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ステアリング革巻きのはなし



前回私の記事で
レザークラフトのはなしを書かせていただきました。

続きのようになりますが、
今回もレザークラフトのはなしです。
 
飛騨高山には家具メーカーが沢山ありますが、
それぞれの工場隣接ショールームは
家具を見て楽しいだけでなく、
時々家具に使うレザーの切端を
売っていることがあるのはご存じでしょうか。

前回、植物タンニンなめしとクロム鞣しがあるという話をしましたが、
家具に使われるのは柔らかさを重視したクロム鞣しです。

しかし、そこは一流の家具メーカー。

クロムなめし革の表面がとてもきれいで
均一で十分厚みもあります。

クロムなめしは腰がないので、
柔らかいものであれば十分に造ることができますが、
小口を磨いたり、縫い糸を絞り過ぎると
ちぎれたり寄ったりするので、
手作りするには用途が限られます。

それでも、きれいで厚みのある革は
手に取るとついつい買いたくなってしまします。

切端とはいえ家具の大きな面積を取った後のものは
形こそ不規則なものの、長さや面積も十分にあって、
値段もとても安いです。

いくつか購入して、ストックしているのですが、
今回はボロボロになってしまった
ステアリングに巻きましたのでご報告します。
 
わたしの乗っている軽自動車のステアリングは
表面がはがれてしまって、
スポンジ状のクッション材が見えており、
手垢で汚れてしまい、無残な状況でした。

これにテープ状にした革の両端を縫い合わせて
作ったものをかぶせて内側を縫い合わせます。
 


実は市販品で自分で糸で縫い上げるものもあり、
アマゾンなどですと最低金額では2000円くらいで
本革のものが購入できるみたいなので、
自分で作ることは最安値とは言えません。

それでも自分の車のステアリングにぴったりの
サイズで作れるのは自作の良いところでもあります。
 
革は伸びる方向があります。
繊維の方向があり、繊維方向に伸ばしても伸びませんが、
繊維の方向と直角に伸ばすと伸びます。

繊維はずっと平行になっているわけでないので、
切出す方向をうまく選び伸びのある方向を
ステアリングの外接円に沿うようにして、
伸ばしながら取り付けることで
内側に縫い込む部分の余りを最小限にします。

ステアリングの外接円の
95%くらいの長さに設定して切出しました。
思ったより伸びたので、
もう少し小さくしておくとよかったと思います。

写真からはわかりませんが、
一番下の裏面はかなり革が余ってブヨブヨしています。

革の縫い合わせ場所はステアリングの
スポーク位置に合わせて何となく専用品風にしてあります。
間違えて縫い穴を余分に開けてしまいましたが・・・。
 
クロムなめしは縫い穴を糸で強く引くと
穴から裂けることもあるので、
今回は丸い穴をあける丸穴のポンチで
穴をあけて縫い穴を作りました。

手縫いだと通常菱目という穴あけで
ひし形の穴をあけるのですが、
穴の角の部分が裂けやすい気がします。

縫い始めたところでポリエステルの糸が切れてしまったので、
より強度のある糸を買い直し、蝋引きして使いました。
クロスステッチという縫い方で縫い上げてあります。

革の色はインサイドパネルとは合いませんが、
外から見たときの車体の色に合わせてあります。
 
反省点として、外接円と内接円の内径の差を
革を糸で縫いながら引っ張り寄せていく必要があるので、
縫っている最中の糸の引っ張る方向を
もう少し意識してできるだけ均一に寄せられるように
調整しながら縫うべきでした。

裏側のあまり革のブヨブヨは指にあたると不快です。
おおよそステアリング内径の
8倍の長さの糸を縫い上げるので、
縫うだけで3時間を要しました。
縫い直しは今のところ考えないようにしています。
 
まだまだ革は余っているので、
この次は何を作ろうかと考えつつ、
久しぶりに無心に縫い続けた作業の心地よい疲れと、
とりあえず汚れてざらざらした手触りのステアリングが
カバーされたことに満足して、
しばらくレザークラフトはやらないだろうなあと思う週末でした。


 
名古屋支店 香田雅紀