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設計

木造住宅の構造計算免除と
耐震性を担保する方法

住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。

今回のテーマは
「木造住宅の構造のチェック方法」です。

こちらのブログでは何度か
「木造2階建て以下は構造計算が不要だが
必ず構造の検討はします」という
趣旨のことを書いてきました。

たとえばこちらの記事でも
「3階建てにすると構造計算が必要だが
ロフトなら不要。
でも構造的に安全な強度を満たしているか
必ず検討する」と書いています。
新築住宅にロフトがほしいなら

とはいえ、構造計算と構造の検討って
何が違うのって思いませんか?

構造計算をしなくても
構造の検討をするだけで
耐震性を担保していると
いえるのでしょうか?

大きな地震が相次ぐ近年、
耐震性(=構造の安全性)は
多くのお客様が気にされることの
ひとつです。

今日はちょっと専門的になりますが
木造住宅の構造の安全性を担保する
しくみについて
①建築基準法に基づくチェック方法
②品確法に基づくチェック方法
の2つを解説します。




目次


1.構造について規定する2つの法律
  建築基準法と品確法

2.建築基準法に基づくチェック方法
3.品確法に基づくチェック方法

4.まとめ
  2階建て以下の木造住宅のチェックとは


 


木造住宅の構造について
規定した法律は2つあります。

建築基準法と品確法
(品確法:住宅の品質確保の促進等に関する法律)
です。
 

建築基準法は1950年に制定された法律で
住宅に限らず建築物全般について
「敷地、構造、設備及び
用途に関する最低の基準」
(建築基準法第一条より抜粋)を
定めています。

一方、品確法は1999年に制定された法律で
「住宅の品質確保の促進、
住宅購入者等の利益の保護及び
住宅に係る紛争の迅速かつ適正な解決」
(品確法第一条より抜粋)を
定めています。

つまり、建築基準法は
最低限守らなくてはいけない基準で、
品確法はより質のよい住宅をつくるための
基準
だといえます。

報道などで「耐震基準」という言葉を
聞くことがあると思いますが、
一般的に耐震基準といったときには
建築基準法の基準を指しています。

それでは、それぞれの基準について
簡単に解説していきましょう。



建築基準法では
耐震基準をクリアしているかどうかを
確認するために
構造計算をしなくてはいけないことに
なっています。

構造計算とは

固定荷重・積載荷重・積雪荷重・
風荷重・地震荷重などに対して、
構造物がどのように変形し、
構造物にどのような応力が発生するかを
計算すること
-wikipediaより

です。
いきなり難しいですよね~。

建物には建物自体の重さや
そこに入る人や家具の重さがかかるほか
積雪や台風、地震などの力もかかります。
 

それらの力に対して
建物がどんなふうに変形するか、
変形しようとする力に対して
建物が抵抗するときに
どのような力が生じるかを
計算で確かめようということです。

その計算結果を建築確認申請で
チェックすることによって
耐震性を担保しているわけです。
 
ここで
「2階建て以下の木造住宅では
構造計算が不要」という
話が出てきます。

いわゆる「4号特例」と呼ばれる規定で、
「4号建築物」に当たる建物の場合、
建築士が設計していれば
建築確認申請で構造強度の
審査が免除される
というものです。

4号建築物とは、
次の条件をすべて満たす建物です。

・木造2階建て以下
・延べ床面積500㎡以下
・高さ13m以下
・軒の高さが9m以下

一般的な2階建て以下の木造住宅なら、
まず4号建築物に該当しますよね。

これが「2階建て以下の木造住宅では
構造計算が不要」といわれる理由です。

ただし、4号特例は
構造計算書を添付しなくていいだけで
構造の検討は必ずしなくてはいけません。

構造を検討する基準も
建築基準法で定められています。

それが住宅会社が言う
「構造の検討」の中身なんです。

構造の検討は
建築基準法に定められた
木造建築物の「仕様規定」

もとづいておこないます。

具体的には次の3つをチェックします。

①壁量のチェック
地震力と風圧力に対して
必要な壁量を満たしているか確認。

②壁量バランスのチェック
バランスよく壁が配置されているか確認。

③接合方法のチェック
柱や梁などの接合部について
構造上必要な体力を算出し、
その耐力を満たす接合金物を選択。

要するに
必要な量の壁がバランスよく配置され
柱や梁が適切に接合されていればよい

ということですね。

詳しい計算方法は専門的になりすぎるので
割愛しますが
いずれも規定の数式を用いて算出し
基準を満たしていない場合は
設計を変更しなくてはいけません。

構造計算に比べると簡単な方法ですが
建築基準法では2階建て以下の木造住宅は
この仕様規定を満たしていれば
構造の安全性を満たしている
と判断
されます。

 




次に品確法における
構造のチェック方法を見ていきましょう。

品確法では住宅の質を向上させるために
いくつかの新しい制度ができましたが
そのひとつが住宅性能表示制度です。

その名の通り住宅の性能を
わかりやすく表示する制度で
その項目のひとつに耐震性があり
耐震等級を用いて
その家の耐震性を表示します。

耐震等級は1~3まであります。

耐震等級1:
建築基準法に定める基準を満たした強さ
数百年に一度発生する地震力に対して
倒壊・崩壊しない。

耐震等級2:
建築基準法の1.25倍の地震力に対して
倒壊・崩壊しない。

耐震等級3:
建築基準法の1.5倍の地震力に対して
倒壊・崩壊しない。


耐震等級1と建築基準法の
耐震基準が同等で、
等級2と3はそれぞれ
建築基準法の耐震基準より
高い性能となっています。

建築基準法が最低の基準なのに対し
品確法がより質のよい住宅を
つくるためのものだというのが
よくわかりますね。

耐震等級は品確法の評価方法基準に
基づいてチェック
していきます。
具体的には次の6つの手順で評価します。

①壁量のチェック
床面積に対して必要な壁量を
満たしているか確認。

②壁量バランスのチェック
バランスよく壁が配置されているか確認。

③床倍率のチェック(等級2以上)
2階の床や屋根面の方さを算出(床倍率)、
①で求めた必要壁量に応じた床倍率を確保。

④接合方法のチェック
柱や梁などの接合部について
構造上必要な耐力を算出し、
その耐力を満たす接合金物を選択。

⑤基礎のチェック
建物にかかる様々な荷重や外力に対して
十分な耐力があるか、
基礎の部材の種別や寸法を確認。

⑥横架材のチェック(等級2以上)
建物の自重や積雪荷重などに対して
横架材
(梁・桁など水平方向に架ける構造材)の
強度が十分か確認。

※①・②・④は建築基準法のチェック方法に準じる。
等級2以上ではより詳細なチェックを行う。



性能表示の規定によるチェックをすると
軸組構法による戸建木造住宅が、
構造計算を行ったのと同様の精度で、
構造の安全性をもつことを
証明したことになります。

(公益財団法人日本住宅・木材技術センター
『木造住宅のための住宅性能表示』より)
 
ちなみに中島工務店では現在、
耐震等級2相当を標準としています。

 

 

う~ん、やっぱり難しいですね・・・。
 
最後に、構造計算と建築基準法の
木造建築物の仕様規定、
品確法の耐震等級の評価方法基準を
まとめておきましょう。

<構造計算>
建築基準法に規定されており、
許容応力度計算によって
建築物の耐震性を担保する。

<木造建築物の仕様規定>
建築基準法に規定されており、
必要壁量・壁量バランス・接合方法によって
構造の安全性を満たしていると判断する。

<耐震等級の評価方法基準>
品確法に規定されており、
必要壁量・壁量バランス・床倍率・
接合方法・基礎・横架材の評価によって
耐震等級1~3を表示する。


法律上、
最低限満たさなくてはいけない基準が
建築基準法の木造建築物の仕様規定で
さらに高い耐震性を求める場合は
品確法の耐震等級の評価方法基準によって
評価していく。

これが国が定めた、
2階建て以下の木造住宅の
構造の安全性を担保する方法です。

冒頭に紹介したロフトの記事の場合、
ロフトをつくるときに
構造計算はしていないけれど
木造建築物の仕様規定にもとづいた
壁量計算や接合方法の確認を
行っているという意味ですね。

住宅会社には、
ここに紹介した3つの方法のいずれかで
構造の安全性を確認する義務があります。

きちんと構造の検討を行っている
住宅会社は設計図面等と一緒に
その書類も渡してくれるはずですので、
よく確認してみてください。
 
実際に家を建てるときに
耐震等級をどのように考えたらよいかは
こちらの記事をご覧ください。
耐震等級3は必要?