プロが教える家づくりのヒント HINT

設計

カーポート計画の注意点


 
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。

今回のテーマは「車庫」です。
 
戸建住宅のプランを考えるときに
「車をどう停めるか」は
最初に考える重要なポイントのひとつです。

こちらの記事でもご紹介した通り、
建築のプロが敷地を判断する最初の手順が
必要な車庫のスペースを確保したときに
お客様が希望する家が建てられるか
だからです。

そして
駐車スペースが取れるとわかっても、
プラン全体のバランスや
建ぺい率・容積率への影響、
材料の規制など
考えなくてはいけないことが
たくさんあります。
 
建物の付属品のように
思ってしまいがちな車庫ですが、
実はプラン前から
知っておいた方がいいことが
たくさんあるんです。

今日はあらかじめ知っておきたい
車庫のアレコレをまとめてみました。

 

この記事でわかること


□ 車庫の種類
□ 車庫の条件


 

目次


1.車庫の種類
2.車庫に必要な広さ
3.車庫と建ぺい率・容積率
4.車庫の内装と外装の制限
5.そのほかの検討ポイント


 

 


車庫にもいくつか種類がありますが、
建築基準法上の区別(定義)が
あるわけではありません。

建築基準法では
「土地に定着する工作物のうち、
屋根及び柱若しくは壁を有するもの
(これに類する構造のものを含む)」
を建築物と定めているため(第2条)、
屋根があれば車庫であれ
自転車置き場であれ倉庫であれ、
どんなものであれ建築物と見なされます。

では一般的には
どう言われているのかというと
(一般的というか、
エクステリア業界が
このように言っているようです)。

●駐車場:
 屋根なし、青空駐車。
●カーポート:
 柱と屋根だけで構成されたもの。
●ガレージ:
 屋根と壁で三方が囲まれたもの。
 シャッター付きで
 四方が囲まれているものを含む。

だいたい感覚的にも
納得できると思いますので、
この記事ではこの通りに
使い分けていきたいと思います。
 
擁壁に掘り込みのガレージ


さらにガレージの中には
建物の一部に含まれる
インナーガレージ(ビルトインガレージ)や
擁壁に掘り込みでつくるものもあります。
 
当たり前ですが、
屋根や壁がしっかりとあるほど
紫外線や雨風から
車を保護してくれますし、
防犯性も高くなります。

とはいえ、しっかりつくるほど
費用もかかりますから、
車庫をどうするかは
住む人の考え方が
大きく影響するところです。

プランにも予算にも関わってきますので、
あらかじめご家族で相談しておきましょう。

 

 


では、車1台を停めるのに必要な広さは
どのくらいなのかというと、
だいたい次のような広さを目安に考えます。

車1台に必要な車庫スペース
●天井高2.1m以上
●青空駐車orカーポートなら
 幅2.5m×奥行5m
●ガレージなら
 幅3m×奥行6m

ガレージの方が
やや広いスペースが必要なのは、
ドアを開閉するスペースを
確保するためです。

屋外であれば
周囲に多少の余裕がありますが、
三方を壁に囲まれたガレージでは
開閉時の余裕をあらかじめ
設計しておく必要があります。

2台分必要な場合は
このスペースの幅の方を2倍にすればOK。

2台分のカーポートなら
幅5m×奥行5mの正方形、
約15畳分ほどのスペースが必要
ということになります。

 


家を建てようと思ったとき、
比較的初期にぶつかる問題が
建ぺい率と容積率です。

それぞれ定義を確認しておきましょう。

建ぺい率
建築物の建築面積の敷地に対する割合
(建築基準法第53条より抜粋)
容積率
建築物の延べ面積の敷地に対する割合
(同 第52条より抜粋)

法律用語ってわかりにくいですね。
読み解いていくと、
まず建築面積は水平投影面積、
つまり建物の真上から光を当てたときに
影ができる範囲の面積を指します
(建築基準法施行令第2条)。

細かくいうと出幅1m以下の軒は
建築面積に算入されないなどの
ルールがありますが、
ひとまず建物を真上から見た面積だと
思っておいてください。

そして、敷地面積に対して
建築面積が何割を占めるかを表したのが
建ぺい率
(建築面積÷敷地面積×100)で、
それぞれの敷地は
あらかじめ自治体によって
建ぺい率が決められています。

例えば敷地面積50坪で建ぺい率60%の場合、
実際に建物を建てられるのは
建築面積30坪(50坪×60%)まで
ということになります。


一方、容積率の方に出てくる延べ面積は
建物の各階の床面積の合計です
(建築基準法施行令第2条)。

例えば1階が60㎡、2階が30㎡なら
延べ面積は90㎡です。

敷地面積に対する延べ面積の割合が
容積率
で(延べ面積÷敷地面積×100)、
こちらも自治体によって
あらかじめ決められています。

例えば敷地面積50坪で容積率200%の場合、
実際に建物を建てられるのは
延べ面積100坪(50坪×200%)まで
というわけです。

実際に家を建てるときには
建ぺい率と容積率両方の規制を
満たしていなくてはいけません。

では、これが車庫に
なんの関係があるのかというと、
車庫の面積も建ぺい率と容積率に
算入される
んです!

つまり、車庫の大きさの分だけ
建物が小さくなってしまう
ということ。

これはカーポートでも
ガレージでも同じです。

青空駐車の場合は建築物がありませんから、
もちろん関係ありません。

ただし、車庫の場合は
建ぺい率・容積率ともに
緩和措置があります。


車庫における建ぺい率の緩和措置
次の条件を満たす場合、
車庫の柱から1mまでの部分は
建築面積に参入されない
(平成5年建設省告示1437号)。

①外壁のない部分が連続して
 4m以上であること
②柱の間隔が2m以上であること
③天井の高さが2.1m以上であること
④地階を除く階数が1であること
※自治体によって異なる場合があります。

カーポートなら
ほとんどこの条件を満たすので、
緩和措置が受けられます。

一方、ガレージだと
①外壁の・・・という条件を
満たさないため、
建ぺい率の緩和措置の対象にはなりません。


車庫における容積率の緩和措置
自動車車庫等の床面積は、
その敷地内の建築物の
各階の床面積の合計(延べ面積)の
5分の1を限度として
延べ面積に算入されない
(建築基準法施行令第2条の4ただし書き)。
※自治体によって異なる場合があります。

こちらは車庫ならカーポートでも
ガレージでもすべて対象になります。

なお、
建ぺい率・容積率とは関係ありませんが
ガレージの場合は、
三方を壁に囲まれているため
床面積が固定資産税の対象に算入されます。


カーポート or ガレージをつくらない場合も
駐車場を外構の一部として計画します







車庫は内装や外装の
材料に関する制限もあります。

ガレージ、カーポートは
どんなものであれ
内装は防火材料
でなくてはいけません
(建築基準法施行令第128条、第129条)。

不燃材料は建設省告示
第1400号及び1401号に定められていて、
コンクリート、モルタルなどが該当します。

木の家の場合、
車庫の内装も木で仕上げたいところですが、
木を見せていい範囲は
天井・壁の面積の10分の1以内の
見付面積と定められています。

実際にどの程度
木を見せることができるかは
設計士とよく相談してください。

※見付面積
梁間方向(小屋梁と平行の方向)、
けた行き方向(小屋梁と直角の方向)ともに、
1階床から1.35m上に線を引き、
それより上の部分の垂直面積を指す。

防火地域・準防火地域・22条区域では
車庫の外装にも制限
があります。

防火地域・準防火地域は
都市計画法で定められており、
万が一の火災の際に
できるだけ延焼を防ぐのが目的で、
建築物は外壁・軒天などが
防火性能を備えていなくてはならない等の
規制があります。

車庫も建築物ですから、
この規制に従わなくてはいけません。

22条区域は建築基準法に定められており、
防火地域・準防火地域でないところで
延焼を防ぐために
屋根に不燃材料を用いることを
規定したもので、
その範囲は自治体が決めます。

だいたい防火地域・準防火地域の
周辺に広がる住宅地が
指定されていることが多いですね。

これらの地域では
ガレージ、カーポートの屋根や
外壁の材料に注意が必要です。

なお自治体によって
運用が異なる場合がありますので、
実際に建てる際には
設計士とよく相談しながら
進めてください。

防火地域・準防火地域・22条区域については
こちらの記事をご覧ください。
防火地域・準防火地域・22条区域って?




プランのときに車庫について
少なくとも知っておきたいポイントを
まとめてきました。

最後に規制などではありませんが
併せて検討したいポイントをご紹介します。

①車庫だけ後でつくってもいい?
→いいですが、
同時につくることをオススメします。
 
予算などの問題で
「車庫は後からつくろう」
というケースがありますが、
建物と同時につくることを
オススメします。

先ほどご紹介した通り
建ぺい率・容積率にも影響してくるため、
車庫をつくる予定ならあらかじめ
その分を考慮しておかなくてはいけません。

また、設計時に車庫があるかないかで
設計士のデザインに対する考え方が
変わってきます。

ガレージであれカーポートであれ、
建物と同時に設計した方が
一体感のある外観に仕上がります。
 
②ガレージにシャッターを付けるべき?
→シャッターの場合は強度を要検討、
建具にする方法もあります。

1台分であればそれほど問題ありませんが、
2台分のガレージの場合は
シャッターそのものがかなり重くなるため
ガレージの開口部の強度に配慮が必要です。

なお、
強度の問題をクリアするためには、
シャッターではなく
建具にする方法もあります。
ガレージの入口を建具にした事例


③ガレージの場合は
換気扇をつけるのがおすすめ。

締め切った場所で排気ガスが出るため、
換気扇を付けておくとよいでしょう。