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新築住宅にテレビアンテナは必要?

住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話するブログ。

今回のテーマは
「新築住宅のテレビアンテナ」です。
テレビの受信方法が多様化した現在、
新築住宅でも必ずしもテレビアンテナを
設置しないという人は増えています。

とはいえ、新築に際しては
「どうやってテレビを受信しようか」と
改めて検討する人も多いはずです。

実は注文住宅の場合は早い段階で
受信方法を決めておく必要があります。

今回はアンテナ、ケーブルテレビ、
ひかりテレビなどの
テレビの受信方法をご紹介します。

中島工務店を例に、
注文住宅の場合の設置の
流れや費用を解説します。




この記事でわかること
□ テレビの受信方法
□ 注文住宅でテレビ受信方法を
 決めるタイミング
□ 注文住宅のアンテナ設置の流れ
□ 注文住宅のテレビ受信機器
 設置の注意点

 
目次


1.新築住宅にテレビアンテナは必要?
2.イマドキのテレビの受信方法
3.注文住宅でテレビの受信方法を
  決めるタイミング

4.注文住宅のアンテナ設置の流れ

5.アンテナの設置場所の決め方
6.ブースターの設置場所の決め方
7.注文住宅のテレビ受信機器設置の注意点
8.まとめ

 


最初にこの質問に答えておきましょう。
新築住宅にテレビアンテナは必要か?

結論としては
アンテナである必要はないですが
なにかの方法でテレビを受信できる
状態にはしておいた方がいい
です。


中島工務店デザインアンテナ・BSアンテナ設置事例


最近ではテレビを見ないという人も
増えていますが、
アンテナであればほかの方法であれ
配線・配管だけは
建築時にしておいた方が安心です。

というのも、
後から配線・配管するためには
建物の躯体に穴をあけるなどの
工事が必要になるからです。

現代の気密性・断熱性の高い住宅では
建築後に安易に穴をあけるのは
おすすめできません。


その穴の気密処理が十分でなければ
気密性が下がったり、
壁体内結露が発生する恐れがあります。

今でも地上波放送は見なくても
テレビでYoutubeやNetflixなどを
見ている人はたくさんいますよね。

テレビおよびテレビに使用する回線は
今後様々な通信サービスのデバイスとして
利用範囲が広がる可能性があります。

あまりテレビを見ないなあという人も
いつかテレビが必要になる可能性を考慮して
受信できる状態に配線・配管しておくのが
よいでしょう。



では、テレビの受信方法には
どんな選択肢があるのでしょうか。

現在のおもなテレビの受信方法は3つ、
アンテナ・ケーブルテレビ・ひかりテレビ

です。


①アンテナ
3つの中で最もコストがかからないのが
アンテナ設置です。

アンテナの種類にもよりますが
最初に数万円の設置費用がかかるほかは
ランニングコストはかかりません。


設置後は台風、地震などの
災害に遭わない限り、
20年以上はそのままで使用できるので
非常にコスパがよいといえます。

気をつけたいのは
住宅密集地など立地条件によっては
テレビの映りが悪い場合がある
こと。

特にBSやCSのように
アンテナを向ける方角が決まっている場合
その方角に高い建物などがあると
受信状態が悪くなる可能性があります。

アンテナで受信する場合は
あらかじめご自宅の電波状況を
確認してもらいましょう。


②ケーブルテレビ
ケーブルテレビは光ファイバー網と
同軸ケーブルに電気信号を送って
テレビの映像を配信するもの。

お住まいの地域のケーブルテレビ局に
加入しなければいけないので
加入料金や毎月の利用料がかかります。

一方でケーブルテレビには
BSやCSの幅広いチャンネルを見られる
というメリットがあります。

住宅密集地など
アンテナではテレビの映りが悪い地域で
選ばれる
ことが多いほか、
携帯電話やインターネットなどの
通信機器とのセット契約
でも
よく選ばれています。

③ひかりテレビ
ひかりテレビはケーブルテレビと
よく似ていますが
光ファイバー網を使用して
光信号を送って
テレビを配信するものです。

光ファイバー網のメリットは
テレビよりインターネットで発揮されます。

契約先によりますが
ケーブルテレビ会社の
インターネットサービスに比べて
数倍以上の速度で利用できるので
ひかりテレビは
特にインターネットサービスとの
セット契約
が多くなっています。

ひかりテレビもケーブルテレビ同様に
多チャンネルを見ることができ、
加入料金や毎月の利用料がかかります。

3つの受信方法を比較すると

アンテナ
▶BSやCSアンテナを設置することで
 多チャンネルを視聴できる
▶ランニングコストがかからない

ケーブルテレビとひかりテレビ
▶加入プランによって
 多チャンネルを視聴できる
▶加入プランに応じた利用料がかかる
▶携帯電話、インターネットサービスとの
 セット加入が多い



続いて中島工務店の場合を例に
注文住宅のテレビ受信設備の決定、
設置の流れを確認しましょう。

中島工務店ではプラン作成前の
ヒアリング時にテレビの受信方法を
確認
します。

ヒアリングシートに希望する
テレビの受信方法を記入する欄があり
その内容にもとづいて
設計士がヒアリングしながら
最適な方法を選びます。

これは家づくりの
ごくごく最初の段階です。

プランをつくる前に
もうどうやってテレビを見るのか
考えておかなくてはいけません。

早いな!と思われましたか?

実際には設計が終わるまでは
変更する猶予があります。

ですので最初に
「考えていなかった」「特に希望がない」
という方は、設計期間に
検討していただくことになります。

こんなに早くテレビの受信方法を
決めなくてはならないのは
やはりアンテナやケーブルなどの
配線・配管が必要だからです。

アンテナを例に
設置の流れを確認しましょう。



アンテナ設置の流れは次のとおりです。

①設計時にテレビ受信方法を決める
②上棟後にアンテナの取込位置から
 テレビ設置位置まで配管
③建物完成後にアンテナを設置、
 テレビ設置後に室内配線を接続
④テレビ映りを確認、
 ブースター等の調整を行い完了


アンテナの設置位置は
建て方の前に決まります。

建て方=家の柱が建って
上棟するタイミングなので
とても早いことがわかりますね。

上棟後、柱や梁といった構造が
組み上がった時点で天井や壁の中、
床下を通してアンテナの設置位置から
テレビの設置位置まで配管します。
つまり、柱や梁が見えているときに配管して
その後天井や壁、床を仕上げる

というわけです。

アンテナを例にしましたが
ケーブルテレビやひかりテレビでも同様に
建て方後にケーブルや光ファイバー網の
取込位置からテレビの設置位置までの
配管をしてしまいます。

このように建築が始まったら
すぐに配管しなくてはいけないので
テレビの受信方法は設計中に
決めてしまう必要があるのです。

なお、ケーブルテレビとひかりテレビは
完成後にケーブルテレビ会社・
ひかりテレビプロバイダーによる
屋内配線工事が必要
です。

そのため屋内配線工事が完了するまで
テレビやセット契約したインターネット、
固定電話などは使用できません。

特に入居後に屋内配線工事を依頼する場合は
「住み始めたけれど
しばらくテレビも見れない
ネットも使えない!」
という状態になりかねませんので
注意してください。



地デジアンテナは標準的には
引込線の取込位置に設置します。

通常、引込線は周囲の電柱から近いところで
できるだけ高い位置に取り込みます。

できるだけ高い位置を選ぶのは
低いところに引込線を張ると
大きな車両が通過した際や
今後の各種工事の際に危険だからです。

BS / CSアンテナは設置するときの
方角が決まっています。

BS・110度CSの場合は南西方向、
124 / 128度CSの場合は南南西ですが
細かい角度や仰角は
地域によって異なります。

そのため自ずと設置場所が限られます。

BS / CSアンテナの位置に合わせて
地デジアンテナも同じところに
設置する場合があります。

中島工務店では
お客様から特にご希望がない場合、
具体的な設置位置は電気設備工事業者と
現場監督が検討して決定します。

アンテナ設置に際しては
電気設備工事業者が電波状態を測定し
最も受信状態がよい位置を選びます。

電波状態がよくどこに設置してもいい場合は
引込線の取付位置と外観を考慮して決定。


引込線との兼ね合いと同時に
アンテナが建物の外観デザインの
邪魔にならない位置を選びます。

電波が弱い地域(弱電界)では
設置できる場所が限られるので
最も電波がよい位置を選びます。

なお中島工務店では
デザインアンテナが標準です。

昔の魚の骨のようなアンテナと違って
小型で壁面にすっきりと取り付けられるため
人気です。

色は外観デザインに合わせて決定します。
デザインアンテナ製品例
マスプロ電工様サイトより





ブースターは
テレビの電波を増幅する機器。

アンテナで受信したテレビ信号は
混合器や分配器、ケーブルを通るうちに
減衰してしまい、そのままだと
テレビの映りが悪くなってしまいます。

それを防ぐために信号を強くするのが
ブースターの役割です。

ブースターは地デジ・BS・CS・
4K・8Kなど接続するテレビ信号の
種類によって対応機器が異なります。

中島工務店では電気設備工事業者が
建築地の受信環境と
お客様が見たいチャンネルの種類によって
最適な機器を選択
しています。

設置場所も特にご希望がなければ
設置しやすく将来的にも工事がしやすい
位置を電気設備工事業者が選びます。


最近ではテレビやインターネットの
契約先を必要に応じて変更するケースも
多くなっていますが
ケーブルテレビやひかりテレビに
切り替える際には再度ブースターを含めて
工事しなくてはいけません。

そのため取り出しやすい、
工事しやすい位置を選ぶようにしています。

弱電盤を設置するご家庭では
ブースターも弱電盤に配置します。

弱電盤(情報分電盤)は
テレビ・電話・ネットなどの回線機器を
1か所に集めて管理する場所です。

ブースター、モデム、ルーター、
NAS(Network Attached Storage)など
契約先や規格の変更によって
更新する可能性が高いものをまとめておくと
将来的にとても便利なので
おすすめしています。



このように住宅建築では
テレビひとつとっても
いろいろな点に配慮しながら
工事が進められています。

最後に注文住宅のテレビ受信機器
設置の注意点をお話しします。

当社では設計段階で
テレビ受信方法のご希望をお聞きしたあとは
基本的に現場監督と電気設備工事業者が
最適な機器、配管配線方法を選択します。

よってお客様は
特に気にすることなくテレビがついていた
という状態になっています。

しかしながらすべての住宅会社・工務店が
このような対応をしているとは限りません。

建売住宅だと
アンテナはついていないのが一般的で
購入者がアンテナ設置業者を
探すことになりますが
注文住宅でも引込線までは引いてあっても
そこから先はお施主様が
手配しなければならない
というケースもあるようです。

住宅建築を依頼する住宅会社・工務店に
どこまで手配、工事してもらえるのか
確認しておきましょう。




注文住宅のテレビ受信機器設置について
解説してきました。

以下のような点に注意して
希望するチャンネルが快適に見られるように
住宅会社・工務店と一緒に
準備を進めていきましょう。

■見たいチャンネルによって
 必要なアンテナやケーブルテレビ、
 ひかりテレビの加入プランが変わる
■テレビの台数によってブースターや
 分配器が必要
■将来的なテレビ・ネットなどの
 契約先変更、機器更新を見込んで
 弱電盤は設置したほうがよい


ブースターおよび弱電盤については
こちらの記事もご参照ください。
テレビブースターの置き場所と
 弱電盤(情報分電盤)のすすめ