ヒノキ林と森林土壌について

ヒノキ林と森林土壌について

先進国では、早くから土壌の研究が進みましたが日本では、1947年に始まった国有林での土壌調査やその後の民有林の適地適木調査が始まりといえます。
 
私が森林土壌を本格的に教わったのは、1967年の段戸国有林での森林調査でした。
 
気候、標高、土壌などの自然環境が森林の成長にどれほど影響しているか、腕が痛くなるほど地面に穴を掘ってその状態を詳しく調べ、土壌断面をノートにスケッチし写真に収めました。
 
こうした森林土壌の調べ方は農林水産省林業試験場の要領によるもので、その後も多くの研究者によって専門分野の検討が加えられました。
 
国民の森林に対する関心が高まり、森林が木材生産だけでなく水源涵養など多くの機能を有し、その機能の発揮に森林土壌が大きく関わることが広く知られるようになりました。
 
森林土壌が、雨水を永い時間を経てゆっくり流しだすこと(水量平準化)や美しい水に変える働き(水質良化)は水源涵養機能としてもっとも重要視されています。
 
森林に振った雨は、葉や枝、樹幹を伝わって土壌に吸い込まれ、落ち葉などでできた表層から土壌中の大小さまざまな孔隙を通って散らばり、濾過されて徐々に流れ出します。
 
土壌調査では、落葉層の発達状態、その真下にある植物の生育に必要な腐食がしみ込んだA層(植物が生育する土層)の厚さやその状態、構造などを調べます。
 
土壌のタイプによって樹木の生長や森林の働きをも大きく左右するのです。
 
それでは、ヒノキの郷土といわれる地域の自然条件や土壌についてみてみましょう。
 
乗鞍岳から始まって日陰平山、位山を経て川上岳へと続く位山分水嶺があります。
この分水嶺は、南北に日本海側と太平洋側に分ける地形線をなし、同時に木曽ヒノキの生育地帯の境界線でもあって、日本海側にブナが、太平洋側にヒノキが生育しています。
 
河川は、東から西へ流れる木曽川とこれに合流する付知川と飛騨川があります。
 
こうしたヒノキの郷土は、表日本型の気候で、年平均気温は12℃前後、年降水量は1780から3000㎜を超える低温多雨域で、夏に雨が多く冬に乾燥し積雪量が少ないという条件がヒノキの生育に適しているのです。
 
母岩が、大半が濃飛流紋岩で、風化しにくく、水を含むと科学的に風化します粘土質の土壌が生成され、保水力はあるが土層は浅くなっています。
 
土壌は緊密で、通気性、透水性が悪く、根が地中に深く入り込む深根性のスギは生育しにくく、ヒノキは浅根性であるため、浅い土壌とともに岩を抱えるようにして生育しています。
 
この地域にヒノキが多く植林されているのもうした理由といえます。
 
さらに土壌的な特徴として、ポドゾル・弱ポドゾル化土壌が出現します。
ポドゾルは有機酸や表層還元という作用で鉄が失われ灰白色の溶脱層が現れ、植物の生育のネックになります。
 
また、一般的な褐色土壌ではなく、暗色系褐色森林土(dBD型)も出現します。
 
これらは寒冷多湿の気候条件化にできやすく、こうした環境にヒノキは生育しているのです。
 
(中島工務店 総合研究所長 中川護)
ヒノキ林と森林土壌について