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家づくり

げげ本 おすすめポイントと感想

住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。

今回は
げげ本『後悔しない家づくりのすべて』を
取り上げます。

げげこと金谷尚大さんは
一級建築士で大人気YouTuber!
ご存知の方も多いと思います。

今日はそんなげげさんが
2021年8月に出版された
『後悔しない家づくりのすべて』を
遅ればせながら取り上げます。

こちらの本、
家づくりを考え始めたら
まず読んでほしい入門書として
おすすめ
します!

とはいえ、
ちょっと注意しておきたい点
などもありますので
おすすめする理由と
工務店から見た感想を
まとめてみました。

これから家づくりを始めよう!
という皆様はぜひ参考にしてください。




この記事でわかること
□ 『後悔しない家づくりのすべて』を
 おすすめする理由
□ げげ本の上手な使い方
□ 中島工務店的ちょっと気になった内容

 
目次


1.『後悔しない家づくりのすべて』は
  家づくり初心者に最高の教科書

2.実際の家づくりでは
  お客様自身の決断が重要

3.この本の上手な使い方

4.とても納得できるポイント

5.ちょっと「?」なところ
6.家づくりを始める前に読もう

 


文字通り「家づくりで後悔したくない」
すべての人に読んでほしい
最高の教科書
です。

特に初心者、入門者が
最初に読む本として超おすすめ!

暮らし、土地、予算、
デザイン、性能、間取りなど
家づくりの基本として
知っておきたいことが
網羅されています。



家づくりを始めると
デザインや性能など興味のある分野に
のめり込んでしまう人がいますが、
のめり込む前に一度は
全体を学んでおいた方が
バランスのいい家ができます。

その点、
この本は私たち専門家から見ても
「家を建てる人が
ひととおり知っておくと役立つ分野」を
しっかりカバー
していて、
さらに性能などでは
2021年の業界水準からみて
必要十分なレベルを推奨
しています。

しかも1つのテーマが1見開きに
わかりやすく収まっていて、
とにかくめちゃくちゃ読みやすい。

これから家づくりを始めるなら
まずはこの本を読んで、
そこから興味を持ったことを
さらに勉強していくのがおすすめ
です!

 

一方で、注意してほしいのは
この本はあくまで入門書としては
参考になるけれど、
実際の家づくりでは
お客様自身の考え方と決断が
必要になる
ということ。
 
帯に「ルールがわかれば、
センスやお金がなくても迷わない」
とありますが、
この本はまさに「ルール」
=業界や住宅建築のしくみ、考え方を
解説しています。

逆にいうと、
考え方は明示しているけれど
決め方は書いていません。

実際のお客様の暮らし・家づくりは
千差万別なので、
この考え方をもとに
どう決断するかは
読者に委ねられたのだと思います。

家づくりの専門家としては
とても適切な姿勢で、
著者の一方的な視点から
「こうでなくてはならない」と
断言するような本よりは
よほど信頼できます。

が、ほどんとの人は
「センスやお金がなくても迷わない」
とはならず、
めちゃくちゃ迷うはずです。

図面や見積書を前にして
決めなくてはいけなくなったときには
なにごとも教科書通りにはいきませんから。
 
それでもこの本には
知っておきたい情報を網羅しているという
優れた価値があるので、
この本を読んでいるのといないのとでは
判断の根拠も結果も違ってきます。

やはり入門書として
ぜひ読んでおきたい本だといえます。

 

この本は住宅会社を決定する前に
読んでほしい本です。

家づくりに重要な
性能・デザイン・メンテナンス性などは
住宅会社を決めた後では
どうしようもありませんから。

この本を読んだら、
次のように住宅会社を選びましょう。


①ホームページなどで考え方を確認

この本をしっかり読んで学んだら
住宅会社のホームページなどで
考え方が合っているか確認しましょう。

いまどきはげげさん同様の考え方をする
住宅会社・工務店も多いので
この時点では候補は
たくさんあるかもしれません。


②好みのデザインの住宅会社を絞り込む

考え方に納得できるなら
あとはもはや好みです。

InstagramやYoutubeなど
各社が展開しているメディアも参考に
好みに合う会社を絞り込みましょう。


③実物を見に行こう

実物、特に構造見学会や完成見学会に
行ってみましょう。
写真はいろいろ手を加えることができます。

実物を見ながら
その間取りになった理由を確認すると
その会社の設計提案力も把握できます。

繰り返しになりますが
この本はイマドキの家づくりで
後悔しないために大切なことを
網羅しています。

迷ったら本に書かれている
考え方に立ち戻りつつ、
納得できる住宅会社を選びましょう。


 

ここからは中島工務店的に見た
げげ本の納得ポイントと
ちょっと「?」な点をお話しします。

まずは「そうだよね、それすごく大事!」
という納得ポイントから。

全体的にとても納得できる本なのですが
その中でも特に大納得のポイントです。


■すべてを満たす家は存在しない

家づくりの決定過程は
「あきらめる」過程といっていいくらい
「完璧な家」は幻想です。
優先順位をはっきりさせましょう。


■100年住み続けられる家をつくる

家づくりは街並みづくり、
社会的資産の形成でもあります。
中島工務店は三世代住み継げる
構造の家をつくっています。


■家具の予算、外構の予算をとっておく

家という箱をつくるのではなく
暮らしをつくるには
家具も外構もとても大切。
私たちは概算資金計画のときから
これらの費用を見込みます。


■賢い初期投資で家の維持費を抑える

すごく大事な考え方です。
家は建てて終わりではありませんので
メンテナンスコストを考えた
材料選びは重要です。

中島工務店はメンテナンスコストの低い
瓦屋根、左官壁(そとん壁)、
これらに準じる材料として
ガルバリウム鋼板を推奨しています。


■温熱環境は
 健康で幸せな暮らしに欠かせない


激しく同意。
耐久性・耐震性などはもちろんですが
日々の暮らしに大きく影響するのが断熱性。

暖かい家は住み心地がよく、
家族の健康も守ります。

中島工務店はG1相当の断熱を
標準にしています。


■「今だけ」「金だけ」
 「自分だけ」をやめる


すべての人がこの観点で
家づくりをしたなら
社会はもっとずっとよくなります。

街並みづくりの一翼を担う立場として
中島工務店が大切にしたい
価値観のひとつです。


■外構を後回しにしない
 庭木が家を引き立てる


間違いありません。
しっかり外構予算をとって
庭木も植えましょう。

お手入れが楽な木を選べば
それほど苦労せず、
見た目も居心地もよくなります。

 

大筋でとても納得できるとはいえ、
ちょっと「?」なところや
追加でお話ししたくなるところもあります。

すべての人が同意できる考え方なんて
ありませんので、
そういうところもあって当然です。

げげさんも紙幅の関係で伝えきれていない
こともあるだろうと思いますし、
下記は当社の考え方なので、
さらに違う考え方ももちろんあります。

ひとつの意見としてご覧ください。
 

①無料相談所は賢く活用しよう

げげさんは無料相談所の
メリット・デメリットを
しっかり挙げた上で
賢く活用しようといっています。

中島工務店は明確に
無料相談所がおすすめしない

言い切ります。

当社にも無料相談所に登録しませんか?
といった打診はよくいただきます。

が、お話しを聞くと
とても利用できるような
しくみではありません。

げげさんも指摘する「紹介料」が高すぎて
もし利用したら
お客様の家づくりの費用に上乗せするか、
当社の利益を削るしかありません。

無料相談所の運営側は
「お客様価格に上乗せはしないでください」
と言います。

でも、それを経費にしたら
当社の利益率だと
ものすごく厳しいことに・・・
というか、
実際にはあり得ない
数字になってしまいます。

もともとの利益率がすごく高くないと
利用できないだろうというのが実感です。

げげさんが言うように
「アドバイザーがプロじゃない」ことが
圧倒的に多く、
当社のような難しい要望への
対応力を売りにしている場合は
アドバイザーにはまったく理解できない
話になってしまいます。

無料相談所のしくみは
住宅会社・お客様双方に
ほぼメリットがないため
まったく推奨できません。


②関わってはいけない住宅会社
 見積もりがおおざっぱ


げげさんが関わってはいけない
住宅会社の条件のひとつとして挙げている
「見積がおおざっぱ」。

どの段階のことを
言っているのかわかりませんが、
中島工務店は
住宅会社を選ぶ段階では
おおざっぱな見積もりでもやむを得ない

と考えます。

住宅会社を選ぶ段階では
多くの会社が「概算見積もり」でしょう。

特に注文住宅会社では
詳細まで打ち合わせをするのは
自社に決めてもらったあとのはずなので。

当社でもプラン提案の段階では
面積に基づく概算見積もりを提出します。

その後、設計契約を結んだら
半年~8ヶ月かけて詳しく打合せして
最終的に部材ひとつひとつを拾い上げた
詳細見積もりを提出します。

注文住宅では同様の流れの会社が多いため
住宅会社を選ぶ段階では
おおざっぱな見積もりになるのは
やむを得ません。

もちろん最後まで「一式」や「坪単価」で
見積もるのは論外です。

住宅会社選びの段階で
それを確認したいなら
最終見積もりを
どの段階で出してもらえるか聞き、
可能なら見積書のサンプルを
見せてもらう
とよいでしょう。


③フォロワーや登録者が多いなら
優良な会社の可能性が高い


げげさんはSNSやYoutubeの
フォロワーや登録者が多いなら
優良な住宅会社の可能性が高い
といいます。

これは間違いではありませんが
「優良」というのは
ちょっと語弊があるかなと思います。

中島工務店は、
フォロワーが多い会社は人気があるが
優良かどうかは慎重に判断した方がいい

と考えます。
 
SNS等での人気は
おもに写真の見ためや
動画の語り口のうまさによるものです。

中には見ためはいいけれど
施工技術は高くない会社もありますが、
それらはSNS上では
ほぼみきわめられません。

また、人気がある会社が
自分に合うかどうかも別問題
です。

SNSやYoutubeを参考にするのは
とてもいいと思いますが、
「人気があるからいい会社」
ではない点に留意しましょう。


④特定の断熱材を推してくるケースは要注意

げげさんは
断熱は断熱材だけではなく
内装仕上げ材、除湿気密シート・・・
といったものの組み合わせで
綜合的に決まるため、
断熱材ばかり推してくる会社は
あまり優良ではないとしています。

中島工務店は根拠を持って
特定の断熱材を推しているなら
問題ない
と考えます。

断熱性能は実質的には
ほぼ断熱材(熱伝導率 × 厚み+施工精度)
で決まります。

仕上げ材なども無関係ではありませんが
影響は小さく、
断熱材以外で挙げるなら
窓の数や大きさ、サッシの影響は
大きいです。

とはいえ、
それらは断熱性能の数値(UA値など)を
出す際にはすべて計算に含まれます。

なので、明確に断熱性能を謳った上で
特定の断熱材を推しているなら
なんの問題もありません。

標準仕様として
一定の性能を出すために
特定の断熱材を採用しているケースは多く
その住宅会社にとって
やり慣れたやり方でもあるので
予定通りの性能が発揮される可能性も
高くなります。
(やり慣れている=施工精度が高い)
 
ただし、断熱性能の数値や考え方を語らずに
断熱材だけを推しているケースは
慎重に判断しましょう。


⑤おしゃれな照明の落とし穴
 ペンダントライト


ほんの後半の間取りに関する記述は
げげさんの真骨頂という感じですね。

このあたりは設計者の考え方や
得意不得意にもよるもので
読者が共感・納得できるかどうかで
判断すればいいと思います。

ただ1点だけ、
ペンダントライトの可能性について
言及しておきます。

げげさんは
おしゃれな照明の落とし穴のひとつとして
ペンダントライトは位置を変えられない
と言っています。

が、中島工務店的には
ペンダントライトこそ位置が変えられる
自由度が高いもの
です。
 
下の写真を見てください。

ダイニングテーブルの上に
ペンダントライトが2つありますが、
吊るしている黒いコードが
2段階になっているのがわかりますよね。

左側に照明用コンセントがあり、
そこから右にコードをひっぱって留め、
その位置から照明を下ろしています。


当社ではよくやる方法で
ペンダントライトの位置も高さも
調節できます。

特にダイニングテーブルなど
将来的に大きさや位置が
変わるかもしれないものの上には
この方法はとても有効です。

こうすればペンダントライトは
むしろ自由度が高いので
ぜひ採用していただきたいと思います。


⑥インテリアにはセンスは不要

冒頭にご紹介した動画でも
同じテーマで語っていますが
これについては明言します。

インテリアにセンスは必要です!

本の中でげげさんはセンスがなくても
おしゃれな部屋をつくれる
「3つのルール」を述べてくれています。

そのルールは確かにその通りで
ルールを知らないよりは
ずっとまとまりが生まれると思います。

ですがそれだけで
おしゃれな部屋はできません!

完成内覧会などでたくさんの家を
設えてきましたが
おしゃれな部屋をつくるのは
とてもとても難しいです・・・

経験論で恐縮ですが
やはりインテリアにセンスは必要です
(と断言できます)。



いろいろ語ってきましたが
総じてこの本はとても参考になります。

家づくりを始めるならまずは
『後悔しない家づくりのすべて』を読んで、
家づくりで押さえておきたい
全体像を把握しましょう。

そのうえで
特に興味を持ったことがあれば
深く勉強し、
納得できる家づくりに役立ててください。

 
以下は関連記事です。
この本に通じる
中島工務店の家づくりの考え方を
ぜひご覧ください。
 

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