屋根材ってどうやって選ぶの?
家づくりのヒントをお話しするブログ。
今回のテーマは「屋根材」です。
役割があると同時に、
建物の外観イメージを決める
重要な要素のひとつでもあります。
屋根の役割はおもに7つ。
遮熱・遮音・美観。
自然の猛威から住む人を守り、
内部の音を外に伝えない、
外部の音を遮るといった
暮らしやすさにも貢献しています。
屋根材を選ぶときは
だいたいこの視点から考えているのでは
ないでしょうか
(防雨とか防風とか当たり前ですもんね)。
和風の家には和瓦を選ぶように、
屋根材の選択は建物全体のデザインと
密接に結びついています。
これまで床や壁の
仕上げ材の比較をしてきましたが、
屋根材の変更は外観イメージ
そのものに響いてしまいますから、
床や壁に比べてコストを理由に
選ぶ人が少ない部位だといえます。
>床の仕上げ材比較
>壁の仕上げ材比較
とはいえ、
屋根材も種類によってそれぞれ特徴があり、
特に建築後の経年変化や
メンテナンスには差が出てきます。
その特徴をご紹介します。
違いを確認した上で、
選び方のポイントをお話ししましょう。
4種類の瓦
□いぶし瓦
□陶器瓦/和型
□平板瓦
□S型瓦と
カラーベスト、
ガルバリウム鋼板です。
4種類の瓦の材料はすべて粘土ですが
いぶし瓦と陶器瓦は製法が異なり、
結果として色に特徴が出ます。
平板瓦とS型瓦は陶器瓦の一種で
カタチに特徴があるものです。
分類の仕方に
やや違和感があるかもしれませんが、
見ための違いが
デザインの違いにつながるので
今回はこの6つに分けて取り上げます。
では、いぶし瓦から見ていきましょう!
瓦の中でも最もお値段が張るのが
いぶし瓦。
陶器瓦が釉薬(ゆうやく)で
色をつけるのに対して、
いぶし瓦は薬をつけずに焼き上げて
最後に燻化する(いぶす)ことで
独特の銀色に仕上げます。
陶器瓦は表面に色をつけているだけなので
割ると中は素焼きの
レンガっぽい色をしていますが、
いぶし瓦は中まで銀色です。
どちらも和瓦と呼ばれる
日本の伝統的な瓦の形状と、
平たい形状の平板瓦があります。
形状の違いはデザインの違いに直結しますが
製法の違い=いぶし瓦と陶器瓦の
どちらを採用しても
デザイン的に大きな違いは生まれません。
いぶし瓦はお寺や神社に使われているため
重厚なイメージがあり、
より和風な印象に仕上げたい場合などに
好まれるようです。
先ほどもご紹介した通り、
粘土を成型後、
焼く前に釉薬で色をつけるのが陶器瓦です。
割ると、中は素焼きのレンガっぽい色です。
色は銀・黒・青など様々で
いぶし瓦に似せたいぶし色もあります。
いぶし瓦と登記瓦の和瓦には
共通の特徴として鬼瓦があります。
見たことがありますよね。
鬼瓦は厄除けや装飾を目的としていて
大きさやデザインは自由に選べ、
専門の職人さんにオリジナルで
つくってもらうこともできます。
また、鬼瓦に合わせてのし瓦を
何段か積むため、
棟が高くなるのも和瓦の特徴です。
陶器瓦の中でも平たい形状のものを
平板瓦といいます。
鬼瓦や高い棟のない平板瓦は
和の印象が薄くなるので
より幅広いデザインに似合います。
平板瓦と和瓦は並べ方が異なります。
和瓦が縦横とも
一直線に整列させるのに対し、
平板瓦は上の段の瓦の位置と半分ずつ
ずらしながら並べていきます。
並べ方が違うのは
雨水ができるだけ屋根の下に
入っていかないようにするため。
和瓦はへこんでいる部分を雨水が
まっすぐに流れ落ちていきますが
平板瓦だと瓦と瓦のすきまを
雨水が流れやすくなります。
そのときに瓦が一直線に並んでいるより
ずらしてある方が水が切れやすい
というわけです。
S型瓦は西洋建築の瓦です。
こちらも陶器瓦のひとつで
瓦の半分が半円状に
大きく盛り上がっているのが特徴です。
素焼きっぽい暖色系の色のイメージが
強いかもしれませんが
青や黒、緑など様々な色があります。
カラーベストとスレート瓦は同じもの。
スレート瓦はセメントにパルプ繊維などを
混ぜ込んでぎゅっと固めた屋根材です。
カラーベストはKMEW株式会社の
スレート瓦の商品名ですが
事実上KMEWさん1社しか
製造していないため
スレート瓦=カラーベストで
今やカラーベストという名前の方が
一般的なくらいなので
ここではカラーベストと
呼びたいと思います。
カラーベストの特徴は
なんといってもその薄さと軽さ。
見た目は平板瓦と同じですが
平板瓦より薄く
ガルバリウム鋼板より
重厚感がある仕上がりになります。
KMEW様のサイトによると
重さは平板瓦の2分の1で
地震の際に揺れを小さくする
効果があるそうです。
ただし、ほかの材料に比べて薄いからこそ
割れやすいのは否めません。
金属製の屋根材として
一般的なのがガルバリウム鋼板。
おもにアルミニウムと亜鉛で構成された
アルミ亜鉛合金メッキ鋼板です。
屋根を薄く、軽快に見せたいときに
よく採用されます。
ガルバリウム鋼板には
縦葺きと横葺きがあります。
文字通り、ガルバリウム鋼板を
縦に張るか横に張るかの違いです。
横葺きは遠目にみると
平板瓦とあまり変わりませんね。
色にもよりますが。
縦葺きの方が水が切れやすいので
勾配を緩くすることができます。
(屋根の施工は
とにかく雨漏り対策なんです)
色は赤系・青系・ベージュ系・
グレー系などなど、
さらにはつやあり・つや消しまで
とってもバリエーション豊か。
ただし年月とともに色落ちするので
塗り替えは必要になります。
(詳細は次の項目にて)
ガルバリウム鋼板を選ぶ場合は
気をつけたいことがいくつかあります。
まずは音。
やはり瓦に比べると
雨音が大きく聞こえるため
シージングボードなど吸音性がある
下地を張るのがおすすめです。
通気性にも配慮が必要です。
瓦は桟の上に留め付けるので
自然と通気層ができますが
ガルバリウム鋼板は
下地に直に貼り付けるため
その下に通気層をつくるなどの対応が
必要になります。
通期できないと熱が直に伝わって
結露が起こってしまいます。
また、金属なのでキズつきやすく
小石などが飛んできてキズがつくと
そこから錆びる恐れがあります。
とはいえ、ガルバリウム鋼板には
勾配を緩くできるという
デザイン上のメリットもあります。
耐久性と屋根勾配について
瓦・カラーベスト・ガルバリウム鋼板を
比べてみましょう。
本記事では4種類の瓦を取り上げましたが
製法やカタチが違っても瓦としての性能は
どれも同じです。
なので、ここでは瓦・カラーベスト・
ガルバリウム鋼板の3つを
比較していきます。
①耐久性
耐久性が最も優れているのは瓦です。
瓦は50年以上ほぼメンテナンスフリー
といって差し支えありません。
塗り替えは必要なく
通常、50年以上にわたって
葺き替えも必要ありません。
100年くらい経つとずれたり
割れたりする瓦が出てくるので
葺き替えを考えた方がよいでしょう。
台風や地震で瓦が飛ぶ・落ちる被害を
目にしたことがあるかもしれませんが
これは瓦を1枚ずつビス留めすることで
ほぼ防げます。
中島工務店では現在100%ビス留めです。
カラーベストは10年ごとの
メンテナンスが推奨されており、
30年で葺き替えが必要とされています。
が、実感としては20年くらいで
葺き替えが必要になっているケースが
多いようです。
(あくまで当社に相談をいただく
事例から見るとですが)
ガルバリウム鋼板は30年程度は
葺き替えなしで大丈夫。
ただし色落ちしてくるので
20年くらいで塗り替えは必要です。
②屋根勾配
水平寸法10寸に対する
立ち上がり寸法で表します。
例えば「屋根勾配 3寸」というと
水平10寸・高さ3寸という角度の
屋根だということで、
屋根勾配の数字が大きいほど
勾配がきついという意味です。
雨水の流れ方などが違うため、
屋根材ごとに対応可能な
屋根勾配が決められています。
和瓦の場合は3.5寸以上。
カラーベスト2.5寸以上が
めやすになっており、
ガルバリウム鋼板はモノによっては
1寸程度でも対応できます。
建物の印象はずいぶん違ってきます。
2.5寸と5寸じゃ
まったく違いますよね。
このように屋根材によって
デザインも変わってくるので
好みの外観の形がある場合は
早めに相談した方がよいでしょう。
デザインで選ばれることが多いと
言いましたが、
それでもやっぱり費用は気になりますよね。
最も費用を抑えられるのは
ガルバリウム鋼板の横葺き。
ガルバリウム鋼板横葺きを基準にした場合
平板瓦は15%増、
ガルバリウム縦葺きと和型陶器瓦は30%増
いぶし瓦は45%増といったところです。
ここまでの内容を踏まえて
屋根材の選び方をまとめます。
①和型か平たい形状のものかは
デザインの好みで選んでOK。
②瓦かガルバリウム鋼板かは
勾配によって選びましょう。
③好みの外観がある場合は
最初に伝えておきましょう。
(全体のデザインと予算配分にも
影響するので!)
特に具体的な希望がない場合は
設計士さんにお任せすると
全体のイメージに合った
屋根材を提案してくれるので
ひとまずお任せしてみるとよいでしょう。
中島工務店としては
耐久性に優れる瓦がいちおしです!
ところで
瓦をおすすめすると
必ずといっていいほど聞かれるのが
地震のこと。
地震のときに重たい瓦が載っていると
家がつぶれやすいのでは?との質問ですが
現在の住宅は設計時に必ず既定の方法で
耐震性能を担保しなくてはいけません。
その際には屋根の重さも考慮され、
重ければそれに応じた耐力壁量が
必要になります。
つまり、軽い屋根の家と重い屋根の家が
同じ耐震等級2だとしたら
重い屋根の家には
よりたくさんの耐力壁があって
結果的に2軒の家の耐震性能は
同程度になっているということです。
木造住宅の耐震性を担保する方法は
こちらの記事をご覧ください。
>木造住宅の構造計算免除と
耐震性を担保する方法