襖と障子のある暮らし

襖(ふすま)の張替え1,800円という新聞折り込みに心を動かされ、新築から30年が経過した我が家の襖を張り替えることにしました。襖は、そのほとんどが傷んではいないものの、紙を通して骨組みが見えるようになったので、そろそろと思っていたところに、この折込みが目に入って心引かれたのでした。結局、張替え作業は、この折り込み業者ではなく、30年前に我が家の建具をつくった熟練技術を持つ職人さんにお願いしました。
いよいよ作業が開始され、全本数は41本のうち2階の1部屋(5本)は、まだもったいないと職人さんが1本1本確認して、大小36本を張替えとることとなリました。襖紙の質や色は、経年変化した土壁と柱や梁の色調を考慮しながら決まり、4、5日が経過して新しくなった襖が届くと、一度に部屋が明るさを増しました。
いよいよ作業が開始され、全本数は41本のうち2階の1部屋(5本)は、まだもったいないと職人さんが1本1本確認して、大小36本を張替えとることとなリました。襖紙の質や色は、経年変化した土壁と柱や梁の色調を考慮しながら決まり、4、5日が経過して新しくなった襖が届くと、一度に部屋が明るさを増しました。

和襖(わぶすま)又は組子襖(くみこぶすま)と呼ばれる襖は、何回でも繰り返し張替えができて、その内部構造は、木でつくられた骨組み(框、組子、縁など)に、幾重もの下張り(骨縛り、打付貼り、蓑貼り、べた貼り、袋貼り)の紙が貼られ、その上に表層の襖紙が張られて「7遍貼り仕上げ」となります。張替え作業は、引手(開閉の際に手をかける部分)や周囲の縁をはずしてから上張りを剥がし、専用のノリで浮かし張り(廻りだけ糊を付けて太鼓のように張ること)してから、新しい襖紙を張ります。従って、古くなった紙は無理なく剥ぐことができ、下張りの破れや骨組みの破損があれば同時に修理され、縁の傷の修繕や取り替えも可能ですが、今回はその必要はなく、「いつまでもこのまま使えますよ。」といわれました。
広告で見た1,800円の張替えは、襖の種類や内部構造が異なるものがあり、古くなった襖紙を剥がさないでその上から新しい紙を張る方式で、水張り(浮かし張り等の省略)という方法のようです。こうした簡略化した襖は、芯は木材ではなくダンボールや発泡スチロール等でつくられていることが多く、その上に襖紙がベタ張りされており、古い襖紙の上に新しい襖紙を張るので、繰り返し張替えることは困難となる場合もあるとのことです。住宅新築の際に、ヒノキ材にこだわった和襖にしていたので、30年経過して再び専門家の熟練した技術で張替えてられて、新品と同じくらいになりました。
襖がきれいになると、今度は障子が目につきます。我が家の障子の本数は、大小併せて40本で、どの部屋にも障子があります。
障害を持った妻の部屋の暖房を、寒冷地用のエアコンと電熱による床暖房に替えましたが、窓はアルミサッシの単層硝子となっていたため、機密性の確保は限界となっていました。機密性確保のために、内側に別のサッシ窓を加えて二重窓にする方法を勧められましたが、そうなると、折角こだわっていた現在の障子戸を取り外すことになるので諦めました。窓枠を交換する場合には、建築構造上外壁を剥がす必要があるため、大工事になります。しかし、新築時の外壁はヒノキの板壁としていましたから、経年変化によって反り等の箇所も見られたので、思い切って外壁を剥がしスギ板に交換しました。同時に、うらやましかった複層ガラスのアルミサッシ窓に交換し、障子を生かしました。
広告で見た1,800円の張替えは、襖の種類や内部構造が異なるものがあり、古くなった襖紙を剥がさないでその上から新しい紙を張る方式で、水張り(浮かし張り等の省略)という方法のようです。こうした簡略化した襖は、芯は木材ではなくダンボールや発泡スチロール等でつくられていることが多く、その上に襖紙がベタ張りされており、古い襖紙の上に新しい襖紙を張るので、繰り返し張替えることは困難となる場合もあるとのことです。住宅新築の際に、ヒノキ材にこだわった和襖にしていたので、30年経過して再び専門家の熟練した技術で張替えてられて、新品と同じくらいになりました。
襖がきれいになると、今度は障子が目につきます。我が家の障子の本数は、大小併せて40本で、どの部屋にも障子があります。
障害を持った妻の部屋の暖房を、寒冷地用のエアコンと電熱による床暖房に替えましたが、窓はアルミサッシの単層硝子となっていたため、機密性の確保は限界となっていました。機密性確保のために、内側に別のサッシ窓を加えて二重窓にする方法を勧められましたが、そうなると、折角こだわっていた現在の障子戸を取り外すことになるので諦めました。窓枠を交換する場合には、建築構造上外壁を剥がす必要があるため、大工事になります。しかし、新築時の外壁はヒノキの板壁としていましたから、経年変化によって反り等の箇所も見られたので、思い切って外壁を剥がしスギ板に交換しました。同時に、うらやましかった複層ガラスのアルミサッシ窓に交換し、障子を生かしました。

今時の新築住宅には和室は少なく、せいぜい1部屋あるかどうかで、障子が採用されることは極端に少なくなっています。障子が大好きな私は、一般的にはカーテンが採用される箇所も、こだわって全て障子を採用しているのです。直射日光や風を遮ることができ、保温性もあります。外部からの視線を遮りつつ採光ができ、柔らかく明るい空間づくりとなるからです。
近年、見かけなくなった障子は、日本家屋を象徴する建具の一つです。木枠に縦横に細い桟(桟と組子)を入れ、これに和紙を張る単純なもので、「明かり障子」といわれます。古くから採光と隔ての機能を果たすため、簾(すだれ)や格子などが使用されていましたが、元々は、現在の「襖」も含めて衝立や屏風などで部屋を仕切り、視界をさえぎるものを障子と呼んだようです。平安時代末期になって、障子は襖の誕生から約1世紀遅れて、紙を貼ることで「明かり子」として襖から独立した地位を得るようになり、室町時代になると、書院造りに使用される下部を板張りにした「腰付障子」が登場し、桃山時代には、数寄屋造りに使われる腰の低い障子が登場します。そして、江戸時代には、組子に意匠を凝らした多種多様な障子が作られ現代まで、日本の住宅にとって欠かせない建具として、時代とともに様々な変化を遂げました。今日、ガラスやカーテンの普及によって使用は減ったものの、ガラス併用の障子などもつくられ続けています。
扉を閉じたまま採光できるという機能は画期的で、特に我が家では、晴れた日は朝日が出始めるころ、庭木の松の影を写しながら障子を通して差し込む光線が黄金色に輝いて、最も満足感を抱くひとときです。また、夜になって、各部屋から障子を通して屋外に漏れる明かりは、屋内の温かな雰囲気までも感じさせる軟らかな明かりとなって、建物全体を幻想的に描き出す独特の景観をなし、日本の建築文化の豊かさを象徴するものと、自己満足にふけっています。ただ、メンテナンスは大変で、掃除も少々面倒になります。障子の張替えは、3、4年ごとに専門業者さんに任せますが、小型で単調なものは自ら挑戦します。障子が張替えられた後の新鮮さは、部屋の模様替えで味わう気分とは比較にならない格別な爽快感があります。障子の張替えの手間を煩わしいと思うとすれば論外ですが、季節の移ろいとともに、障子の持つ暖かさや柔らかさなど、日本の住宅に欠かせない襖や障子のある生活を「古い」と自覚しながらも感嘆しています。
中島工務店総合研究所 中川 護
近年、見かけなくなった障子は、日本家屋を象徴する建具の一つです。木枠に縦横に細い桟(桟と組子)を入れ、これに和紙を張る単純なもので、「明かり障子」といわれます。古くから採光と隔ての機能を果たすため、簾(すだれ)や格子などが使用されていましたが、元々は、現在の「襖」も含めて衝立や屏風などで部屋を仕切り、視界をさえぎるものを障子と呼んだようです。平安時代末期になって、障子は襖の誕生から約1世紀遅れて、紙を貼ることで「明かり子」として襖から独立した地位を得るようになり、室町時代になると、書院造りに使用される下部を板張りにした「腰付障子」が登場し、桃山時代には、数寄屋造りに使われる腰の低い障子が登場します。そして、江戸時代には、組子に意匠を凝らした多種多様な障子が作られ現代まで、日本の住宅にとって欠かせない建具として、時代とともに様々な変化を遂げました。今日、ガラスやカーテンの普及によって使用は減ったものの、ガラス併用の障子などもつくられ続けています。
扉を閉じたまま採光できるという機能は画期的で、特に我が家では、晴れた日は朝日が出始めるころ、庭木の松の影を写しながら障子を通して差し込む光線が黄金色に輝いて、最も満足感を抱くひとときです。また、夜になって、各部屋から障子を通して屋外に漏れる明かりは、屋内の温かな雰囲気までも感じさせる軟らかな明かりとなって、建物全体を幻想的に描き出す独特の景観をなし、日本の建築文化の豊かさを象徴するものと、自己満足にふけっています。ただ、メンテナンスは大変で、掃除も少々面倒になります。障子の張替えは、3、4年ごとに専門業者さんに任せますが、小型で単調なものは自ら挑戦します。障子が張替えられた後の新鮮さは、部屋の模様替えで味わう気分とは比較にならない格別な爽快感があります。障子の張替えの手間を煩わしいと思うとすれば論外ですが、季節の移ろいとともに、障子の持つ暖かさや柔らかさなど、日本の住宅に欠かせない襖や障子のある生活を「古い」と自覚しながらも感嘆しています。
中島工務店総合研究所 中川 護
