが、
やはりまずは不動産屋さんに
登記事項証明書を見せてもらった上で
自治体の担当窓口(都市計画課など)に
相談しましょう。



②用途地域や地区計画などの制限
 
用途地域は都市計画法第9条に
定められていて、
地域の環境や用途に合った利便性を
守るために様々な制限があります。
 
たとえば、
「第一種低層住居専用地域」では
落ち着いた生活環境を守るために
コンビニも建てられません。

一方、地区計画は
都市計画法第12条に定められていて、
地域の特性にもとづいて
どのような街にしていくかを
市町村が計画するものです。

住宅に関連して
よく見られる規制としては、
建物の高さや外壁・屋根の色などが
制限されたり、
建物の外壁から道路境界線までの距離が
0.5m以上、1m以上等
といったものがあります。

用途地域や地区計画が定められるより前に
家が建っていた場合、
既存住宅はそのルールに従っていなくても
やむを得ないとされますが、
次に建て替えるときには
ルールに従わなくてはいけません。

今ある建物より0.5メートル後ろに
下がらなくてはいけない!
なんてことが起こるんです。

用途地域や地区計画は
自治体のHPなどで確認できますから、
購入を考えている土地があれば
まず検索してみましょう。
 


③古家の解体費用

既存住宅の解体も
古家付き土地を購入するときには
避けて通れません。

解体費用はその家の構造や
規模によって異なりますが、
一般的に鉄筋コンクリートや鉄骨の建物は
木造住宅に比べて基礎が深い分、
費用が高くなります。

購入を検討している土地が複数あるなら、
既存住宅の構造も含めて
比較してみるとよいでしょう。

 
 

古家とは書かれているものの
まだ十分住める家もたくさんあります。

そんなときにはリフォームをして
住むことも考えたいですね。


①既存住宅が合法か確認しよう

既存住宅が建った時期にもよりますが、
例えば1980年代までだと
建築確認申請書類や完了検査済証がない
なんてこともあり得ます
(当時の建築業界では
そんなことがあり得たんです・・・)。

これらの書類は、
その建物が建築基準法をはじめとする
各種法令や条例に敵っていることを
証明する書類です。

つまり、
建築確認申請書類や完了検査済証がない
=合法と言い切れない
ということに
なってしまいます。

もしかしたら建ぺい率60%の土地に
65%の建物が建っているかもしれません。

その状態からリフォームしようとしたら、
建物を小さくしなくてはいけない
ということもあり得ます。

既存住宅のリフォームを考えている場合は、
不動産屋さんにお願いして
建築確認申請書類と完了検査済証を
見せてもらいましょう。

もしそれらの書類がなかったら、
建築士に現況が合法かどうかを
確認してもらってください。


②希望のリフォームができるか

間取りを変えるなどの
大きなリフォームをしたいなら、
希望通りにできるかどうか
あらかじめ建築士に見てもらうことを
おすすめします。

柱や壁の中には、
構造上なくしてもいいものと
絶対なくせないものがあります。

購入後に
「希望していたリフォームができない」
とならないように、
購入前に見てもらうと安心ですね。

ただしリフォームの場合は
最終的には壁を壊してみないと
どうなっているかわかりませんので、
着工後に思っていたより手間がかかる
=費用がかかるということもあるので
あらかじめご了承ください。
 
 

ここに挙げてきたことの多くは、
土地の売買に際して
不動産屋さんから重要事項説明として
買主に伝えなくてはいけないことです。

重要事項説明は専門用語も多く難しいので
きちんと理解するのはたいへんですが、
後々のためにしっかり把握してください。

とはいえ、重要事項説明を受けるのは
購入の意思がはっきりした頃でしょう。
 
検討しているときから
ここに挙げたような点を確認しておくと、
落ち着いて考えられるはずです。
 
その際は口頭での確認ではなく、
登記事項証明書・確認申請書など
公的な書類を見せてもらうのが肝心です。
 
建て替えの注意点は
こちらの記事に詳しくまとめました。
あわせてご覧ください。
建て替えの注意点