プロが教える家づくりのヒント HINT

設計

飽きのこない外観デザインの考え方


 
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回のテーマは
『外観デザインと経年変化』です。

新築のときには誰もが外観にこだわって、
おしゃれな家・好みの家を建てようと
一生懸命考えます。

ところが、そうやって考えた家も
築20年、30年と経つうちに
「なんだかかっこ悪い」と
感じるようになり、
ときにはそれが原因で
建て替えを決めてしまうことも。

よく言われる原因は流行りの変化ですが、
一般の住宅が高性能・長寿命化した今、
30年ほどで我が家をかっこ悪いと
思うようになってしまうのは
とても残念です。

そこで、今回は住宅が長寿命化した
今こそ考えたい
「飽きのこない外観デザイン」について、
当社の事例を交えながら
プロの立場からアドバイスします。

結論としては、
①様式美に従おう、
②個性は外構・エクステリアで表現しよう

です。

年月を経ても
おしゃれな外観デザインの家を
実現する方法の参考にしてください。

 

 


最初に「おしゃれな外観のつくり方」を
簡単に確認しておきましょう。

住宅の外観に限ったことではありませんが、
デザインの良し悪しを決める要素は
色とサイズのバランスです。

住宅の場合、
さらに質感も大きな影響を与えます。


住宅の外観デザインを決める要素は
色×サイズ×質感(素材感)のバランス
です。
 
外観で特に注意したいのが「窓」です。

窓の大きさや配置は
住まいの見た目を大きく左右します。

外部で色・サイズ・質感が
最も表現されるのは外壁ですが、
窓はその外壁の面に穴をあけるもの。

上手に配置すればアクセントになりますが、
やり方によっては
せっかくの外壁の印象を
台無しにしてしまうこともあります。
 
おしゃれな外観にしたいなら、
ぜひ覚えておいてほしいポイントです。

 

 


それでは本題、
飽きのこない外観にするポイントを
見ていきましょう。

まず大切にしたいのは「様式美」です。

様式美とはある表現形式に
特徴的・類型的な美しさ
のこと。

歴史的に有名な建築様式としては
ギリシャ建築(神殿のイメージですね)、
ゴシック建築(ノートルダム大聖堂など)、
イスラム建築(タージマハルなど)など
多種多様なスタイルがあります。

が、今回取り上げる様式美は
そのような大きな括りではなく、
現代の日本の住宅における
類型化されたデザイン。
 
よく言われる
和風・南欧風・シンプルモダンなどです。

純和風の住宅をイメージしてみてください。

それが50年前に建てられたものでも
先月建てられたものでも、
どちらもパッと見て「和風の家だな」と感じ
好みの問題は別にして「古い」とは
思わないのではないでしょうか。

こちらは弊社施工事例ですが、
きっと50年後も
「きちんとした和風の家」と
評されることでしょう。


それが様式美です。
 
年月を経ても確立された
スタイルへの評価は変わらず、
住んでいる人も周囲も「いい家だ」と
思い続けることができます。

純和風に比べると歴史が浅い
シンプルモダンや
南欧風・北欧風などの○○風、
大手ハウスメーカーに多い
邸宅風などの中にも、
今ではひとつの様式美といえる
スタイルが確立されているものがあります。

それぞれの様式美にしっかり従うことが
30年後、50年後も「いい家」と思える
ポイントのひとつです。


 

 


様式美に従って家をつくるときに
注意したいことがこちらです。

①それなりに確立されたスタイルを選択する
②その様式にない手法を混ぜない
③自分の家のサイズに合った様式を選択する

具体的に見ていきましょう。


 

 


ある程度確立されたスタイルを
選択しましょう。

人気のあるデザインでも
あまりにも新しいスタイルだと、
それ自体が一時的な流行りで
終わることがあります。

街の中で「ああいう家、
○○年前に流行ったよね」と
見える家がそれです。

せめて10年くらいは続いて
定番のひとつになっているスタイルだと、
これから先もひとつの様式として
残っている可能性が高いでしょう。

好みの外観の家を建てている
住宅会社・工務店が見つかったら、
その会社の施工事例を
10年以上遡ってみてください。
 
もちろん細かい点では
進化していて当然ですが、
基本的なスタイルが変わっておらず、
10年前の事例を見ても
「いいな」と思えたら
候補にする
といいでしょう。


 

 


街の中で比較的よく見るのがコレ、
その様式にない手法を取り入れて
個性を表現しているパターンです。

例えば、南欧風のシンプルな白い壁に
なぜかビクトリア調の装飾豊かな
出窓がドーンとついている、
といった建物。
見かけることありますよね。

絶対ダメというわけではありませんが、
ものすごく高度な技です。

豊富な知識と高い技量を持つ建築士なら、
すごくかっこよく
アレンジしてくれることもあるでしょう。

でも残念ながら、お客様の要望で
一般の住宅会社・工務店が
安易にチャレンジしても
まずおしゃれにはなりません
(もちろんできる人もいますが、
そういう人を見つけるのは大変です)。
 
お客様も完成したときは「希望通り!」
と嬉しいかもしれませんが、
年月を経ると一定のスタイルから
はずれた外観は
「なんでこんなことしたんだろう」と
違和感を感じさせることが多くあります。

ひとつの様式を選んだなら、
その様式にない手法は
混ぜないのが原則です。

そのためにも、
自分が叶えたい家の外観が
どんな様式に属するのか、
その様式でやること・やらないことは何か

最初にしっかり勉強するのがオススメです。





例えば先ほどの写真の和風住宅。
 
見てわかる通り
それなりの大きさの立派な住まいですが、
この外観デザインを
延床面積30坪の家でやったら
どうなるでしょう。

まず間違いなく不格好な家になりますよね。

立派な入母屋の屋根は
重心が低く大きな家だからこそ
美しく見えるもので、
小さな家では頭でっかちで
無理をしているようにしか見えません。

このように建物の様式は
住宅の大きさとも関係があるのです。

特に気をつけたいのが、
大手ハウスメーカーに多い
邸宅風の外観デザイン。

モデルハウスや商品情報の画像は
どれも重心が低く、
ドーンと構えた立派な姿です。

最近だと大きな壁、軒や
ベランダの長くきれいな水平ライン
といった点が特徴ですが、
これらはすべて建物が大きいからこそ
美しく見える要素です。

一般の人は
モデルハウスほどの大きさの家を
建てられませんし、
建てる必要もありません。

するとモデルハウスの建物を
ギュッと小さくした家を
建てることになるのですが、
小さく縮めてしまうと
大きな壁や長い水平ラインは実現できず、
間取りの実用性もあいまって
中途半端になってしまいがちです。

大手ハウスメーカーの商品デザインは
十分に様式美といえる
類型化された美しさを持っていますが、
現実的な大きさの家では
その様式美は失われてしまうのです。

デザインは色とサイズのバランスです。

好みの外観を探すときには、
自分が実際に建てる家の大きさに合った
事例を見て考える
のが大切です。

その会社の考え方を凝縮した
モデルハウスが現実的なサイズだと
より参考になります。



 


ここまで読むと
「じゃあ個性的な家はつくれないの?」
となりそうです。

様式に縛られると感じるかもしれません。

様式の範囲内で
おしゃれに個性的に仕上げることは
可能ですが、
その住宅会社や担当設計士の
技量しだいです。

お施主様の要望が重視される
注文住宅では、
お施主様のセンスも重大です。

個性的でおしゃれで
飽きない家を建てるには、
希望する外観スタイルの様式を勉強し、
その様式の家を建てる
住宅会社・工務店の中で
特にアレンジがうまい会社・設計士を
見つけるのがポイント
ですが、
なかなか難しいかもしれません。

ではどうすればいいのかというと。

個性は建物ではなく、
外構・エクステリアで表現
しましょう。

シンプルな建物も
シンボルツリーや門柱しだいで
ずいぶん見た目が変わります。

逆におしゃれな建物が
外構で台無しになるケースもあるくらい、
実は外構は重要です。

一方で、一度建てたら
何十年もそのままの建物に比べて、
外構は比較的簡単に
つくり直すことができます。

おしゃれな外構のつくり方の解説は
別の機会に譲りますが、
流行や個性を表現するなら
建物より外構を活用するのがオススメです!


 

 


外観デザインに大切な
「質感」を表現する
外壁素材の選び方も
チェックしておきましょう。

素材によりますが、
外壁は20年程度で塗り直すのが前提です。

逆にいうと色は
塗り直しのときに変えられますので、
20年経ったときにもう一度
好みや流行に合わせてやり直す機会がある
といえます。

一方、素材の質感は
塗り直しても変えられません。

塗り壁の場合、
年月とともに味わいが増して
「経年美」といわれる美しさを醸し出す
ので
そのままで楽しむことができます。

私たち中島工務店が
塗り壁を推奨する理由のひとつです。

逆に年月が経ったとき
古びた印象を避けられないのが
化粧サイディング
です。

もちろん今は色褪せにくい、
防汚機能に優れた
サイディングも増えているので、
そういった高性能サイディングを選べば
この問題はある程度解決できるでしょう。

それでもあまり個性的すぎるデザインは
避けておいた方が賢明です。

どうしても飽きてしまいますし、
万が一の災害や事故で
一部が破損したときに同じ柄がないと
張り替えができないからです
(サイディングの色柄は
すぐに廃番になります)。

塗り直しを前提としたときには、
サイディングは主張する線が
少ないものがオススメです。

線が多いと塗り直しが難しく、
色のバランスも
とりにくくなってしまいます。

なお、残念ながら
安いサイディングは塗り直しても
安っぽさは否めません。

建物が長寿命化している今、
建物の躯体同様、
つくり直しが簡単ではない
外壁や屋根は優先的に
コストをかけた方がよい
といえます。





最後に、様式美を大切にした
中島工務店の施工事例をご紹介します。

まずは純和風。

30坪足らずの小さな平屋ですが、
和瓦・深い軒・大きな玄関引き戸・
和風住宅らしい色遣いなど、
50年先にもいい家だといわれる
条件を備えています。



こちらは蔵の様式美を採用した事例。

住宅としては
とてもめずらしいスタイルですが、
立派な鬼瓦のある瓦屋根・
蔵の外観をイメージした色遣い、
ガルバリウム鋼板張りなど、
蔵がモチーフになっていることが
誰にでもわかります。
 
年月を経ても
その位置づけは変わらないでしょう。



次の2つは和モダン邸宅風
とでも言いましょうか。

深い軒で母屋を見せたり格子をあしらったり
和モダン要素を取り入れつつ、
重心を低く・水平ラインを強調し、
壁を大きく見せる邸宅風のデザインも
兼ね備えています。

どちらの事例も
軒を深く降ろしてくることによって、
1階窓の上の壁を見えなくしている点も
デザイン的に美しく見せるポイントです。
 




下の写真のスタイルも
最近では街でよく見かけますよね。

もはやひとつの様式といって
差し支えないでしょう。




住宅展示場・長久手Studioには
この他にもたくさんの
施工事例作品集をご用意しています。

ぜひ一度ご来場ください。



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