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家づくり

電気とガスどっちがお得?


 
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回のテーマは
「電気・ガスの省エネ&コスト比較」です。
 
家づくりで一度は悩むのが
「オール電化にするか、ガスにするか」
ではないでしょうか。

一番気になるのは
月々の光熱費だと思いますが、
ほかにもイニシャルコスト
(最初の機器購入費・工事費)、
耐用年数などなど
いろんな角度から考えるところです。

今日は、
結局電気とガスはどっちがお得なの!?
という質問に
機器の組み合わせ別シミュレーションで
答えてみたい
と思います。

シミュレーションの条件は
これから述べますが、
あくまで「この条件の場合」
ととらえてください。

光熱費や省エネ性能は
建物の性能や暮らし方によって
ずいぶん違ってきます。

できるだけ一般的な条件で
やってみたつもりですが、
参考としてご覧いただき、
実際に決めるときには「うちの場合」を
シミュレーションしてもらうことを
おすすめします。

また、シミュレーションは
どこまでも設計上の理論値です。

実際に住んでみると
シミュレーション通りにならない
ケースもありますので、
あらかじめご了承ください。

それでは、まずは
使用ソフトと条件設計の確認から
始めましょう!

かなり長いので、
手短かに結果だけ知りたい方は
使用ソフト・住宅の条件設定
最後のまとめをご覧ください。


目次


1.使用したソフト:ホームズ君
2.住宅の条件設定
3.比較した機器
4.①エアコン×ガス高効率給湯器
  (電気×ガス)

5.②エアコン×エコキュート
  (オール電化)

6.③エアコン×ハイブリッド給湯器
  (電気×ガス)

7.④エアコン+温水式床暖房×エコキュート
  (オール電化+温水式床暖房)

8.⑤エアコン+電気式床暖房×エコキュート
  (オール電化+電気式床暖房)

9.⑥エアコン+石油温水床暖房×石油給湯器
  (電気×石油)

10.⑦エアコン+電気式床暖房×ハイブリッド給湯器
  (電気×ガス)

11.⑧FF式ガス暖房機×ガス高効率給湯器
  (オールガス)

12.⑨FF式灯油暖房機×石油高効率給湯器
  (オール石油)

13.まとめ
 




木造住宅の省エネ性能の計算と
評価をするソフトで、
住宅会社の設計士など
専門家が使用するものです。

ネットで検索すると、
一般の方が自由に使える
光熱費シミュレーションサイトが
たくさんあります。

電力会社やガス会社、
設備機器メーカーなどが
提供しているものです。

これらとホームズ君の違いは、
細かい条件設定と計算ができること。

 
ホームズ君
■入力すること
・断熱材性能
・サッシの性能
・床面積
・設備の種類や熱源など
■結果
・年間の一次エネルギー消費量
・冷暖房負荷
・月別光熱費などで表示

ネットで使えるシミュレーター
■入力すること
・現在の光熱費
・家族構成
・使用機器など
■結果
・光熱費想定額
・今よりお得になる金額など


ホームズ君はプロ向けソフトですから、
省エネや光熱費を考える上で必要な
設計上の条件を反映して
詳細な試算ができるというわけです。

次に紹介する「住宅の条件設定」を
ご覧いただくとよくわかると思います。

 

 


では、シミュレーションに使用した
住宅の条件設定を確認しましょう。

●省エネ基準地域区分:6
●UA値:0.54
●延床面積:175.55㎡(53.1坪)
●外皮等面積:408.31㎡
 
省エネ基準地域区分というのは、
地域の気候の特徴を
省エネ基準に反映するために
全国を8つに分けたもので、
地域区分ごとに基準が決められています。

日本サステナブル建築協会の資料
わかりやすいので参考にしてください。

地域区分6(6地域)は
北関東や北陸から
西日本全域に広がっていて、
東海地区はほとんどが該当します。

下の画像のオレンジの部分です。
省エネ基準地域区分
なお、実際の地域区分は
市町村単位で決められています。

詳細はこちらをご確認ください
(国土技術政策総合研究所サイト内資料)。

UA値(外皮平均熱還流率)は
断熱性能・省エネ性能の指標で、
数値が小さいほど
性能が高いことを示します。

省エネ基準の6地域の基準はUA値0.87。

高断熱住宅を謳っているハウスメーカーで
0.3~0.45前後。

今回の住宅は0.54ですから、
特に高断熱を謳うほどではないけれど
省エネ基準は大幅に上回った、
今時のちゃんと断熱した家だといえます。

なお、シミュレーション対象住宅の
断熱仕様はこんな感じです。


その他設定
 
ガスは都市ガス、
冷暖房の設定温度は冷房27℃、暖房20℃。
 
光熱費は電気27円/kWh、
都市ガス155円/㎥、
灯油100円/Lで計算
(実際には契約先やプランにより異なる)。
 
床暖房がある場合は
リビングなど主要な部屋のみ、
約35㎡=21帖程度としています。

以上、使用ソフトと
住宅の条件設定を踏まえると
東海地方の大部分を占める6地域にあり、
イマドキの断熱性能を備えた家で、
専門的なシミュレーション
をしたのが
今回の結果です。

 

 


今回は電気とガスを使用した
いくつかの機器の組み合わせで
比較してみました。

というのも、
結果を見てもらうとわかるんですが
電気かガスかを選ぶだけでなく、
どの機器を選ぶかで
ずいぶんと違いが出ます。
 
特に光熱費に響くのは暖房と給湯です。

なぜなら、暖房と給湯が
家庭のエネルギー消費の半分以上を
占めているから!

冷房は影響がとても小さいですし、
実際のところエアコンしか
選択肢がありませんよね。

なので暖房と給湯の熱源・機器の
組み合わせを変えて、
この9パターンを比較しました。

今回比較したパターン
①エアコン×ガス高効率給湯器
(電気×ガス)
②エアコン×エコキュート
(オール電化)
③エアコン×ハイブリッド給湯機
(電気×ガス / 給湯は電気とガスのハイブリッド)
④エアコン+温水式床暖房×エコキュート
(オール電化+温水式床暖房)
⑤エアコン+電気式床暖房×エコキュート
(オール電化+電気式床暖房)
⑥エアコン+石油温水床暖房×石油給湯器
(電気×石油)
⑦エアコン+電気式床暖房×ハイブリッド給湯器
(電気×ガス / 給湯は電気とガスのハイブリッド)
⑧FF式ガス暖房機×ガス高効率給湯機
(オールガス)
⑨FF式灯油暖房機×石油高効率給湯機
(オール石油)

①~③が基本のエアコンと給湯器の
組み合わせシミュレーション。

④⑤はそれに床暖房を追加した場合。

⑥~⑨は寒い地域で見られる
石油FF式ガス暖房機などを
採用した場合です。

このあとそれぞれの
光熱費・一次エネルギー消費量を
見ていきますが、
ランニングコストと同じく気になる
製品代金と耐用年数を先に確認すると、

 
給湯器のイニシャルコスト
 
給湯器の製品代金は低い順に、
ガス高効率給湯機
石油高効率給湯機
エコキュート
ハイブリッド給湯機。

製品にもよりますが、
ハイブリッド給湯器は
ガス高効率給湯機の
2~4倍程度になります。

ただし、ガス高効率給湯機と
ハイブリッド給湯器は
ガス引込工事が必要です。

オール電化(エコキュート)だと
そもそもガス引込工事が不要になるので
イニシャルコストはその分
(20~30万円程度)抑えられます。


給湯器の耐用年数

どの給湯器でもだいたい15年前後と
違いがありません。

さあ、シミュレーションの前提条件が
すべて整いました
(長かったですね・・・すみません)。

どれがどのくらいお得なのか、
早速見ていきましょう!


 


エアコンとガス給湯器は
とても一般的な組み合わせですよね。
「うちもそう!」って方、多いはず。
 
ガス高効率給湯機は
エコジョーズという名前で知られています。
 
まずは皆さんになじみのある
エアコン×ガス高効率給湯器から
見ていきましょう。

結果は
年間光熱費 268,708円
年間一次エネルギー消費量 91.6GJ

一次エネルギー消費量というのは
要するにエネルギー消費量です。

石油や原子力、風力など
自然から得られるエネルギーを
一次エネルギー、
それを変換した電気やガスを
二次エネルギーといいますが、
二次エネルギーはモノによって
単位が違います。

電気ならkW、ガスなら㎥など。

エネルギー消費量を考えるときに
単位が違うと実際どれだけ
エネルギーを使っているのかわかりません。

そこで単位をそろえるために
一次エネルギーに変換して比較するんです。

だから「一次」というのはまあ置いといて
単純にエネルギー消費量が多いか少ないか
比べてもらえば大丈夫です。


 


続いてオール電化、
エアコン×エコキュートを見ていきます。
 
結果はこちら。

年間光熱費 240,964円
年間一次エネルギー消費量 87.2GJ

今回のシミュレーションでは、
トータルコスト的には
エアコン×エコキュートが最強
です。

次に紹介するハイブリッド給湯器の方が
ランニングコストは抑えられるんですが、
イニシャルコストまで考えると
エアコン×エコキュートの方が
安くなる可能性が高いからです。
詳しくは次の項目をご覧ください。

ところで、ホームズ君では
こんな感じで結果が出てきます。

一緒に表示されている「比較プラン」は
従来型のそれほど断熱性がよくない家で、
参考として表示されますが
とりあえず気にしないでください。


今回取り上げる
すべてのシミュレーションで
こうした数値を算出していますが、
なかなかスペースをとるので
本文中では結果のみ
表示していきたいと思います。

では次いってみましょう!

 

 


①の電気×ガスのパターンで給湯器を
さらに省エネな機器にしたのがこちら、
エアコン×ハイブリッド給湯器です。
 
ハイブリッド給湯器は
エコキュートのように
ヒートポンプでお湯をつくりつつ、
貯湯タンクのお湯がなくなったら
ガス高効率給湯機で
お湯をつくるという優れもの。

省エネ性能にも優れています。

で、結果はというと
年間光熱費 228,937円
年間一次エネルギー消費量 81.5GJ

床暖房を含まない、
エアコンと給湯器の組み合わせの中では
エアコン×ハイブリッド給湯器が
ランニングコストを最も抑えられます。

ただしハイブリッド給湯器は
エコキュートより
イニシャルコストが高くつきます。

機器代が1.2~1.8倍程度になるほか、
ガス引込工事も必要です。

エコキュートと比べると、
ランニングコストは
年間12,000円ほどの差。

耐用年数を15年と想定すると、
12,000円×15年→180,000円。

う~ん・・・残念ながら、
イニシャルコストが増える分を
光熱費削減分で補うことはできません。

いわゆる元が取れないというやつです。

とはいえ、エネルギー消費量は
エアコン×ハイブリッド給湯器が最少
です。
 
地球環境のことを考えると、
この組み合わせを選びたいですね。


 


ここからは暖房器具に床暖房を
追加した場合を見ていきましょう。

お客様からも「床暖房を入れたい」
というご相談をよくいただきます。

エアコンとはあったかさの
質が違いますもんね。

床暖房は温め方によって、
おもに温水式と電気式があります。

温水式は床下にお湯を流して温めるもの、
電気式は電熱線/ヒーターで
温めるものです。

まずは②のオール電化仕様に
温水式床暖房を追加した場合を
見てみましょう。

オール電化なので、
床暖房の熱源も電気です。

年間光熱費 251,657円
年間一次エネルギー消費量 91.0GJ

床暖房なしの場合に比べて
1万円ほど光熱費が上がりました。


結果は
 
年間光熱費 344,194円
年間一次エネルギー消費量 124.5GJ

光熱費もエネルギー消費量も
びっくりするくらい上がりましたね!

光熱費は
床暖房なしの場合と比べ約10万円、
温水式床暖房の場合と比べて
9万円もアップしました。

これだけ見ると
「床暖房を入れるなら温水式一択!」
って感じですが、
電気式もハイブリッド給湯器と
組み合わせるとアリなんです。

詳しくは
⑦エアコン+電気式床暖房×ハイブリッド給湯器
をご覧ください。

なお床暖房は
設置費用がかなりかかります。

設置面積によって大幅に違いますが、
50~100万円くらいかかることも。

温水式なら床暖房を入れても
光熱費はそれほどアップしませんから、
あとはイニシャルコストをかけるかどうかの
判断になりそうです。

 

 


さて、ここで給湯と床暖房の熱源を
石油(灯油)にした場合を見てみます。

愛知県では自宅に灯油タンクがあるのは
めずらしいと思いますが、
寒い地域では一般的。

東海地区では岐阜県内、
特に山間部ではよく見られます
(中島工務店の本社がある
中津川市加子母でも多いです)。
 
年間光熱費 269,799円
年間一次エネルギー消費量 97.6GJ

オール電化+温水式床暖房より
やや高いという結果になりました。

が、寒い地域で
多く採用されているということは
3地域や4地域になると
結果が変わってくるのかもしれません。
 
やはり実際に建てる地域の気候と
建物の性能を踏まえた
シミュレーションが大事だとわかりますね。

 

 


先ほど光熱費が跳ね上がった
電気式床暖房ですが、
最もランニングコストがかからなかった
エアコン×ハイブリッド給湯器と
組み合わせるとどうなるのでしょう。

年間光熱費 251,928円
年間一次エネルギー消費量 89.8GJ

さっきに比べると大幅に下がりました。

オール電化+温水式床暖房と
光熱費はほぼ同じで、
エネルギー消費量は
さらに削減されています。

電気式床暖房は
温水式に比べて設置コストが低い、
小スペースに適している等の
メリットがあります。

電気式床暖房を導入するなら
ハイブリッド給湯器との組み合わせを
検討してみるのがよいでしょう。

 

 


FF式とは建物外部と配管がつながっていて
外から取り込んだ空気で燃焼し、
燃焼後の排気ガスも
外部へ排出する方式です。

フツーのガスファンヒーターが
外部に接続されている
とイメージしてください。

空気を汚さず換気の必要がない等の
メリットがあります。

こちらも寒い地域で
採用されることが多いものです。

6地域で検討する必要があるのかというと
まあありませんが、
シミュレーションなので
参考までにご覧ください。
 
年間光熱費 300,282円
年間一次エネルギー消費量 95.7GJ

こちらも寒い地域でシミュレーションすると
また違うのかもしれません。

 

 


最後はこちら、
熱源がオール石油(灯油)で
FF式暖房機を採用した場合です。
 
年間光熱費 329,164円
年間一次エネルギー消費量 95.6GJ

熱源がガスの場合より、
やや高くなりました。

⑧と⑨は寒い地域で多い方法なので
エアコンを設置していない想定ですが、
近年の酷暑を考えると、
かなり寒い地域でもエアコンなし
というわけにはいかないでしょう。

もはや命に関わりますから、
住宅会社としては
設置しておきたいところです。

というわけでエアコンも設置すると、
光熱費・一次エネルギー消費量ともに
もう少しプラスになります。

 

 


長かったですね~。
わかりやすく表にしてみました。

基本のエアコン+給湯器については
ランニングコスト最安は
エアコン×ハイブリッド給湯器

トータルコスト最安は
エアコン×エコキュート

最も省エネなのは
エアコン×ハイブリッド給湯器
です。
 
床暖房は
オール電化なら温水式。
 
電気式を選ぶならハイブリッド給湯器との
組み合わせがおすすめ。
といったところですね。

最初にもお話ししたとおり、
これは今回の条件下での結果です。

建物の性能や地域が変われば
結果も変わります。

実際に建てる際には、
自分の家の条件で住宅会社に
シミュレーションしてもらいましょう。

ところで
電気かガスかを選ぶポイントは
光熱費と省エネだけではありませんよね。

もうひとつ、
多くのお客様が重視するポイント
「料理」について
比較実験してみました!

思ったより差があってビックリ・・・
という結果に。

こちらの記事をご覧ください。
IHクッキングヒーターvsガスコンロ