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設計

新築住宅の建具の選び方

住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。

今回のテーマは
「室内の建具の選び方」です。
 
家の中で床、壁、天井に次いで
大きな面積を占めるのが建具です。

木の床に同じく木の建具を合わせるのか、
あるいは壁と同じ白い建具にするのか、
それともまったく違う色・素材で
アクセントにするのか。

どんな建具を選ぶかによって
インテリアの雰囲気は
ずいぶん違ってきますから、
お施主様が悩まれるポイントのひとつです。
 
また建具にも既製品と造作があります。

当社では職人が手づくりした
造作建具を採用するケースが多いのですが、
住宅会社によっては
ふだん造作建具はつくらない
というところもあります。

建具を既製品にするか造作にするかは
住宅会社選びにも関わってくるんです。

今日はまず、
建具の種類と機能から
選び方のポイントを確認。

後半では既製品と比べた
造作建具のメリット・デメリットを
まとめました。

建具選びの前に
少し知っておくと役に立つ、
建具の調整のしかたは
こちらの記事をご覧ください。
ドア・建具の調整の仕方



目次


1.種類(開き方)から選ぶ
2.機能から建具を考える
3.和室の建具

4.既製品と比べた造作建具の
  メリット・デメリット

5.まとめ


 


 


建具の種類は開き方で分けられており、
大きく分けて開き戸と引き戸があります。

開き戸は、
一般的に「ドア」といわれるものですね。

引き戸は戸を横にスライドさせるもので、
引き戸のバリエーションとして
引き違い戸や引き込み戸があります。

ほかに、おもに収納などに使われる
折れ戸などがありますが、
今回は部屋の出入口に使われる
①開き戸、②引き戸、③引き込み戸
についての特徴と
採用する場合の注意点を見ていきます。


①開き戸
 
まずは開き戸の
メリット・デメリットです。

<メリット>
□気密性が高く、音が漏れにくい。
□引いた戸を納めるスペースが不要なので
 少ないスペースで取り付けられる。
□引いた戸を納めるスペースが不要な分、
 スイッチやコンセントの
 取り付け可能な壁が増える。

<デメリット>
■開閉のための
 ドアの可動スペースが必要で、
 その分室内で使えないスペースが増える。
■引き戸に比べて開閉のために
 身体の動きを大きくしなければならず、
 高齢者や身体が不自由な人にとって
 扱いにくい。

マンションなど
スペースが限られている場所では
開き戸が使われることが多く、
戸建住宅でも
スペースに制約がある場所では
開き戸を選ぶことになります。

引き戸に比べて音が漏れにくいため、
寝室などプライバシーを重視したい場所に
開き戸を選ぶケースもあります。
 
プランのときに注意したいポイントは
開く向きです。

ドアの場所によって、
内開きか外開きか、
右開きか左開きか

しっかり考えておかないと
ドアを開けたら
廊下を歩いている人にぶつかる!
なんてことが起こってしまいます。

また、開いたドアに
照明スイッチが隠れてしまう
なんてこともないように
動線をよく確認しましょう。



②引き戸

近年人気で、
中島工務店でもよく採用するのが
引き戸です。

<メリット>
□風でバタンと閉まることがないので
 開け放しておける。
 途中まで開けた状態にもできる。
□ドアのような可動スペースが不要なので
 部屋を広く使える。
□戸をスライドするだけで開閉できるため、
 高齢者や身体が不自由な人も扱いやすい。

<デメリット>
■ドアに比べて気密性が低く、
 音がもれやすい。
■引いた戸を納めるスペースが必要。
■引いた戸を納めるスペースには
 スイッチやコンセントをつけられない。

開き戸が開けるか閉めるかの
2択なのに対して、
途中まで開けておくなどの調節ができるのが
引き戸のメリット
です。

引き戸の場合は開き戸よりさらに
スイッチやコンセントに使える壁が
少なくなるので、
プランのときには十分注意してください。

また、設計によりますが、
3枚以上の連続した引き戸を採用する場合は
開口部の構造強度を
検討しなければいけないケースもあります。



③引き込み戸

引き戸のバリエーションとして人気なのが、
戸をすべて壁の中に収納してしまう
引き込み戸
です。

戸をすべて引き込んでしまえば
部屋と部屋が一体的に感じられるので、
開放感を出したいときに最適です。

メリット・デメリットは引き戸と同じですが
複数枚の戸をすべて壁の中に収納する
=壁厚が大きくなるため、
設計デザインによっては
柱、梁を太くしなければいけない
場合があります
(アウトセットといい、
戸を壁の外に納める方法もあります)。



 


もちろん部屋の出入口を開閉するのが
建具の機能ですが、
同時に考えたいのが換気や風通し、
採光、音に関する機能です。


①換気・風通し

家全体の換気・風通しのためには、
部屋と部屋を仕切る建具を
開け放しておく必要があります。

引き戸ならそのまま開けておけばOK。

開き戸なら開けた戸を固定しておく器具
(ドアキャッチャー等)が必要です。

プランのときには
どちらからどちらに風が抜けるのかを確認し
それぞれの戸を開けておく方法を
検討しましょう。


②採光

採光は建具のデザインに関係してきます。

リビングなど
周囲に明るさを届けたい場所の戸には、
一部や全体にガラスやアクリル板が
使われていることがありますよね。

戸にガラスやアクリル板などを用いれば、
戸を閉めていても光を通すことができます。

トイレなど
中に人がいるかどうかを知りたい場所では、
戸の一部に光が漏れる部分を
つくっておくのも一般的です。
 
建具のデザインを考えるときには、
光をどのくらい通したいのかも
考慮しましょう。


③音
 
一般的に、開き戸の方が引き戸より
気密性が高いため
音が漏れにくいとされています。

とはいえ、音の問題を
どのくらい気にするかは
家族構成や間取りにもよります。

夫婦二人暮らしなら
お互いに音はほとんど気にならず、
開閉しやすい引き戸の方がいい
といったことはよくありますし、
寝室がリビングなど
共有スペースから離れている場合にも
音はそれほど気になりません。

「うちは音に敏感だな」という場合は、
間取りを考える段階から
その旨を設計士に伝えておくと、
建具まで含めて
検討してもらえるでしょう。



 


もうひとつ、
和室の建具を取り上げておきましょう。

和室の場合、
建具も伝統的な障子と襖を用いるのが
一般的です。

障子と襖の違いは
光を通すか通さないか
です。

どちらも木の枠に
紙を貼って仕上げる建具ですが、
襖の場合は襖紙(鳥の子紙・和紙)を
貼り重ねて仕上げているため
光を通さないのに対し、
障子は薄い障子紙を1枚貼るだけなので
やわらかな光を通します。

どちらも木と紙でできているので
軽いのも特徴です。
 

和室では外に面したところに
障子が使われることが多く、
洋室におけるカーテンのような役割も
果たしています。
 
障子は先ほどお話しした
光を通す建具でもあるので、
和室だけでなく
リビングなどにも使用します。


 

 


中島工務店では障子や襖も含め、
すべての建具を
手づくりすることが可能です。

造作建具のメリットはなんといっても
デザインと寸法の自由度が高いこと。

 
空間のイメージに合った建具を
設計士がデザインし、
建具職人が製作して取り付けるので、
既製品ではつくり出せない
空間の統一感と味わいが感じられます。

具体的には、
素材を選べるのはもちろん、
光を通すか通さないか(どのくらい通すか)
框や桟の幅、手掛けのデザインなどを
ひとつひとつ検討します。

開けたとき、閉めたとき
それぞれの見た目まで調節できるのも
造作建具だからこそ。

例えば、開けたときに
戸がすべて見えなくなるのか、
手掛けが残るのかなど
細かいところまで好みに合わせて
決めることができます。



施工の際に、
それをコントロールするのは
現場監督の役目です。

引いた戸をどこで止めるのかを
しっかり指示して、
狙った見え方になるように
きっちり施工状態を確認します。

造作建具は、
設計士・建具職人・現場監督・大工
みんなの技術で成り立っている
というわけです。

一方、無垢の造作建具のデメリットは
建具が反るなどして
開閉しにくくなる場合があることです。

無垢の木は建具になってからも
水分を吸ったり吐いたりするため、
数年間は伸縮が避けられません。
 
反ることがほとんどなく
微調整もしやすい既製品との違いの
ひとつだといえるでしょう。

開閉しにくくなった場合は
調節させていただきますが、
無垢の木の手づくり建具の場合、
この点はご容赦いただきたいと思います。

既製品と造作建具は
将来のメンテナンスにおいても
違いがあります。

既製品の場合、
数年で廃番になる製品が多いため、
将来のメンテナンスの際に
部品がないことも考えられます。

その点では、
造作建具なら何年たっても
職人が対応できるので安心ですね。


 

 


最後に、建具選びの進め方をまとめます。

まずは住宅会社を選ぶ段階で、
既製品のみの会社か
造作建具もできる会社かを
確認しましょう。

もちろん建具だけで
住宅会社を選ぶことはできませんが、
建具に対して
どのような考え方を持っているかで
家づくり全体の考え方もわかりますし、
「建具も自分らしく手づくりしたい!」
という場合はこの段階で
対応してもらえる会社を
選んでおかなくてはいけません。

設計が始まったら、
建具についても
最初に自分の好みを伝えましょう。

このとき、
今回ご紹介したような観点から
どうしたいかを伝えると
設計士はイメージがつかみやすいはずです。

既製品であれ造作であれ、
プランが提示されるときに
建具についても
設計士から提案があるはずです。

そこからは、その案をベースに
自分たちの希望を伝えて
詳細を詰めていくことになります。


中島工務店では、
出入口に敢えて戸を設けず
「のれん」を提案することもあります。

キッチンとパントリーの間、
キッチンとダイニングの間など
いちいち開け閉めするのが面倒なところには
のれんがちょうどいいことがあるんです。

手にお皿を持っていたりすると、
スッとくぐれるのれんが便利って
わかりますよね。

のれんの長さによって
向こう側をほとんど
見えなくすることもできれば、
人がいることがわかる程度の
長さにすることもできます。

季節によってのれんの柄を変えて
楽しんでいるお客様もいらっしゃって、
戸とは違った良さがあります。

これから建具を考えるなら、
ぜひのれんも検討してみてください。