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現場

新築住宅の外装塗料の色の選び方


 
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回のテーマは
「無垢の木の家の外装塗料の色の選び方」
です。

内部でも外部でも、
住宅に塗料を塗る目的はおもに2つ。
 
デザイン性と材料の保護です。

中でも外部塗装は外観の印象を左右する上
紫外線や雨から材料を守るという
重要な役割を果たしています。

せっかく家を建てるんだから、
かっこいい外観が
長く続くようにしたいですよね??
 
そのために大事なのが塗料なんです。

当社のような家づくりをしている場合、
外部木部の塗料の色は
工程の中でも意外と早いタイミングで
決めなくてはいけません。

というのも、
こちらの記事の「施工ルール③」にある通り
外部木部は先行塗装するからです。
構造見学会の見るべきポイント

木材の加工工程で塗装も行うので、
着工から3~4週間が
色決めのタイムリミットです。

今日はそんな外部塗料を選ぶときに
知っておきたいポイントを、
中島工務店で標準採用している
「リボス タヤエクステリア」を例に
お話しします。


 


塗料には、大きく分けて
材料の表面に塗膜をつくる
コーティング系塗料
材料に浸透する浸透性塗料
2種類があります。

ウレタン系やシリコン系が
コーティング系塗料の代表格。

よく見かける新建材の
ぴかぴかツルツルのフローリングを
イメージしてください。

あのぴかぴかツルツルは
材料を保護する塗膜なんです。

一方の浸透性塗料は
オイルなどを浸透させて木を守るもので、
リボス タヤエクステリアなどの
自然塗料はこちらに含まれます。

中島工務店は無垢の木には
自然塗料をおすすめ
しています
(当社に限らず、
無垢の木の家を建てている住宅会社は
だいたいそうだと思います)。

無垢の木の素材感や風合いを活かせる
浸透性塗料の中でも、
有害物質を含まない自然塗料なら
安心・安全
だからです。
 
ただし自然塗料はコーティングしていない分
耐久性が限られていて、
コーティング系塗料に比べると
こまめに塗り直しをしなくてはいけません。

だから色を選ぶときには
メンテナンスのことも
知っておいてほしいんです。

え?色とメンテナンスが関係あるの?
と思われましたか?

あるんです!
 
でもその話をする前に、
塗装が劣化すると
どういう状態になるのかを
確認しておきましょう。


 

 


下の写真は長久手Studioの
玄関アプローチの梁の写真です
(2階から見下ろしたところです)。

一番手前の梁だけ
ほかの梁と色が全然違っていますよね?
これが塗装が劣化した状態です。
 


おもな原因は陽射しと雨です。
 
屋根にすっぽり覆われている
奥の梁に比べて、
手前の梁は陽射しも雨も当たりやすいため
塗装の劣化が進んでしまいました。
 
長久手Studioは2014年7月OPENですから、
3年足らずでこれだけの差ができた
というわけです。

※手前の梁の上側の面は
雨除けの板金を張ってあります。
そうです、当初からここは
一番傷みやすいとわかっていたんです。

塗装が劣化すると木材に
直接雨などが当たるようになってしまい、
繰り返し雨が浸透すると
木が腐ってしまう場合もあります。

木が腐ってしまったら補修は大変です。
 
無垢の木は建物になってからも呼吸しており
湿度などの影響で伸縮するため、
どうしても塗装が劣化しやすいという
傾向があります。

適切なタイミングで
塗り直しをしなきゃいけないので
ちょっと面倒だと思われるかもしれませんが
「だからこそ愛着が生まれる」という
お客様もたくさんいらっしゃいます。

無垢の木ならではの味わいを
長持ちさせるために、
メンテナンスを見越した
色選びの注意点を見ていきましょう。


 

 


当社で扱っている
リボス タヤエクステリアを
無垢板に塗ったサンプルです。

実際に長久手Studioの
打ち合わせ室に置いてあるもので、
これを使って色決めをしています。
 

無色で木そのものの色を活かすクリアから
黒まで8段階から好みに合わせて選べます。

ずいぶん濃淡がありますが、
濃い色の方が紫外線の影響を受けにくいので
塗装が傷みにくく
なります。
 
黒の方が紫外線透過率が低いからで、
「日傘は黒がおすすめ」といわれるのと
同じ原理です。

じゃあ濃い色がおすすめなのかというと
一概には言えません。

傷みにくいということは
薄い色に比べて
メンテナンスの回数が少なくなる
ということですが、
木材のためにはこまめに
メンテナンスした方がいいので
薄い色の方がいいともいえるんです。

とはいえ、
そもそも塗料の色を選ぶときに
一番にメンテナンスのことを
考えることはありませんよね。

デザイン性などを考慮して、
好きな色を選んでください。

ただ、薄い色を選んだ場合には
濃い色に比べて
メンテナンスの回数が多くなる

ということを覚えておくと
木材をできるだけ
良い状態に保てると思います。


 

 


塗装をやり直す場合には、
元の塗料にもよりますが、
多くは元の塗料を剥離して
新しい塗料を
塗り直さなくてはいけません。

ところが、リボスの塗料は剥離せずに
元の塗料の上から
塗り重ねることができる
という特徴があります。

比較的簡単にできるため、
ウッドデッキなどは自分で塗り直すという
お客様もたくさんいらっしゃいます。

塗り重ねOKで
メンテナンスしやすいという点は、
数ある自然塗料の中で
中島工務店がリボスを採用している
理由のひとつでもあります。

※リボスの塗料でも、
長期間メンテナンスを行っていなかった場合は
汚れを落とすために
剥離が必要になることもあります。

ですが!
ここで知っておいてほしい
ポイントがあります。

まず、
元の色と同じ色を塗り重ねていいのは
塗装の劣化があまり
進んでいないとき
に限ります。

こまめに塗り直していれば
塗り重ねていい場合が多いですが、
引渡し後の年数や
日の当たり方などによって
劣化の程度は異なります。

ひとつの建物でも
東西南北で違ってしまうので、
定期点検などの際に
プロに確認してもらうことを
おすすめします。
 
次に、同じ色を繰り返し塗り重ねると
だんだん濃くなっていく
ことにも
注意が必要です。

当たり前といえば当たり前なんですが、
最初に色を選ぶときには
なかなかそこまでは
イメージしにくいものです。

だんだん濃くなっていった結果
「こんな色じゃなかった」
とならないように、
あらかじめメンテナンスのことも考えて
色を選ぶといいですね。

もちろん、設計士や現場監督が
アドバイスいたします。
 


色が濃くなっていくというのを
逆手にとって、
敢えて最初に薄い色を選んで
だんだん濃い色を塗り重ねていく

という方法もあります。

例えば、新築のときには
クリアを塗っておいて、
メンテナンスのときには
ピーチ→パイン・・・と
だんだん濃い色を塗っていくわけです。

木部の色を変えることで
外観の印象も変わるので
「楽しい」と言われるお客様もいます。

なお、この逆、つまり濃い色に
薄い色を塗り重ねることはできません。

程度の差はあっても
元の塗料は必ず劣化していて
均一に塗られた状態ではなくなっているので
濃い色の上に薄い色の塗料を塗ると
どうしても色ムラができてしまうんです。

最初に濃い色を選んだ場合は
その色より濃い色、
ブラックの場合はブラックを
塗り重ねることになりますが、
薄い色ほど色ムラにはならないので
安心してください。


 

 


いろいろ書いてきましたが、
デザイン性を左右する色選びでは
やはり好みが一番重視されます。

それでもここに挙げたようなことを
知っているのといないのとでは
住み始めてからの満足度が違ってくるので、
頭に置いて考えたいですね。

色選びで注意したいことを
まとめておきましょう。

●濃い色の方が薄い色より塗装が傷みにくく、
メンテナンスの回数が少なくてすむ。

●木材のためには、
こまめなメンテナンスが必要な
薄い色の方がおすすめ。

●リボスの塗り重ねがOKかどうかは
塗装の劣化具合による。

●同じ色を繰り返し塗り重ねると
だんだん濃くなっていくことを見越して
色を選んだ方がいい。

なお、塗装の劣化具合によっては、
一度元の塗料を削ってしまった方がいい
という場合もあります。

住まいをよりよい状態に保つために、
迷ったときには
プロに相談してくださいね。