勾配天井は外観の見映えにも◎
家づくりのヒントをお話するブログ。
今回のテーマは「勾配天井」です。
勾配=傾斜をつけた天井です。
屋根の形状を活かすことが多いですが
屋根の架け方とは無関係に内部に
勾配をつけることもあります。
ネット上にはメリット・デメリットや
照明計画の難しさなどを
まとめた記事がたくさんあり、
どうやら注目度は高めのようです。
中島工務店でも勾配天井は人気があり
特に勾配天井+丸太梁
という組み合わせが人気です。
ネット記事で
おもに挙げられているメリットは
①開放感がある
②高窓をつけられるから明るい
③同じ理由で風通しがよくなる
ですが
実はこのほかにも
ぜひ知っておいていただきたい
メリットがあるんです。
今日はまず、
勾配天井のよく言われる
メリット・デメリットを確認した上で
知っておいてほしい外観にまつわる
メリットをお伝えします。
さらに設計のときに
注意したいことを紹介します。
1.勾配天井のメリット・デメリット
よく言われていることの再確認
2.こんなメリットもある①
階高を抑えて外観をきれいに見せる
3.こんなメリットもある②
高さ制限、階段、建具など
諸々やりやすくなる
まず最初に、
勾配天井のメリット・デメリットとして
よく挙げられることを
確認しておきましょう。
メリット①開放感がある
私たちは空間を面積だけでなく
体積で感じているので
同じ広さならタテに大きい方が
開放感があります。
例えば長久手Studioのリビングは10畳で
床から梁の下までが2mしかありませんが
勾配天井なのでかなり広く感じられます
(もちろん勾配天井だけが理由ではなく
ダイニングキッチンや
ロフトがつながっているとか
材料の組み合わせ方・見せ方など
いろいろ理由はあります)。
下の写真で梁の上に
天井を張った場合を想像すると
わかりやすいのではないでしょうか。
通常の窓のほかに
高い位置に窓をつけることができるので
採光がよくなります。
上の長久手Studioの画像でいうと、
ロフト部分に窓がありますよね。
これがあることによって
室内が明るくなっています。
また、暖かい空気は上に移動するので
窓に高低差があった方が
風は抜けやすくなります。
デメリット①費用が高くなる
天井を張ってしまえば
小屋裏になる部分を部屋にするので
天井を張る場合に比べて
その分の内装費(おもに壁)が
かかります。
デメリット②冷暖房効率が悪くなる
空間の体積が大きくなるという
メリットがある一方で
その分、冷暖房が効きにくくなります。
シーリングファンをつけたり
開閉可能な間仕切りを設けたりすることで
改善できますが
勾配天井でない場合に比べると
どうしても効率は悪くなります。
デメリット③照明の交換が大変
天井が高くなるということは
照明の取付位置も高いということです。
ちょっと脚立に上がって電球交換とは
いかなくなってしまい、
わたしたち工務店に連絡をいただかないと
いけないことがあります。
とはいえ、最近のLED照明なら
頻繁に交換する必要はありませんし
ブラケット照明やペンダント照明で
手の届く高さにすることもできます。
ところで、ネット上には
勾配天井だと照明計画が難しい
という記事がいくつも見られますが
中島工務店では
ほぼ問題になったことがありません。
たしかに斜めの面に取り付け可能な
照明器具でなくてはいけないですし
大きな空間に十分な明るさを
考えなくてはいけません。
が、当社ではもはや標準仕様?
というくらいたくさん
勾配天井をつくっているので
対応可能な照明器具のラインナップと
設計・取付のノウハウがあります。
そういう意味では
勾配天井にしたい場合は
慣れている住宅会社に依頼した方が
よりより空間を
つくってくれるかもしれません。
住宅の外観をきれいに見せるコツのひとつに
「高さを抑える」というのがあります。
建物全体のプロポーションにもよりますが
同じ形なら背が高い方が間延びして
見えることが多いんです。
特に影響するのが軒先の高さです。
全体の背が高い建物でも軒先が低いと
重心が下がってきれいに見えます
(もちろん全体のバランスなので
一概にはいえませんが)。
そして軒先を低く見せたいときに
勾配天井が効果的なんです!
というのも勾配天井が
階高を抑えられるから。
階高とは各階の高さのことで
下の階の床面から上の階の床面までの
高さを指します。
一般的な2.4mの高さで天井を張る場合
梁は2.4mより上になくてはいけません。
当然、屋根はその上に
架けることになります。
一方、勾配天井なら
梁の位置を2m程度まで下げて
その上に屋根を架けることができます。
上の長久手Studioの写真を見るとわかる通り
2mまで下げても十分すぎるくらいの広さを
感じられますよね。
軒先の位置が下がる。
だから建物がきれいに見える!
というわけです。
階高を抑えて建物の高さを低くすると
各種高さ制限をクリアしやすくなります。
建物の高さに関する制限には
第1種低層住居専用地域または
第2種低層住居専用地域内においては
建築物の高さは10mまたは12mの
いずれかを超えてはならないとする
「絶対高さの制限」、
道路の採光・通風や
両側の建物の採光・通風の
確保のための「道路斜線制限」、
隣地への陽当たりや通風に配慮する
「隣地斜線制限」、
特に北側への日照を遮らないための
「北側斜線制限」、
さらに都市計画に定められた
「高度地区」や「風致地区」
などがあります。
特に都市部ではこれらの制限の
影響を受けることが多いのですが
建物の高さが抑えられていると
回避して希望の設計をしやすくなります。
階高が下がるということは
階段の段数も少なくなるということ。
数段だけと思われるかもしれませんが
毎日昇り降りすると考えると
階段を何段にするかは大きなポイントです。
2段多いか少ないかで
まっすぐ昇るか途中で曲げるかといった
おさめ方まで違ってくることもあります。
建具も階高の影響を受けるものの
ひとつです。
天井または梁の高さまで建具にするか
天井 / 梁と建具のあいだに壁をつくるかは
見た目の印象を大きく左右します。
サッシの規格は
高さ2.2mくらいまでが一般的なので
天井 / 梁の高さをそのくらいまでに
抑えると費用を抑えながら
バリエーションを選べることが
多いでしょう。
もう一度、
長久手Studioの写真をご覧ください。
2mのところにある梁の上に床を張れば
そこにロフトができるのがわかりますよね。
長久手Studioの場合は既存のロフトが
そのままリビングの上まで
伸びてくる感じになります。
床を張ると開放感はなくなりますが
家族や生活スタイルの変化で
必要なときに
ロフトをつくることができるのも
勾配天井のメリットだといえます。
ロフトについて詳しくは
こちらの記事をご覧ください。
>新築にロフトがほしいなら
①勾配天井部分の上には部屋をつくれない
1階に勾配天井を採用した場合、
その上に部屋をつくることができません。
吹抜けにするか、
その部分を2階がない位置に
持ってくる必要があります。
勾配天井にするなら2階がいいと
いわれるのはこのためです。
勾配天井にしたい場合、
その分部屋に使える面積が減ることを
あらかじめ念頭に置いておきましょう。
②階高を下げるときに注意すること
勾配天井にして階高を下げると
キッチンの吊戸棚や
レンジフードの位置も下がるので
注意が必要です。
きちんとした和室をつくるなら
天井高は2.4mで
梁を見せないのが通常なので
和室部分だけ梁の位置を
高くしなくてはいけないことがあります。
ユニットバスのダクトスペースにも要注意。
ユニットバスの天井高は
2.2mが一般的なので
(2mもありますが
やや圧迫感があるのでおすすめしません)
その上に換気扇のダクトを通すには
2.7mくらいの高さが必要になります。
階高を抑えた場合、
浴室を2階がない位置にしたり
ダクトを天井に抜くなどの工夫が必要です。
もちろんこれらは設計士が考えることですが
こういった制限がかかってきて
希望通りにできないケースがあるので
知っておくとよいでしょう。