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設計

注文住宅の見積書のチェックポイント

住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。

今回のテーマは
「見積書のチェックポイント」です。

家づくりってすごくワクワクするものですが
お金の話はちょっと別。
 
数千万円というこれまで
見たことがないような金額の買い物で、
しかも20年も30年もローン返済が続く
なんて考えると不安になって当たり前です。

なのに、
注文住宅の見積書って難しい・・・。

項目を見たって何がなんだかわからないし
どうしても要るものなのか
なくてもいいのかもわからない、
金額が妥当かどうかもわからない。

でも!
注文住宅の計画に付きものの予算調整は、
その見積書をベースに
やっていかなきゃいけないんです。

というわけで、
今回は注文住宅の見積書の見方を
中島工務店を例にお話しします。

特に予算調整に役立つ
見積書の読み解き方をご紹介しますので、
参考にしてみてください。

なお、今回取り上げるのは
当社のようなゼロから設計を始める
注文住宅の場合
です。

「注文住宅」を掲げていても
実際にはプラン集から
諸条件に当てはまる基本プランを選んで
オプションで施主の希望を追加していく
というパターンの住宅会社もあります。
(プラン集をお客様に
見せるかどうかは別にして)
 
そのケースでは、
基本プランの金額に
オプション金額を追加していくような
見積もり方法を取るのが一般的で、
見積書もそのような書式に
なっていることが多いので、
今回お話しする内容は当てはまりません。




目次


1.注文住宅の見積もり方
2.見積書をもらうタイミング
  概算見積もりと詳細見積もり

3.見積書の見方
  チェックポイントの前に
  構成を理解しよう

4.見積書の見方
  ①すべての項目を説明してもらおう

5.見積書の見方
  ②含まれているもの・いないもの

6.見積書の見方
  ③特殊な費用の確認

7.見積書の見方
  ④値引きの説明を受けよう

8.まとめ 予算調整に挑戦しよう

 

 

見積書の見方をお話しする前に、
ゼロから設計を始める
注文住宅の見積もりのやり方を
少しだけご紹介します。

一言でいえば
部材の拾い出し→積み上げ方式です。

こちらは中島工務店の
新築住宅の見積書の一部で、
造作材を記載したページです。
(さすがに金額は消させてくださいね)
 


下地や枠などの部材が
どんな材料・サイズで
何本いるかが記載されています。

このようにその家を建てるために
必要な部材をひとつひとつ拾い出して
必要数 × 単価の合計を出していくのが
ゼロから設計を始める
注文住宅の一般的な見積もり方法です。

 

部材の拾い出し→積み上げ
というやり方を知ってもらうと
わかると思いますが、
設計が細かいところまで決まらないと
きちんとした見積もりはできません。

でも、お客様としては
予算内で希望が叶うのかどうかを
もっと早く知りたいですよね。

私たち住宅会社側としても、
おおよそのプランと金額に合意してから
細かい打ち合わせを進めていきたいと
思っています。

いっぱい打ち合わせした末に
「予算オーバーで建てられない!」
となるとお互い悲しいですもんね。

そこで中島工務店では
お客様の要望を聞き取って
プランを提案させて頂く際に
同時に概算見積もり提示しています。

▼ こんな感じ ▼


先ほどの見積書と比べると、
細かい部材を拾う代わりに
面積で計算しているのがわかりますよね。
 
まだ細かいところが決まっていないので、
面積 × 単価でだいたいの金額を出す
というわけです。

ゼロから設計を始める注文住宅の場合は
このように
プラン提案時に概算見積もり、
図面決定後に詳細見積もり

提示することが多いでしょう。

もちろん、
プラン提案~図面決定までの間にも
見積もりを出してくれることも
あると思いますが、
重要なのは
「このプランと概算金額で
設計を進めていくかどうか」を判断する
最初の概算見積もりと
具体的な要望を反映した結果の
詳細見積もり
です。

最初の概算見積もりは
あくまで参考ですから
希望を伝えるほどに
金額が上がることもあれば、
仕様しだいで減額になることもあります。

ただ、一生に一度の家づくり!と思うと
ほとんどのお客様が
希望が増えることはあっても
減ることはありませんから、
たいてい詳細見積もりは
概算見積もりより高額になってしまいます。

そこで予算調整が始まります。
 
では!見積書の見方を確認していきましょう。


 

予算調整に役立つ
見積書の見方をお話しする前に、
見積書の構成を確認しておきましょう。

一般的に注文住宅の見積書は
最初に大きな項目が提示され、
ページを進むと
だんだん詳しい明細があります。
 
表紙はこんな感じで、
合計金額が書いてあります。


次のページ(p2)には
すべての工事が列挙されています。

さらに次のページ(p3)には
p2の一番上に書かれていた
「A.建築本体工事」に含まれる工事が
すべて記載されています。

次のページ(p4)は
p3の一番上に書かれていた
「A.建築本体工事」の
「1.仮設工事の明細」です。

このあとは
「A.建築本体工事」の
「1.仮設工事」の明細
→「2.基礎工事」・・・と続き、
「10.家具工事」の明細が終わったら、
p2の2番目にあった
「B.住宅設備工事」に含まれる
すべての工事が記載されたページがあり、
さらにその明細が1~並びます。
これを繰り返してp2にあった
すべての工事を網羅したら終わりです。

見慣れない分厚い見積書だと思いますので
まずはこのような構成になっていることを
知っておいてください。

なお、ここでどのくらいまで細かく
拾い出しているかによって
その会社の取り組み姿勢がわかります。

細かく出しているほど
材料や設備の仕入れ、
協力業者の工事内容まで
しっかり管理していると
考えてよいでしょう。


 

見積書をもらったら、
すべての項目が何なのかを
説明してもらいましょう。

特に詳細見積もりはその中身がわからないと
どうしても変更できないものはどれで、
取りやめたり仕様変更できるものは
どれなのかが判断できません。

見積もり内容をすべて把握することは
予算調整の第一歩です。
 
中島工務店の詳細見積書は
80~100ページほどもありますが、
およそ1時間かけて
すべての項目を説明しています。

ちょっとたいへんな作業ですが、
ここで納得できるまで聞いておくと
次にご紹介する②~④の確認が
スムーズにできます。

 

項目を説明してもらったら、
要望したものが
きちんと計上されているか
どうかを
確認しましょう。

設計図にもとづいて
見積もりをするわけですから、
見積書に載っていないものは
設計にも含まれていない恐れがあります。

大切な我が家です、
よ~くチェックしてください。

一方、予算管理という意味では
「含まれていないもの」も重要です。

詳細見積もり時には
必要なすべての部材を拾い出しますが
その時点で決まっていないものは
見積書に含まれていません。

中島工務店では、
例えば以下のようなものが
含まれていないことがあります。
 
□上下水道本管接続工事費
市に申し込んだ後でないと金額がわからない
□地盤改良費
地盤調査が済んでいない場合は
含まれていない
(詳細見積もりには含まれています)
□エアコン設備工事費・
 外構造園工事費・
 カーテン代など
施主支給にするかもしれないものや
別途手配の可能性があるものは
計上しないことも

 
ここに挙げた項目だけで
合計金額は300万円以上になります。

つまり見積書に書かれた金額に加えて
300万円は必要になるということなので
しっかり把握しておかないと
たいへんなことになりますよね。

見積もりの説明を受ける際には
担当者に「ここに書かれている費用のほかに
住み始めるまでに必要な費用」を
必ず確認
してください。

 

 

特殊な費用とは、
敷地条件や法的規制など
諸条件から避けることができない
「ウチだからかかってしまう費用」
です。

例えば、
・傾斜地で数メートルの擁壁が必要
→擁壁工事費がそれなりに計上される
・敷地までの進入路が狭くて
 トラックや重機が入れない
→通常と違う資材の運搬や
 施工方法が必要になるので
 その分の費用が計上される
・準防火地域に建てる
→延焼ラインにかかる
 外壁・軒裏を防火構造に、
 開口部を防火戸にしなくては
 いけないので割高になる

お客様の希望が
直接カタチになる費用ではないので
私たちとしてもできるだけ
抑えられるように努めますが、
どうしてもそれなりの金額は必要です。

坪単価などの計算をすると
割高に感じられるかもしれませんが、
理由があってそうなっています。

なぜ割高になるのかを
しっかり説明してもらって、
削れない費用として
把握しておいてください。
 

 

見積書の最後の方に
「調整値引き」あるいは「出精値引き」
といった項目があるかもしれません。

数千円単位の端数を切ってあるくらいなら
「ありがとう!」と喜んでおけばいいですが
数十万円以上の値引きがされているときには
理由を確認した方がよいでしょう。

というのも、
きちんとした見積もりをしていれば
カンタンに値引きすることはできません。

だって、その家をつくるためには
それだけの材料と手間が必要なんですから。

具体的な根拠なく
大きな値引きがされていたら、
元の見積もりは何だったの!?
ということになります。

悪質なケースでは、
最初にわざと高めの金額を出しておいて
最後にそれを値引いて見せる
なんてこともあるらしいです。

ですので大幅な値引きを見つけたら
理由を説明してもらってください。
それが納得できたら
喜んで受け入れましょう!

 

見積書をもらって
以上の点を確認したら
予算調整を始めてみましょう。

大幅な設計変更をしない限り
構造など安心安全にかかわる部分の
費用はほぼ削れませんので、
ひとまず受け入れましょう。

先ほどお話しした「特殊な費用」も
基本的には同じですが、
例えば準防火地域の防火戸などは
窓の数を減らしたり
サイズを小さくするといった
調整方法もありますので
相談してみるといいでしょう。

あとは自分たちの要望に
優先順位をつけながら、
設計士と相談を進めてください。

費用を抑えることに集中しすぎると
家全体のバランスが崩れてしまったり、
住み始めてから
「やっぱり取りやめなければよかった」
なんてこともあり得ます。

プロとじっくり相談しながら
最良の住まいになるように
調整していきましょう。