森林と家づくり(2)

森林と家づくり(2)

今年(2013年)も東濃ひのきふるさとまつりが好評のうちに終了しました。
参加者の反応や感想を含め、木造建築と森林再生について触れてみます。
 
7月27日、28日は前日まで激しく降ったり止んだりする不順な天候の合間の好天に恵まれて、プログラムの全てが順調に実施されました。
 
中島工務店が行うイベントは、この機会に森を、木を、そして住宅づくりのすべてを体験してほしいと多彩で盛りだくさんの内容となっており、都会暮らしの参加者は、その体験の全てが新鮮で強く印象に残るようです。
 
一番多い感想は、「中島工務店の心意気に感動した」です。
自然とのふれあいや地元で採れた農産物などの食べ物、田舎での初体験や発見などについて書かれることを期待してのアンケートなのですが、社員スタッフの献身的なもてなしが第一の感動となるようです。
 
元来、生真面目なスタッフの態度が参加者にはもっとも印象的なのです。「とても温かかった」「とても気持ちが良かった」と。
 
そして全員が「また加子母を訪れたい」と再訪を望んでいます。参加者全員が、弊社が建築した木造住宅に住んで間もない方々ばかりなので、二番目に多いのがその住宅の住み心地などの意見や要望です。
 
「夏の暑さも快適で、これから四季を通じてどのようになるのか楽しみ。また、木の良さを日々感じており、来訪者は皆さんが褒めてくれる。(中島工務店で)良かったです。」「とても満足です。」と全員が木造であることなどの良さを誇らしげに強調しています。
 
さらに注目すべきは、森林、木材に対する関心や理解度が極めて高く、イベントメニューの中でも「自然探索」と「記念植樹」に高い関心を示しています。
 
植樹に先立って、現地の自然環境や植樹の方法の説明していますが、特に森林の話や木材に関しては高い関心があり、夜の懇親会でも熱心に意見が交わされています。
 
つまり、自然とのふれあい、森林と木材、人間社会と地球環境等、木材を使って初めて知り得た知識、木造住宅をつくることによって会得した高いスキル木の家に住んで実感する満足感など、施工を通じて親密となった担当者とのやり取り、また参加者同士の交流が夜が更けるまで続くのです。
 
森林を見つめてきた粥川真策さん(加子母村の最後の村長)は、長年に亘り林業・木材産業について努力されてきました。
粥川さんはここにきて次のような話をされています。「林業は衰退するが救えない。しかし森林は守ることができる。」と。
東濃ヒノキ林業圏において産直住宅を進めてきた地元の森林所有者、木材関係者は、実は森林を守ることが目的でした。
 
それは、弊社らが必死に進めている住宅づくりが、木材の一本一本を確かめながら建てる「在来軸組工法」の木造建築物であるからこそ国産材の有効利用が可能となり、木材が持つ様々な利点を生かして使うことができるからです。
 
植林し、下草刈りなどの保育を続けて半世紀が過ぎ、間もなく収穫を迎えるというのに苗木代すら回収できなくなった現在の材価では
もはや林業としての生業は存在しないまでになったが、先輩たちが汗水流して植林した日本の森林はどこに行っても樹木(個体)は大きくなり、森林は生育し続けています。
 
「林業は救えなくても森林は残る」のでしょうか。
今日、地球温暖化防止に大きな役割を持つ森林、その森林を持続しつつ国産材をふんだんに利用して懸命に、一戸一戸木造住宅をつくり続けることこそ唯一、林業を支え森林を守ることになるといえるのです。
 
若かったころ、森林再生のために木材は、「木材としての一定の理学的性質を備えていればよい」などと考えていました。
資源の増大を追求しながら来るべき(今では遠のいてしまった)国産材時代を夢見て、ヒノキなど木が持つそれぞれの特徴や質への理解も十分でなく、またこれらの特性を生かした日本独特の伝統的建築技術の奥深さを理解できなかったことを恥じないではいられません。
 
(中島工務店 総合研究所長 中川護)