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壁の仕上げ材変更で
どのくらいコストダウンできる?

住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。

今回のテーマは
「内装費用の抑え方~壁材編」です。


こちらの記事では「床材編」として
桧・杉・樺の無垢フローリングを
比較しました。

わかりやすいととっても評判で
やはり皆さんの関心が高いテーマだと
いうことがわかりました。
床の仕上げ変更で
どのくらいコストダウンできる?



というわけで、
今回は予告通り「壁材編」です。
 
取り上げるのは
無垢の木の家でよく使われる4種類、
クロス・珪藻土・シラス壁・漆喰です。

床材同様に費用と特徴を
比較していきましょう。

なお、どの壁材も製品としては
いくつも種類がありますが、
今回は当社で使用している製品を中心に
比較しました。

特徴はメーカーや製品が異なっても
ほぼ同じですし、
費用も傾向としては変わりませんので
十分参考にしていただけると思いますが、
その点をあらかじめご了承ください。

また、床材と違って
壁材は材料費+施工費の合計金額、
いわゆる材工一式の費用で比べています。

壁材は素材によって施工方法が異なるため、
材料費だけ比べても意味がありませんから。

なお、下地材は共通で
石膏ボードであるものとします。
 
さあ!

クロス


壁の仕上げ材として
最もなじみがあるのはやはりクロスです。


クロスの特徴はなんといっても
色柄が豊富なところ。

おしゃれなカフェや美容院にいくと
「こんなのあるんだ!」っていうような
壁紙が見られますし、
最近では一般の方のお住まいでも
個性的なクロスを使っているケースが
めずらしくありません。

でも、あまり奇抜な色柄を選ぶと
家具が合わせにくかったり、
飽きてしまったりすることもあります。

メイン=大きな面積を占める部分の色柄は
無難なものにして、
個性的なデザインはアクセントとして
部分づかいするのがオススメです。
 


クロスのもうひとつの特徴は
貼り替えがしやすいこと。

塗り壁が汚れてしまった場合、
気になる部分だけ
表面を削りとることもできますが、
たいてい一面まるごと
塗り直すことになります。

それに比べるとクロスは
部分的に貼り直すこともできますし、
全体を剥がして貼り直すにしても
塗り壁ほどには手間がかかりません。
 


そして費用が一番抑えられるのも
クロスです。

クロスのお値段は幅広くて
いわゆるピンキリですが、
ここでは注文住宅で一般的に使われる
グレードのもので考えました。

賃貸住宅などに使用されるものと比べると
やや高めになるんですが、
それでもこれから紹介する塗り壁よりは
グッと控えめなお値段です。

 
 
珪藻土(けいそうエコナ)

 

自然素材の塗り壁材として人気の珪藻土。

珪藻(けいそう)という藻類の一種の
化石が積み重なって堅くなった土で、
主成分は二酸化ケイ素。
調湿機能、消臭機能が特徴です。

珪藻土は直径2~50ナノメートルという
ごくごく小さな穴が無数にあいた
多孔質素材なので、
その穴が湿気を吸ったり吐いたりすることで
調湿するというしくみです。

同時ににおいの元を吸い取ってくれるので
消臭効果もあるとされています。

最近では珪藻土バスマットが人気ですが、
あれも珪藻土の吸水性を活かしたものです。
 
仕上がりはザラザラしたテクスチャーで、
左官の仕上げ方によって
独特の風合いを演出できます。

塗り壁の中では色のバリエーションも多く
自然素材らしいやわらかな色合いに加えて
赤・黒・グリーンなども選べます。
 


珪藻土もお値段に幅があります。
その理由を簡単にいうと、
混ぜているものが違うから。

珪藻土は粘土などと違って
水を混ぜても固まらないため
結合材と呼ばれる
固めるための成分が必要なのですが、
メーカーや製品によって
その成分が異なります。

混合材の種類によっては
珪藻土の穴をふさいでしまって
せっかくの調湿性を
損なってしまうものもあるとか。

珪藻土の特徴を損なわないものを
混ぜている製品ほど
お値段も高めという傾向があります。

当社ではフジワラ化学の
けいそうエコナを採用しています。
結合剤は合成樹脂エマルジョン。

化学製品ですが
調湿性にはほとんど影響せず、
ホルムアルデヒドも含みません。

お値段はというとクロスの約2倍。
 
おもな左官材の中では
珪藻土は一番費用を抑えられるんですが
それでもクロスの2倍になります。



シラス壁(中霧島壁ライト)

 

シラスは火山から噴出したマグマが
岩石となる前に粉末になったもので、
主成分は珪酸。

珪藻土同様に調湿機能、
消臭機能があります。

まあ珪藻土の主成分=二酸化ケイ素が
水と結合したのが
シラスの主成分=珪酸なので、
そうなりますよね。
 
じゃあ珪藻土とシラスの違いは
何なのかというと、
珪藻土同様にシラスを左官材にするためには
混ぜものが必要なんですが、
シラス壁はその混合材も
100%自然素材と謳っています。

メーカーや製品による違いはないの?
と思われるかもしれませんが、
そこもシラス壁が
ほかの左官材と違うところで、
シラス壁のメーカーは
高千穂シラスさん一社です。
(ほかにもあるのかな?
調べても見つけられません)
 
つまり高千穂シラスさんの製品が
そのままシラス壁の仕様や特徴になる
というわけです。



そういうわけで、
仕上がりの特徴と費用の比較については
高千穂シラスの中霧島壁ライトで
検討しましょう。

仕上がりはこちらもザラザラしていて、
左官の仕上げ方によって印象が変わるのも
珪藻土と同じです。

色のバリエーションは少なめで、
自然素材らしい
落ち着いた色合いが中心です。
 
費用はクロスの約3倍。
珪藻土よりさらにお高めです。


 
漆喰

 

漆喰は伝統的によく使われてきた左官材で
姫路城が真っ白に見えるのも
漆喰で表面を塗り固めているからです。

主原料は石灰石からつくられる消石灰。

主成分は水酸化カルシウムで、
吸水・吸湿という特性を持つので
やはり調湿性があります。

二酸化炭素を吸うと硬化する特性もあり、
壁材としても塗ってから
年月が経つほど固くなっていきます。
 
消石灰に海藻(フノリ)・麻の繊維を混ぜる
昔ながらの製法でつくったものを
本漆喰といいますが、
現在の漆喰メーカーの製品は
ほとんど本漆喰ではありません。

施工性を高めたり製造コストを抑えるために
様々な混合材が使われており、
中には接着剤など
化学製品を使用しているものもあります。

珪藻土にもいえることですが、
化学製品を使っているからといって
自然素材としてのよさが損なわれるとは
限りません。

健康や環境に配慮した製品もあれば
そうでないものもあります。

珪藻土同様、
原料に何をどのくらい使っているかで
お値段に幅が出ます。

漆喰は珪藻土やシラス壁と異なり、
表面をつるんと仕上げることができます。

漆喰といえばつるんとした仕上げを
思い浮かべる方も多いと思いますが、
もちろんパターンをつけることもできます。

つるつるに仕上げる場合は
職人の腕の差が出やすいので注意が必要です。

本来、漆喰は原料が消石灰なので
色は白しかありません。

カラフルな漆喰も見かけますが、
原料が消石灰ではない“漆喰調”の塗り壁か、
ヨーロッパ製の顔料を混ぜた輸入品です。
 
気になる費用はクロスの約4倍。
珪藻土と比べても2倍ほどになるので、
かなり高いなぁという印象です。


 
内装材でコストダウンしたいなら
床材より壁材!

 

クロス・珪藻土・シラス壁・漆喰という
無垢の木の家でよく使われる
壁の仕上げ材を比べてきましたが、
どれを選ぶかによって
結構お値段の差が出るなぁ
という印象ではありませんか。

床材の比較では
最も安い杉節ありと
最も高い桧上小節の差が
約1.6倍でしたから、
壁材の方が費用への影響は
大きいといえます。

つまり内装材でコストダウンしたいなら
床材より壁材の変更を検討した方が
効果が見られやすいということ。

とはいえ壁は床より面積が大きい分、
空間全体の印象への影響も大きいので、
コストダウンを優先してあきらめてしまうと
住み始めてから後悔することもあります。

見積もり後は設計士さんに相談しながら、
じっくり検討しましょう。


そのほかの壁仕上げ材
エコフリース・ウォーロ・エコカラット

 

最後に当社で最近採用している
そのほかの壁材や
部分使いに適した壁材を
ご紹介しましょう。
 
環境壁紙 エコフリース
エコフリースの原料は天然紙で、
通気性・吸湿性があります。

最大の特徴は塗り替えできること。

先ほどクロスの特徴として
貼り替えが簡単だといいましたが、
クロスをはがす手間すらなくして
何度でも上から塗り直せるように
したんだそうです。

2016年発売の製品で
当社で塗り替えたことはまだありませんが、
クロスより環境に配慮した選択肢として
ご提案しています。

費用はクロスの約1.3倍です。


天然素材100%の塗り壁材 ウォーロ
2016年発売の塗り壁材・ウォーロ
おもな原料は消石灰(漆喰の原料)、
ゼオライト(天然沸石)、
珪藻土、シリカ真空ビーズ。

つまり漆喰と珪藻土の特性に加えて、
吸着性が高いというゼオライトの特性を備え
火山灰鉱物からつくった特殊真空ビーズの
断熱性を足した左官材です。

従来の左官材の優れた機能を受け継ぎつつ
さらに断熱性を加えて、
一方でお値段を抑えた製品です。

なんだかよさげに聞こえますね。

でもまだ発売から
2年しか経っていないので
経年変化はこれから
確かめなくてはいけません。
費用はクロスの約2倍です。


部分づかいに向いているもの
和紙・板・エコカラット

このあたりは壁全体に貼ると
重い印象になってしまいがちなので、
アクセント壁に使うのがオススメです。

和紙を貼ると
和風な雰囲気が強くなります。
(当たり前ですが)
 
板も部屋全体に張ると
まるで山小屋のようになりますが、
部分的にうまく使えば
木の家らしい趣を演出できます。

エコカラットはLIXILの建材ですが、
鉱物が原料でやはり調湿性があります。

デザイン性が高く、
当社では寝室やリビングの一部に
アクセントとして使うケースが多いです。
 

板の部分づかい







エコカラットの部分づかい


床・壁ときたら次は屋根ですよね。
仕上げ材の比較シリーズ・屋根材編は
こちらをご覧ください。
屋根材ってどうやって選ぶの?