プロが教える家づくりのヒント HINT

設計

床の仕上げ材変更で
どのくらいコストダウンできる?

住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。

今回のテーマは
「内装費用の抑え方~床材編~」です。

夢が膨らむ家づくりの計画では、
アレコレ希望を盛り込んでいるうちに
当初の予算をオーバーしてしまうのは
珍しいことではありません。

すると、見積書とにらめっこしながら
「何を削ろう・・・」と
考えることになってしまうんですが。

予算を抑える方法は、
面積を小さくする、
設備のグレードを落とす、
造作家具を減らすなど
いくつかありますが、
比較的よく検討される方法のひとつが
内装材の変更です。

「塗り壁をやめてクロスにした」
なんて話、聞きますよね。

でも、実際どのくらい費用の差が出て、
仕上がりや使い勝手は
どんなふうに変わってくるのでしょうか。

というわけで、
内装材で大きな面積(=費用)を占める
床材と壁材の費用と特徴を
2回に分けて材料別に比較してみましょう。

まず1回目の今回取り上げるのは
床材、特に無垢フローリングです。

具体的にはこの5つ:
・杉節あり
・杉節なし(上小節)
・樺節なし
・桧節あり
・桧節なし(上小節)
 
なお、価格の比較は
あくまで中島工務店の場合で、
地域や流通経路によって
異なる場合がありますので
ご了承ください。

それでは見ていきましょう!
 

※予算調整のための見積書の見方は
こちらの記事を参考にしてください。
注文住宅の見積書のチェックポイント




目次


1.床材①杉フローリング材(節あり)
2.床材②杉フローリング材(節なし)
3.床材③樺フローリング

4.床材④桧フローリング(節あり)

5.床材⑤桧フローリング(節なし)
6.桧フローリングのコストダウンの方法
7.床材まとめ


 


 

床材の比較を始める前に、
今回の条件を確認しておきます。

床材については
長さ3m、
幅105mm前後
(材によって若干異なります)、
厚さ15mm
で比較しています。

実際に家を建てるときには
2mや4mの材を使うことがあり、
それによって単価が
変わってくることもあります。

のちほどそのケースもご紹介しますが、
ひとまず3m材という条件で
比較してみましょう。

また施工費はどの材料でも変わりませんので
材料費のみの比較とします。
 


今回比較する無垢フローリングの中で
最もお値段を抑えられるのが
杉節ありです。

杉はやわらかくて足ざわりがよく、
ぬくもりが感じられるのが特徴です。

ただし、やわらかい分
キズがつきやすい点には注意が必要です。

杉は赤身と白身といわれる
色のコントラストが
いかにも木っぽく見え、
特に節ありだと素朴な印象が増すので
「あたたかい感じが好き」と
言われることもよくあります。
 






同じ杉でも節なし(上小節)になると
印象が変わります。
 



杉なのにずいぶん白いなぁ
という印象ですね。

やわらかくて足ざわりがいいのは
節ありと同じで、
キズつきやすいのも変わりません。

お値段は杉節ありのおよそ1.15倍。
それほど大きな差はないといえそうです。

 

 

桧に近い色合いで、
杉や桧より堅くて
キズつきにくいのが特徴です。

その分、足ざわりは
やや冷たく感じられます。

木目がはっきり見えずやわらかい色なので、
中島工務店のような桧の柱を使う家に
似合う床材だといえます。
 


樺のお値段ですが、
樺だけどうしても同じ条件で比較できず
2mもの・塗装品での比較となります。

理由は2つ、
①通常2mものが多く
3mものの単価が把握できない、
②塗装品を使うことが多い
からです。

①については、ほかの床材も含めて
坪単価に換算して比較しました。

②の塗装の話ですが
ここでご紹介している
杉や桧の無垢フローリング、
当社では通常無塗装品を仕入れて
施工時に塗装します。
(塗装費用はどの材でも同じなので
今回の比較には影響しません)
 
では、なぜ樺だけ
塗装品を使っているのかというと、
樺は塗装前に一度表面を
なめらかに削らなければならず
(でないと塗装後に毛羽立つことがある)、
その分施工手間=施工費がかかります。
 
さらに仕上がりも塗装品の方がキレイで、
コストと出来映えを考えると
塗装品を選ぶ方が多くなっています。

以上のような条件の違いを踏まえつつ、
まずは単純に製品単価を比較すると・・・。

樺は杉節なしと同じくらいのお値段、
つまり杉節ありの1.15倍くらいです。

でもでも、さきほど書いた通り
樺は塗装品なので
施工時の塗装費がかかりません。

ということは、施工費まで含めると
杉の節なしより少し安い!
ということになります。
(杉の節ありよりは高いです)
 
とはいえ、杉節ありと杉節なしの差って
そもそも0.15倍しかありませんから、
それほど差はないといっていいでしょう。







 

杉に比べると白く、
その分だけ節が目につきます。

杉よりは堅く、樺よりはやわらかい
といったところですが、
やはりキズはつきやすく、
ペットと一緒に暮らすと
なかなか大変なことになるでしょう。

お値段は杉節ありの1.3倍。

杉上小節や樺と比べると
やや高いといったところです。
 





 

建築用材として最上級といわれるのが
こちら、桧上小節です。

白く美しい見た目が特徴で、
特に岐阜県産だと最初の頃は
ピンクがかった独特の美しさが見られます。
 


上の写真でも
ややピンクがかかっているのが
わかるでしょうか。

今回取り上げる
無垢フローリングの中では
最も高く杉節ありの1.6倍くらい。

このくらいになってくると
少し差がつくなぁという印象ですね。

ただし、最初に少しお話しした
材の長さによって
単価が変わるのがこの桧なんです!

 

 

結論からいうと、
桧の床材は長いほど高くなります。

先ほどご紹介した通り、
3mの場合のお値段は
桧の上小節が杉節ありの1.6倍でしたが、
これが4mものになると
価格差が約3倍に広がります。



杉ではこのようなことはなく、
長さが違っても
単価はほとんど変わりません。

桧は杉に比べて建築用材として
使えるようになるまでに
年数がかかるなど、
植えてから製品になるまでに
より手間がかかるからでしょうか。

わりと大きな差がついています。
 
逆にいうと短い材を使えば
コストダウンできるということ!

使用する面積にもよりますが、
4mの桧上小節を2mに変更すると
それなりのコストダウンになりそうです。

コストに関して床材を見直す
ひとつのポイントだといえそうですね。

 

 

ここまで長さ3mあたりの
単価で比べてきたので、
じゃあ家1軒分だとどうなの?
というのも見ておくと・・・
 
延床面積35坪の家で
床材をALL杉節ありにした場合と
ALL桧上小節にした場合の差は、
およそ20万円!

う~ん・・・
気にならないほど
小さな差でもありませんが、
ものすごく大きな差もつかない
といったところですね。

もちろん、最終的な予算調整では
このような数十万円の差を
積み重ねていくことになるので
この価格差も重要なんですが。
 
桧節なし(上小節)



実際のところ、
ALL杉節ありとかALL桧上小節
というケースはあまりなく、
「お客様を迎える玄関は
上質な印象の桧上小節・
子どもが遊ぶ2階は
足ざわりがいい杉節あり」
といった具合に
空間のイメージや使い方によって
張り分けることがほとんどです。

なので、現実的には
床材を変えることによる
コストダウン効果は
数万~10万円程度と限定的。

全体予算をにらみながらではありますが
ある程度好みを優先して選んでも
いいといえるでしょう。

床は面積が大きく目にもつきやすいので、
どんな床材を選ぶかによって
空間のイメージが左右されます。

また床材に合わせて
同じく木でつくる建具や巾木、窓枠などの
樹種を決めていくことも多く、
そういう意味でも
インテリア全体に影響するといえます。

コストダウン効果が限定的である以上、
床材は好みやデザインを重視して選んで
ほかのところで費用を抑えるというのも
アリじゃないでしょうか。
 
では壁材はどうなのか???
実はこちらの方が
仕上げ材の変更による
コスト削減効果は大きいんです!