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無垢の床のメンテナンス

 

住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回のテーマは
「無垢の床のメンテナンス」です。

中島工務店では
杉や桧の無垢フローリングを
おすすめしていて
お客様にも人気ですが、
よく心配されることのひとつがキズです。
 
杉や桧はやわらかくて
足ざわりがいいのが特長ですが、
その分キズがつきやすいのも事実です。

無垢の床なので
キズも味わいのひとつになっていきますが
そうはいってもきれいにしておきたい
と思うお客様の気持ちもよくわかります。

ではお手入れ方法はというと、
ふだんのお手入れは水拭きでOK。
 
できたばかりの浅いキズなら
スポンジなどを使って
水をたっぷり含ませると
木がふくらんで
ほとんどわからなくなります。

それに年に1回くらい
塗装をし直していただくとよりよい、
といったところです。

でも暮らしているうちに
深いキズもできるし、日焼けもします。

そんなときには
「削って塗り直すことができます」
といつもお話ししているんですが、
実際どんな作業で
どんな仕上がりになるのか、
どのくらいのキズが修復できるのか、
長久手Studioでやってみました!
 
なお、今回は削る作業は
プロの職人さんに依頼。
塗る作業はスタッフで行いました。

 

目次


1.作業①準備
2.作業②表面を削る
3.塗装
4.塗り直しビフォーアフター


 


 

今回塗り直したのは
長久手Studioのセミナールームの床です。
素材は桧。

2013年6月竣工なので
ちょうど5年が過ぎたところです。

作業のビフォーアフター写真を
出したいところなんですが、
照明の関係か全景を撮ると
違いがわかりにくい・・・。
ので、のちほどキズや汚れの箇所を
ピックアップして
ビフォーアフターを比べたいと思います。

なお、セミナールームはふだん
ヨガ教室などの各種講座に貸し出していて
不特定多数が出入りします。

なので5年でかなりキズだらけですが、
一般家庭だと5年でこれほど
キズや汚れができることはありません。

というか、10年かかっても
なかなかここまではならないと思いますので
その点はご心配なく!

では、準備を始めましょう。

まずは養生です。

削るときに木の粉が飛ぶので
キッチンの上にあった
レンジやコーヒーメーカーなどの小物を
別の部屋に移動し、
キッチン本体もすっぽり覆います。

床のコンセントもはずします。
はずしたところが
白くなってますよね。
 
これが竣工当時の桧の色に近いので、
ずいぶん色が変わったことがわかります。

削るのに使う道具はこちら。
サンドペーパーをつけて使います。

今回、サンドペーパーは
100番と180番を使いました。

 


では作業開始!
 
プロの職人さんが削っていきます。

白いところが削ったところ。
色が濃いところとの違いが歴然です
(光の加減じゃないですよ!)。

今回、サンドペーパーは
100番と180番を使いました。

まず100番で粗く削ってから、
やや細かい180番でさらに削ります。

だいぶ作業が進みました。

こちらの写真も削る前と後の違いが
わかりやすいですよね。

収納の扉を開けて、
扉の下の部分も忘れずに削ります。

約43㎡(約26畳)の
セミナールームの床を削るのに、
約6時間かかりました。


 


ここからは現場監督2名が
がんばってくれました。

もちろんプロの職人さんに
頼むこともできるんですが、
中島工務店では
建築した住宅のお引渡し前に
お客様とスタッフが一緒に
床の塗装をするのが恒例で、
みんな床塗り経験豊富なんです。

というわけで、
この日もさらっとやってくれました。

まずは削ったあとの木の粉を
掃除機できれいにします。
特にフローリングの溝は念入りに。


掃除機できれいになりきらないところは
カッター(切れない方)を使います。

きれいになったら
いよいよ塗装を始めましょう。

使うのはこちらの道具。

小さな刷毛で角を塗り、
柄がついたスポンジで
全体を塗っていきます。

塗料はリボス カルデットという
自然塗料です。

塗料には、大きく分けて
材料の表面に塗膜をつくる
コーティング系塗料と
材料に浸透する浸透性塗料の
2種類があります。

ウレタン系やシリコン系が
コーティング系塗料の代表格。

よく見かける新建材の
ぴかぴかツルツルのフローリングの、
あのぴかぴかツルツルが
材料を保護する塗膜です。

一方の浸透性塗料は
オイルなどを浸透させて木を守るもので、
リボス カルデットなどの自然塗料は
こちらに含まれます。

中島工務店は無垢の木には
素材感や風合いを活かし、
有害物質を含まない
安全な自然塗料をおすすめしています。

さて。
監督2人が連携して作業開始です。

1人が刷毛で角を塗っていき、
もう1人がスポンジで全体を塗ります。



掃除機かけ~塗装完了までは
約1時間でした。

塗装後は乾くまで立ち入り禁止。

季節や天気にもよりますが、
一晩は入らない方がいいでしょう
(今回は数時間で乾きました)。

今回ご紹介したように無垢の床は
お客様ご自身でも塗装できますが、
ひとつ注意点があります。
 
リボスカルデットは
アマニ油という植物油を原料としていますが
植物油は乾燥する過程で酸化反応熱を発して
自然発火する恐れがあります。

使用した刷毛やスポンジは
しっかりと水洗いして
廃棄する場合もたっぷり水を含ませるよう
注意してください。

 

 


乾いたあとの全体像を
先にお見せしておきますね。

よくわかんないですよね?
 
てことで、キズや汚れを
ピックアップして比較していきます。

こちらは先ほどのコンセントの周り。
細かいキズがたくさんありましたが・・・

ほとんどわからなくなりました。

窓際の雨染みや細かいキズ。

こちらもすっかりキレイです。

下の写真の真ん中に
斜めに走っている黒っぽいキズ。

わりと大きめ、
ただしそれほど深くはなかったんですが

すっかりわからなくなりました。

一方、こちらはかなり深いキズです。
 
ついでに細かいキズや水の跡もあります。

細かいキズと水の跡はなくなりましたが、
深いキズはそのままです。

このレベルのキズは
削っても修復できません。

深いキズはどうしようもありませんが、
浅いキズや汚れはだいたいきれいになるのが
わかっていただけたかと思います。
 
実際アフター写真を撮ろうと思ったら
キズの場所がわからなくなってしまって、
木目で場所を特定したくらいです。
 
ただ、年数を経て
飴色になっていた表面を削ったため、
取れなかったキズの中にはかえって
目立つようになったものもあります。

木が飴色に変わっていく
経年美を楽しめるのも
無垢の木の家の醍醐味です。

削って塗り直すという手段もあると
頭に置きつつ、
お手入れしながら木の家の変化を味わうのも
いいのではないでしょうか。

床のお手入れと同様に
お客様からよく相談をいただくのが
ウッドデッキの塗装ですが、
こちらも長久手Studioでやってみましたので
下の記事をご覧ください。