現場
プレカット工場訪問
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
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今回のテーマは「プレカット」です。
プレカットとは
建築現場で組み上げやすいように
木材の接合部を
あらかじめ工場で加工すること。
建築現場で組み上げやすいように
木材の接合部を
あらかじめ工場で加工すること。
昔は大工さんが手で加工していましたが
(手刻みといいます)、
より高い精度で効率よく組み上げるために
今日は一般のお客様が
あまり見る機会のない
プレカット工場を訪問します。
プレカットのメリットや難しいところ、
加工手順や機械化せず
人の手を掛けているところなどを
聞いてみました。
断熱性や気密性、耐震性など
性能面が重視される現代の住宅建築を
裏で支える技術をご覧ください。
5.工場見学できます性能面が重視される現代の住宅建築を
裏で支える技術をご覧ください。
目次
中島工務店の協力会社です。
中島工務店の本社があるのと同じ
岐阜県中津川市加子母にあり、
中島工務店を含むたくさんの建築業者からの
依頼を請けています。
プレカット工場全景
プラモデルを思い出してください。
プラモデルは
パーツとパーツをくっつけるために、
それぞれの端に凹凸があって
パチンとはめ込むようになってますよね。
パーツとパーツをくっつけるために、
それぞれの端に凹凸があって
パチンとはめ込むようになってますよね。
パーツに当たる部分、
つまり、丸太を柱や梁などの
角材に加工するのが製材所で、
角材と角材をくっつけるために
つまり、丸太を柱や梁などの
角材に加工するのが製材所で、
角材と角材をくっつけるために
はめ込む部分をつくるのが
プレカット工場というわけです。
プレカット工場というわけです。
はめ込む部分は
仕口(しぐち)や継手(つぎて)と
呼ばれます。
※仕口
2つ以上の木材を直角or角度のある状態で
組み合わせる手法。
※継手
木材を長手方向に継ぎ合わせる手法。
加工済みの仕口
機械化が進んでいるので
工場の作業員は8人だけ。
工場の作業員は8人だけ。
このプレカット工場には年間50組ほどが
視察・見学に来られますが、
一般の方からはよく「人がいない!」
と驚かれます。
視察・見学に来られますが、
一般の方からはよく「人がいない!」
と驚かれます。
工場内にはほとんど人の姿がない
といっても、基本的にはCADに
木材の加工データを入力
→機械で加工で完了です。
もう少し詳しく写真で見てみましょう。
まずはCAD。
ここで正確に入力されていないと
誤った加工がされた木材が
現場に届いてしまうので、
細心の注意を払って作業が進められます。
オペレーターが機械を操作すると
CADで入力されたデータに従って
木材が加工されます。
CADで入力されたデータに従って
木材が加工されます。
こちらが仕口を加工する機械。
真ん中の青い部分に「1」「2」と
数字がついていますよね。
数字がついていますよね。
ここに刃物が仕込まれていて、
右から流れてきた木材を削って加工します。
右から流れてきた木材を削って加工します。
このようにほぼ機械化された工程ですが、
人の手を掛ける部分もあります。
人の手を掛ける部分もあります。
まずは木を選ぶところ(番付といいます)。
例えばよく目につく柱や梁には
収納などあまり目につかないところに比べて
できるだけきれいな木を選ぶなど、
家の中のどこにどの木を配していくかを
決めるのは機械を操作している
オペレーターの役割です。
中島工務店の家は
木がきれいに見えると
言っていただくことが多いのですが、
それを支えているのがプレカット工場の
スタッフの眼というわけです。
もうひとつ、
人の手を掛けるのが丸太の加工です。
四角いものを加工するのは
機械が得意とするところなのですが、
例えば当社でよく採用している丸太梁は
四角くない上に湾曲しているので
基準となる線を大工が決めて
(墨付けといいます)
それに合わせて手刻みしていきます。
下の画像をご覧ください。
黒い線が大工がつけた墨で、
仕口のまっすぐな部分は機械加工で
ほかの丸太と組むところは
丸太の形に合わせて手刻みしています。
機械と人の手、
得意な方を臨機応変に組み合わせて
効率よく適切な加工をしています。
得意な方を臨機応変に組み合わせて
効率よく適切な加工をしています。
これほどプレカットが普及した背景には、
やはりそれなりのメリットが存在します。
ここではおもなメリットを
4つご紹介します。
①スピード
最大のメリットはスピードです。
35坪程度の家1軒分の構造材の
仕口・継手を加工するとして、
手刻みなら1カ月半かかるところを
プレカットなら3日でできてしまいます。
仕口・継手を加工するとして、
手刻みなら1カ月半かかるところを
プレカットなら3日でできてしまいます。
住宅の建築工事は
何カ月もの時間がかかります。
プレカットで
1カ月半を3日に短縮できたら、
その分様々なコストを抑えられて
助かりますよね。
建て方の様子
プレカットされた構造材を大工が組み上げる
プレカットされた構造材を大工が組み上げる
②高い精度
2つめのメリットは
機械ならではの精度の高さ。
手刻みの時代、
大工さんはどんなにしっかり
加工していても
建て方の日は
「ちゃんと建つかな」と
ドキドキしていたそうですが、
今ではそんな心配はありません。
断熱・気密・耐震など
住宅に求められる性能が
どんどん高くなっている中で、
プレカットはしっかりとした
構造躯体をつくる一翼を担っています。
建て方のときには水平・垂直も確認
③現場でゴミが出ない
工場ですべて加工して搬入するので
現場加工が必要なくゴミが出ませんから、
廃棄物処理の手間やコストが削減できます。
現場加工が必要なくゴミが出ませんから、
廃棄物処理の手間やコストが削減できます。
一般家庭でもゴミの出し方が
年々難しくなっていると思いますが、
実は業務用でも同じことが起こっていて
現場の廃棄物の処理は
頭の痛い問題のひとつになっています。
年々難しくなっていると思いますが、
実は業務用でも同じことが起こっていて
現場の廃棄物の処理は
頭の痛い問題のひとつになっています。
プレカットならそれを軽減できる上に、
端材はチップなどに加工して
再利用することもできます。
④先行塗装で作業性と見映えアップ
これはすべてのプレカット工場に
言えることではないかもしれませんが、
少なくとも中島工務店のプレカット工場では
部材の先行塗装を行っています。
言えることではないかもしれませんが、
少なくとも中島工務店のプレカット工場では
部材の先行塗装を行っています。
先行塗装とは一般的に
組み立ててから塗装する部分を、
順番を入れ替えて、
あらかじめ塗装してから組み立てること。
これにより現場で無理な姿勢で
塗装する必要がなくなり
手間とコストを削減できるほか、
下の記事にあるように組み立てると
見えなくなる部分まで塗装できるので、
将来木が収縮して隙間ができても
元の木の色が見えることなく
見映えがよくなります。
塗装する必要がなくなり
手間とコストを削減できるほか、
下の記事にあるように組み立てると
見えなくなる部分まで塗装できるので、
将来木が収縮して隙間ができても
元の木の色が見えることなく
見映えがよくなります。
組み立てると見えなくなる部分を先行塗装
やや専門的になりますが、
少し紹介してみると
①ほぞの勾配
ほぞというのは木材の接合部の突起の方。
完成したら見えなくなる部分ですが、
ただ突起に加工するのではなく
現場で納めやすいように
微妙な勾配をつけています。
一口に木造軸組工法といっても
部材の納め方は会社によって異なりますので
それぞれの納まりや
現場での作業を熟知していなければできない
難しいポイントのひとつです。
部材の納め方は会社によって異なりますので
それぞれの納まりや
現場での作業を熟知していなければできない
難しいポイントのひとつです。
②超仕上げを考慮した寸法合わせ
超仕上げとは木材の表面を
鉋(かんな)で薄~く削って、
特にツルツルに仕上げることを言います。
光沢感があってとても美しいので、
化粧で見せる部材に使われます。
が、ほんのわずかですが
超仕上げをすることで
部材の寸法が小さくなってしまいます
(ミリ以下の話ですが)。
そのわずかな差をあらかじめ考慮して
寸法を合わせておくことで
狂いを少なくする。
寸法を合わせておくことで
狂いを少なくする。
プレカットでは
そんな細かな配慮もされています。
もちろん、先ほどご紹介した
工場スタッフによる木の番付なども
家全体の見映えに関わる
とても難しいポイントのひとつですし、
ときには設計事務所から
特殊な形状の加工を依頼されて
苦戦するなどもあります。
いずれにせよ、木材だけでなく
建築をよく知らなくてはならないのが
プレカットの仕事だといえそうです。
年2回ほど開催される
「水と緑の勉強会」と、
2023年から始まった
「日帰り家づくり工場見学ツアー」です。
日帰り工場見学ツアーでは
1日で様々な工場を巡り
家づくりの流れを見ていただきます。
水と緑の勉強会では
一泊二日で工場だけでなく、
山で木が伐採されるところから
製材・加工を経て
家になるまでの一連の流れを
見ていただくことができます。
一泊二日で工場だけでなく、
山で木が伐採されるところから
製材・加工を経て
家になるまでの一連の流れを
見ていただくことができます。
最後にひとつ。
プレカットが普及するにつれて
大工の手刻みの技が失われていくという
懸念が広がっています。
大工の手刻みの技が失われていくという
懸念が広がっています。
中島工務店は大工の伝統技術の継承は
現代の建築に携わる者の責任だと考え、
プレカット技術の向上と同時に
手刻みができる若手大工の育成にも
力を入れています。