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家づくり

防火地域・準防火地域・22条区域って?

住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話するブログ。

今回のテーマは
「防火地域・準防火地域・
 22条区域と木造住宅」です。


防火地域や準防火地域、
22条区域って聞いたことありますか?

建築予定地が
これらの地域に指定されていると
使える建材が限定されて
コストアップになってしまいます。

もちろん防火のために
とても大切な規定なので
守らなくてはいけませんが
あらかじめ知らないと
びっくりしてしまいますよね。

今日は防火地域・準防火地域・
22条区域の規制内容と
木造住宅を建てるときの注意点を
紹介していきます。

結論からいうと、
防火地域で
一般的な木造住宅は建てられない!
準防火地域では注意点がいっぱい!
22条区域の規制はフツーに建てれば
クリアできる!

といったところです。

その理由と具体的な注意点を
確認していきましょう。




この記事でわかること
□ 防火地域・準防火地域・22条区域とは
□ 防火地域の厳しい規定
□ 準防火地域のたくさんある規定
□ 22条区域で注意しておくこと


 
目次


1.防火地域・準防火地域・22条区域は
  都市計画で決まっています

2.防火地域では
  一般的な木造住宅は建てられない

3.準防火地域ではいろんな制限に要注意!

4.22条区域の規制はフツーに建てれば
  だいたいクリアできます

5.防火地域・準防火地域は
  都市計画図で調べよう



 


防火地域・準防火地域・22条区域は
いずれも建築基準法で定められていて
建物が密集した地域で
火災が広がるのを防ぐために
建築物に一定の耐火性能や防火性能を
求めるものです。

どの地域を指定するかは
都市計画法にもとづいて
各自治体が決定しています。

一般的に駅周辺や繁華街などが防火地域に
その周辺の住宅地が準防火地域に
さらにその外側の地域が22条区域に
指定されていることが多いようです。

建物が密集しているところほど
規制が厳しく、
外側にいくにつれて
規制が少なくなっているということですね。

防火に関する法律は
国土交通省がまとめたものがあるので
こちらをご覧ください。

では、具体的にどのような規制があって
木の家を建てるためにどうすればいいかを
見ていきましょう。



防火地域を規定するのは
建築基準法第61条です。


防火地域内においては、
階数が三以上であり、
又は延べ面積が百平方メートルを
超える建築物は耐火建築物とし、
その他の建築物は耐火建築物
又は準耐火建築物としなければならない。
(以下略)


つまり防火地域ではすべての建築物が
耐火建築物または準耐火建築物で
なくてはいけないということです。

耐火建築物や準耐火建築物の定義は
建築基準法第2条および第107条に
記載されていますが、
とても長い条文なのでここでは
「結局どういう建物なのか」だけを
言うことにします。

要するに
耐火建築物・準耐火建築物とは
構造が鉄筋コンクリート造などの建物

です。

防火地域では
一般的な木造住宅は
建てることができません。


ただし、木造住宅でも
建てられるものもあります。

国土交通省の防火材料の
認定を受けたものならOKで
例えば木材に難燃剤を加圧注入・塗布して
難燃処理を施した「防火木材」や
集成材内部にモルタルなどの
不燃材料の層を設けた
「耐火集成材」などがあります。

残念ながら中島工務店のような
無垢の木の家は防火地域には
建てられません。

無垢の木にこだわらなければあり!
ってことですね。

(といっても、一般住宅でそこまでして
構造を木にする理由がある
お客さまってそういませんし、
木質感を楽しみたいだけなら
内装だけ木にしてしまえばいいわけなので
防火木材や耐火集成材を使ってまで
木造にしようというケースはめずらしいです)



最初にお話した通り、
一番注意が必要なのが
準防火地域に建てる場合です。

準防火地域における木造住宅の規制は
建築基準法第62条の2に定められています。


準防火地域にある木造建築物等は、
その外壁及び軒裏で
延焼のおそれのある部分を防火構造とし、
これに附属する
高さ二メートルを超える門又は塀で
当該門又は塀が
建築物の一階であるとした場合に
延焼のおそれのある部分に
該当する部分を不燃材料で造り、
又はおおわなければならない。


わかりやすくいうと、
延焼ラインより外側にある外壁・軒裏を
防火構造にしなければいけない
ということ。

延焼ラインとは
隣地や道路から一定の距離を
延焼の恐れがある範囲とし、
原則として
1階は隣地境界線等から3メートル、
2階は同5メートルが延焼ラインです
(防火上有効な公園や川などに
面している場合は緩和措置があります)。
具体的には
建設省告示第1358号と第1359号に
定められていますが
これもとっても長く難しいので
結論だけ書きます。

国土交通省の防火材料・防火設備の
認定を受けたものを使用すればOK

です。

建築確認申請の際に所定の欄に
防火認定番号を記載して確認を受けます。

でも!中島工務店の家の軒裏には
木を貼ることがよくあります。

メーカー製の建材ではないので
防火認定はありませんが
建設省告示第1358号で規定されていて
木を貼る場合は厚みが30㎜以上あればOK
なんです。

通常は10~12㎜くらいなので
3倍近い厚みが必要ということですね。

ちなみに中島工務店の家では
木製の格子や庇をよく見かけますが
これらは建築物本体ではないと
みなされるため、
木を使っていても問題ありません。

防火地域・準防火地域の規定は
建築物本体に火が燃え移るのを防ぐことを
目的にしているためです。
なお、木造住宅に限らず、
防火地域・準防火地域では
延焼ラインにかかる
外壁の開口部は防火戸・防火窓に
しなくてはいけません
(建築基準法第64条)。

屋根材や外壁材はほとんどの製品が
防火認定を取得しているので
準防火地域であってもそうでなくても
製品選びにも費用にもほぼ影響しません。

ですが、軒裏と窓、ドアは
防火認定を取得した製品の方が
そうでない製品に比べて高価なので
建築費アップに直結します。

細かい点でいえば
換気扇の貫通孔が100㎠を超えると
防火ダンパーが必要といった規定もあり
やはりコストアップは避けられません。

仮に中島工務店の仕様で
2階建て・延床面積35坪の家を
準防火地域で建てるとしたら
そうでない地域で建てる場合に比べて
建築費総額は5~10%アップします。



22条区域はその名の通り
建築基準法第22条で規定されていて
屋根を不燃材でつくらなくてはいけない
というものです。

実は23条区域といって
同様に建築基準法第23条で規定された
外壁を不燃材でつくらなくてはいけない
と規定された区域もあるのですが
通常23条区域は22条区域と重複しています。

延焼を防ぐという意味では
屋根と外壁両方が燃えにくくないと
意味がないですもんね。

建築関係者が「22条区域」と言うときには
23条区域の意味も含めて言うことが多く
ここでも22条・23条=屋根と外壁
両方についてお話しします。

とは言っても、
先ほどもお話しした通り、
屋根材や外壁材はほとんどの製品が
防火認定を取得しているので
準防火地域であってもそうでなくても
製品選びにも費用にもほぼ影響しません。

フツーに選んでいれば
規制をクリアしているので
あまり意識する必要がないのです。

ただ、唯一できないのが外壁の板張りです。
これも下地に防火認定を取得した
サイディングなどを貼れば
その上に板を貼ることができるので
不可能というわけではありませんが
その分費用がかかりますので
実際に建てるときには
設計士とよく相談して下さい。



これから木の家を建てたいという場合、
防火地域では建てられませんし
準防火地域ではいくらかのコストアップや
制限を覚悟しなくてはいけません。

すでに土地を持っている場合は
家づくりを計画し始める前に
防火地域・準防火地域に含まれているか
確認したいですし、
これから土地を探すなら
しっかりと確認してから
購入を検討したいですよね。

防火地域・準防火地域に
指定されているかどうかは
簡単に調べることができます。

ほとんどの自治体で
都市計画図を公開しているので
インターネットで
「自治体名 都市計画図」と検索すると
ネット上で見ることができます。

たとえば、名古屋市の都市計画図を
見たいならこちら。
「キーワードから探す」欄に住所を入れると
該当する地域の地図が表示されます。

試しに名古屋城周辺を表示してみました。
赤い部分が防火地域、
薄いオレンジが準防火地域です。

現在表示されている全域が
防火地域または準防火地域に
指定されていることがわかります。

詳細情報を開くと22条区域に
指定されているかどうかも確認できますが
名古屋市の場合は防火地域・準防火地域に
指定されていない地域はすべて
22条区域に指定されています。

名古屋市のように
検索→表示する自治体もあれば
PDFで公開されている地域もありますが
ほとんどの自治体でなんらかの形で
公開されているので確認してみましょう。

なお、都市計画図を見れば
用途地域や容積率・建ぺい率など
いろいろな規制がまとめて確認できるので
いろいろと便利ですよ。