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家づくり

建替えの注意点


 
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回のテーマは
「建替えの注意点」です。
 
これまで住んでいた家を建て替えたり、
親から相続した家を建て替えたり、
古家付きの土地を買って建て替えたり。
 
今ある建物を壊して新築するというのは
わりとよくあるケースです。

ただし、このときには更地に建てるのとは
ちょっと違った注意が必要です。
 
今まで建っていたんだから
同じように建てられるはず!とはいかない、
建替えだから
考えておかないといけないポイントや
かかってしまう費用があります。

今日はもともとそこに
家が建っていたからこそ
気をつけなくてはいけない
建替えの注意点をまとめます。
 
建替えを前提に古家付き土地を検討中なら、
こちらの記事もあわせてご覧ください。
古家付き土地を買う前に


目次
 

1.建替えの注意点①
  地盤調査

2.建替えの注意点②
  解体のお金や近隣トラブル

3.建替えの注意点③
  接道義務

4.建替えの注意点④
  壁面後退が必要な場合

5.建替えの注意点⑤
  市街化調整区域

6.建替えの注意点⑥
  給水管の交換




 
建て替えを希望されるお客様が
「必要ないんじゃないの?」と
言われることが多いのが地盤関連のこと。

具体的にいうと地盤調査と地盤改良です。

今まで建ってたんだから大丈夫でしょ?
と思われる気持ちはよくわかりますが、
残念ながらそう簡単ではありません。

現在、地盤調査は
事実上義務付けられていて
建替えでも必ず行わなければいけません。

ところが、古い建物では
地盤調査が行われていないこともあるほか、
過去に地盤改良工事が行われている場合、
逆に今打たれている杭を
撤去しなくてはいけないこともある
ので
注意が必要です。

地盤調査の費用は
建物の大きさや調査方法にもよりますが、
だいたい数万円といったところ。

調査の結果、改良の必要がなければ
この数万円で終わりです。

が、地盤改良が必要になった場合は
30万円から100万円以上

かかることもあります。
 
建物の基礎部分の面積にもよりますし、
地盤が軟弱なほど
費用はたくさんかかります。

こればかりは
調査してみなくてはわかりませんが、
経験上は地盤改良が
まったく必要ないケースの方が少ないため
あらかじめ地盤改良費として
100万円くらいみておいた方が
安心できるでしょう
(使わなければほかのことに
まわせますからね!)。


それから、先ほども少し触れた
過去に地盤改良工事で
杭が打たれていた場合ですが、

お客様からは
「今ある杭を使えないの?」と
言われることもありますが、
こちらも残念ながらそうはいきません。
 
地盤改良のための杭は
間仕切りの下に位置するように
打たなくてはいけません。

これから建てる家と
古い家の間取りが同じなんてことは
ありませんから、
杭の位置が同じになることも
あり得ないわけです。

また、建物と地盤の状態に合わせて
杭の強度も設計するので、
そういう意味でも古い家の杭は使えません。

なので、古い家の杭がある場合は
その杭を抜くか破壊することになり、
その分の費用も必要
になります。

なお、古い杭をうまくよけて
新しい杭を打つことができる場合は
古い杭をそのままにしておくことも
あります。

 
 

建て替えにつきものなのが解体です。
 
解体費用はあらかじめ
見込んでいるとは思いますが、
思いのほか高くなることがあります。

どんなときに高くなってしまうのかというと
 
①鉄筋コンクリート造や鉄骨造で
通常想定されるより
大きな基礎がつくられていた場合。

②アスベストなど処分が難しい
=お金がかかる建材が含まれている場合。

③道路が狭くて重機が入れない場合。

④庭や車庫、離れなど
敷地内に壊さないように
配慮しなければいけないものがある場合。

①は地面の下が
どうなっているかわからないので、
着工後にわかってビックリするけど
やるしかないパターン。

②はかつてはアスベストが
スレート瓦にも使われていたので、
意外と直面してしまうことがある問題。

③や④は重機で一気に壊すことができず、
いろいろ養生したり
手壊しになったりする場合で、
時間も手間もずいぶん違ってきます。

①や②は一般の方が
事前に把握するのは難しいと思いますが、
③や④に当てはまると思うときには
解体費も多めに見込んでおいた方が
いいでしょう。
 


お金のことに加えて、
気をつけておきたいのが
解体工事で起こりやすい近隣トラブルです。

解体工事では騒音や
埃、振動が避けられません。

それらの点では建築工事より
むしろご近所への影響は大きく、
十分な配慮が必要です。

解体工事は
「潰すだけならどこがやっても同じ」と
思われがちで、
お客様の中には
「解体工事業者だけ安いところを
自分で探してくる」
という方もいらっしゃいます。

費用の比較も重要ですが、
着工前の挨拶まわりに始まって
近隣に対して
どのような対応をしてもらえるのかなども
しっかり確認しましょう。

建築工事を請け負う工務店としては、
できるだけ私たちに
相談してほしいところではあります
(万が一、解体でトラブルが起こると
そのあとの建築工事も
いろいろ大変になったりするので・・・)。

 
 

建て替える敷地が
都市計画または準都市計画区域内の場合、
接道義務が生じます。

建築物の敷地は幅員4m以上の道路に
2m以上接していなければならない

(建築基準法第42条・第43条)
というルールです。

こちらも
「今まで建ってたんだから大丈夫でしょ?」
といかないポイントのひとつで、
建築基準法の適用前や
都市計画区域に指定される前に
建った建物の中にはこのルールを
クリアしていないものもあるんです
(既存不適格)。
 
この場合、
建て替えなければ問題になりませんが、
建て替えるときには改めて
きちんと接道義務を満たさなくては
いけなくなります。

さらに注意したいのが、
一見すると幅員4m以上の道路に
2m以上接しているように見えるのに
そうではないというケースがあること。

考えられるパターンとしては、
①敷地に接している道路が
建築基準法上の道路ではない場合、
②敷地と接道のあいだに
ほかの人が所有する敷地がある場合
が多いでしょうか。

このあたりはこちらの記事
詳しくまとめましたので
ぜひ読んでほしいと思いますが、
こういうケースに当たると
建替えそのものができない場合がある
ということに注意してください。
 

都市計画区域内では
壁面後退にも注意しましょう。

一般的に壁面後退といわれている
ルールには2種類あり、
①建築基準法上第54条
「外壁の後退距離の制限」と
②第47条「壁面線による建築制限」
があります。


以下に簡単に解説しますが、
これも接道義務同様に
建築基準法適用前や
都市計画区域に指定される前に
建った建物には
既存不適格のものがあります。

つまり、これまで建っていた建物には
適用されていなかったけれど、
建て替えるなら新たに
このルールを守らなくいてはいけない
ということですから、
元の建物より新しい建物を
小さくしなければいけない場合があります。


①外壁の後退距離の制限
 
第1種低層住居専用地域と
第2種低層住居専用地域で
定められることがあるルールで、
建物の外壁または外壁に代わる柱を
敷地境界線から1mまたは1.5m
後退させなければならない
というもの。

緩和措置もあり、
外壁後退線からはみ出す
外壁の長さの合計が3m以下の場合
および軒の高さが2.3m以下で
且つ外壁後退線からはみ出す部分の床面積の
合計が5㎡以下の場合(物置など)は
外壁後退線よりはみ出して
建てることができます。

ただし、このルールを適用するかどうかを
具体的に決めるのは各自治体で、
第1種低層住居専用地域と
第2種低層住居専用地域でも
この制限が設けられていないところも
たくさんあります。

一方で、
風致地区や各地域の地区計画などでは
よりよい環境を守るために
さらに厳しいルールが設けられている
という場合もあるので注意が必要です。




②壁面線による建築制限

壁面線の制限は
地区計画などで定められるもので
「道路境界線から●メートル後退しなさい」
というルールです。
 
壁面線の制限がある地域では、
道路の両側の建物が
一直線上にきれいに並ぶことになります。

外壁後退との違いは、
外壁後退がすべての敷地境界線から
距離をとらなくてはいけないのに対して
壁面線は道路境界線からの距離だけが
規定されていることです。
 




 

ここまで建て替えのときに
注意したいことをお話ししてきましたが、
市街化調整区域ではそもそも
建替えができないことがあります。

市街化調整区域は
都市計画法で定められた
「市街化を抑制する地域
(都市計画法第7条)」で、
この地域では原則として
新たに家を建てることはできません

(※具体的な運用は
自治体によって異なります)。

すでに家が建っているところを
建て替えるんだからいいんじゃないの?
と思ってしまいそうですが。

そこには業界用語で
「線引き」といわれるルールがあって、
1970年の指定日以前から
「宅地」として登記されていて
且つ現在まで継続して宅地である場合なら
住宅の建築が認められます

(1970年の何月何日が
指定日になっているかは
自治体によって異なります)。

線引き後に宅地になっていた場合、
その土地の売買は厳しく制限されていて、
購入や建替えには
都市計画法の許可が必要です。

我が家が市街化調整区域内にある!
というときは、
まずここから確認した方がよいでしょう。
 


最後に、見落としがちで
ちょっと費用が発生するポイントを
ひとつご紹介しましょう。

給水菅の直径です。

30年くらい前の建物だと
給水菅の直径はだいたい13ミリです。
でも今は20ミリが一般的。

2階にもトイレをつけるのが
一般的になるなど
水まわりの設備が増え、
昔に比べて
水圧が高くないといけなくなっているため、
建て替えの際には
20ミリに取り換えることになります。

給水菅とメーターの取り換えは
自治体の管轄で、
自治体に申請して
指定給水装置工事事業者が工事を行います。

水道工事に関わる費用は
合計で20~30万円ほど

かかる場合もありますので、
こちらも予算にみておくと安心でしょう。