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家づくり

構造見学会のポイント part2


 
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回のテーマは
「構造見学会のポイント part2」です。
 
part1はこちらからご覧ください。
構造見学会の見るべきポイント

 
一般のお客様と工務店など専門家との
知識の差が大きく、
「どこを見ればいいかわからない」と
なりやすい構造見学会。

ですが、構造見学会こそ
住宅会社の考え方や施工技術がわかる
とても重要な機会です。

というわけで、
今回も中島工務店を例に
構造見学会で本当に見てほしいポイントを
具体的にご紹介。

構造見学会に有意義に参加するために
参考にしていただければと思います。


目次


1.前回のおさらい
2.施工ルールの例④
  金物を見せない工夫

3.施工ルールの例⑤
  防水処理

4.施工ルールの例⑥
  柱の直下率

5.まとめ


 

 


はじめに「構造見学会のポイント part1」
お話しした内容をおさらいしましょう。

構造見学会は建築途中の現場で
建物が完成したら見えなくなる
構造部分を見ながら
耐震性・耐久性・断熱性などを
確認する
機会ですが、
それらに加えて一番見てほしいのが
現場で見なくちゃわからない
その会社の施工ルール
です。

どんな会社でも
自社が標準とする工法や構造、
断熱材、耐震のしくみなどは
決まっていて当たり前で、
一般的に住宅会社が構造について
説明するのはだいたいこの部分です。

でも実際に家を建てるためには、
そんな大枠の決まりごとを
カタチにするための
細かな施工ルールがあります。

具体的に「このように施工する」
というルールを定め、
検査基準なども設けて
必要な性能を担保するしくみがなければ
一定の水準を保った建物を
建てることはできないのです。

施工精度を上げるには
それなりの技術を持った職人が必要ですし、
当然コストもかかります。

それぞれの部位について
どの程度チカラを入れるかは、
その会社しだい。

これが、構造見学会に行けば
その会社の家づくりに対する姿勢がわかる

という理由です。

記事「構造見学会のポイントpart1」では
中島工務店を例に、
①仕口の納め方、
②気密シートの施工方法、
③完成したら見えなくなる部分の先行塗装
をご紹介しました。

今日はさらに見てほしい
3つの施工ルール、
④金物を見せない工夫、
⑤防水処理、
⑥柱の直下率

をご紹介します。


 

 


金物とは木造住宅の
部材と部材の接合部分の補強や
材の脱落防止に取り付けられるモノで、
構造金物、補強金物などとも呼ばれます。

現代の木造住宅では
耐震性を高めるため、
金物の使用が義務付けられているので、
柱や梁の接合部には
必ず金物をつけなくてはいけません。

そうなると、中島工務店のように
木の柱や梁を見せる造りだと
金物も見えてしまう
という問題が起こります。

敢えて金物を見せるデザインもありですし、
実際にそういう造りにしている
住宅会社もあります。
 
でも、中島工務店は
木の落ち着いた空間づくりを
大切にしているので、
やはり木がいっぱいの中に
異質な金属を見せるのは
できれば避けたい・・・。

というわけで、
金物を見せない工夫をいろいろしています。

例えば、
一般的に梁の外につける
金物を梁の中に仕込む方法。

プレカットのときに
あらかじめ仕込むんですが、
自社工場だからこそできる技とも
いえるかもしれません。

どうしても見えてしまう部分には
木でフタをします
(梁の上側とか普段暮らしていて
見えないところはそのままです。
下の絵でいうと
梁の横にある丸い穴は埋めるけど、
上の四角い穴はそのままにしておく
ということが多いです)。
 


敢えて金物を使わず
「追っかけ大栓」「込み栓」といった
伝統技術を使うこと
もあります。

昔は木材を適切に刻むことで
金物を使わなくても
長期にわたって頑丈な構造を
つくっていました。

「継手(つぎて)」
「仕口(しぐち)」
と呼ばれる大工の技です。

金物が義務化された現在でも
伝統技術の一部は金物の代用として
認められており、
これらはその中のひとつです。
 


上の絵のようなケースでは
最初にご紹介したように
金物を木材の内部に仕込むこともできますが
こうすることで見た目にちょっと変化が出て
「おもしろい」「おしゃれ」と
感じていただけることも多いので
採用することがあります。

伝統技術を受け継いだ大工が建てる家
ならではの醍醐味ですね。

追っかけ大栓は少し前まで
大工さんが手刻みしていましたが、
今は自社プレカット工場で
機械加工できるようになりました。

ほかにも火打ち梁なら表面に1枚板を張るなど、
中島工務店にはひと手間かけて
金物が見えないようにするための
施工ルールがあります。

金物は必ずしも
隠さなくてはいけないものではありませんが
どのように見せるか・隠すかに
会社の空間デザインへの考え方と
施工技術が現れます。

構造見学会では
金物をどのように処理しているか
確認してみてください。


 

 


建物にとって水は大敵です。
木が水に濡れると弱くなり、
濡れたままの状態が続くと
腐っていくのはわかりますよね。

木造住宅の場合、
防水がきちんとできていないと
躯体の劣化につながってしまいますから、
防水処理は私たちが
最も気を遣うことのひとつです。

注意しなくてはいけないのは
部材と部材の接合部や貫通部分。

そこに防水テープを貼ったり、
専用部材を使って
水が入り込まないようにするのが
基本的な防水処理の方法です。
 
防水テープの貼り方にもルールがあり、
水の流れを考慮して
上を一番最後に貼り、
下には貼りません。


水が入りやすいサッシまわりでは、
サッシの下端に
透湿防水シート・タイベックを
折り込むのがルールです。

こうすることで上から流れてきた水が
躯体内に入り込むのを防ぎます。

※透湿防水シート
湿気は通すが水は通さないシート。
建物外部からの水の浸入を防ぎ、
壁体内の湿気を逃がす。

 


これらの施工状況は
防水検査(社内検査)で
施工課長のチェックを受けます。

建物を長持ちさせるためには
防水はとても重要なポイントです。

構造見学会の段階なら
まだ外壁を張っていない、
つまり透湿防水シートが見えていることが
多いと思いますので、
建物の外側の施工状況も
ぜひ確認
してみてください。


 

 


施工ルールというより
設計ルールですが、
柱の直下率にも注目してみてください。

柱の直下率とは1階の柱が2階の柱の
直下にある割合を指します。

建築基準法には
柱の直下率に関する規定はありませんが
万が一の地震の際、
柱の直下率が高いと
地震の力がどこかに偏ることなく
バランスよく伝わるため
被害が軽減される
と言われています。

中島工務店では設計時に
柱の直下率と耐力壁のバランスをよく考慮し
柱の直下率60%以上・壁の直下率65%以上・
耐力壁の直下率50%以上をめやす
にし、
専用ソフトで検証しています。

構造見学会の時点なら、
完成後は見えなくなる柱も
見えているはずです。

実際にどのように
柱が配置されているのかを確認してみると、
その会社の地震に対する考え方を知る
参考になるでしょう。


 

 


このように見ると、
構造見学会って会社の姿勢が
よくわかるチャンスだと思いませんか?

構造見学会に参加したら、
標準的な工法や構造、断熱材、
耐震のしくみを聞くだけじゃなく、
それを具体的に
どのように実現しているのかを
尋ねてみてください。

その答えに納得できるかどうかは
住宅会社選びの参考になるはずです。