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現場

基礎のアレコレまとめ

 

住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回のテーマは「基礎」です。
 
建物を一番下で支える基礎が
構造上重要なのはなんとなく
イメージできるのではないかと思います。

耐震性や耐久性への関心が高まるにつれ、
基礎の工法や構造をアピールしている
住宅会社も増えています。

でも会社によって
いろんな工法があるから
(というか実はそんなに違わないのに
どの会社もオリジナルの名前とかつけて
アピールしてくるから)

いくつもの会社のホームページや資料を
見ているうちに何がいいのか
わからなくなってきませんか?

というわけで、
今日は基礎について
知っておきたいことをまとめてご紹介。

まずは建築基準法上の基礎の規定を確認。

さらによく比較される
ベタ基礎と布基礎の違いを確認した上で、
木造住宅でベタ基礎が多く選ばれる理由、
布基礎はコストダウンになるのか
といった点について
プロの視点から検討してみます。

それから最近増えていて
当社でも採用している基礎一体打ち工法、
基礎の解説でよく見かける防湿シート、
基礎パッキン、
人通口について解説します。

 


2階建て以下の木造住宅の
基礎の構造については、
2000年の建築基準法改正時に
具体的な規定がつくられました
(建設省告示第1347号)。

簡単にまとめた表を
国民生活センターの資料よりまとめると

N/㎡という見慣れない単位が使われていて
わかりにくいですね・・・。

要するに基礎は地盤の強度に応じて
設計しなければならず、
地盤が弱いと杭基礎のみOK、
強くなるにつれてベタ基礎や布基礎でもOKに
なっていくということです。

同時にベタ基礎・布基礎の場合は
鉄筋コンクリート造でなくてはならず、
基礎各部のサイズや位置、
鉄筋の寸法・本数・位置・間隔も
規定があります。

※杭基礎
基礎の下に杭を深く打ち込んで支えるもの。
木造住宅ではあまり使われないので
詳細は割愛します。


ちなみに、この規定を根拠に
「ベタ基礎の方が布基礎より優れている」
とするケースがありますが、
正しいとは言えません。

ベタ基礎と布基礎では
構造がまったく異なっているため
荷重の受け止め方・処理のしかたも
まったく違い、
強度に関していえば優劣はありません。

地盤の強度に対して
適切な構造で設計されていれば
どちらでもOKです。

鉄骨系ハウスメーカーでは
布基礎が採用されているケースも多く、
それは建物の構造上数カ所の耐力壁に
力が集中する鉄骨プレハブ造には
断面係数が大きい=基礎立ち上がりが高い
布基礎の方が適しているからです。

※断面係数
部材の断面性能を表す値。
曲げる力に対する強さを表す。
同じ面積なら縦長の方が強くなる。
一般的に布基礎の方がベタ基礎より
立ち上がりが高くなるため断面係数も高くなる。



 


では、なぜ木造住宅会社はこぞって
ベタ基礎を採用するように
なってきたのでしょうか。

詳しい構造はともかく、
ベタ基礎と布基礎の違いを端的にいうと
床下部分に鉄筋があるかどうかです。
 
下図は基礎の断面図ですが、
ベタ基礎は床下部分全体に
鉄筋が張り巡らされています。
 


あわせてベタ基礎・布基礎比較記事で
よく見られるそれぞれの特徴を
まとめておきましょう。

<ベタ基礎の特徴>
●地面からの湿気が上がりにくい。
●地中からのシロアリの浸入を防ぐ。
●布基礎に比べて
コンクリートや鉄筋の使用量が多いため
割高(コレあとで検討します)。

<布基礎の特徴>
●地面からの湿気が上がりやすい。
●シロアリや害虫の浸入を防ぎにくい。
●ベタ基礎に比べて
コンクリートや鉄筋の使用量が少ないため
コストを抑えられる
(←コレあとで検討します)。

要するに床下全体を
鉄筋コンクリートで覆っているかどうかが
そのまま違いになっていて、
概してベタ基礎の方がいいと
されることが多いわけです。

実際、分厚いコンクリートで
床下を覆うため、
木造住宅の大敵・シロアリと湿気対策には
ベタ基礎の方が適しています。
 
この理由から中島工務店でも
ベタ基礎を採用しています。


 

 


ここでベタ基礎vs布基礎比較記事で
よく見られる
「布基礎の方がコストを抑えられる」
という件について検討してみます。
 
結論から言うと、
一般的な工事であれば布基礎にしても
大幅なコストダウンにはならない

考えています。

根拠は施工の手間です。

例えば埋め戻しといわれる作業。

ベタ基礎は底面全体に
鉄筋コンクリートを打つため
基礎の全体の大きさ分だけ地面を掘り、
その上に基礎をつくっていくので
埋め戻すのは外周部だけです。

一方の布基礎は
立ち上がり部分の下だけ筋状に堀るので、
そのまわりをすべて
埋め戻さなくてはいけません。

単純に埋め戻しの手間が違う!
ってわかりますよね。


防湿シートを張るにしても、
ベタ基礎では配筋前に地盤全体に
いっきに張ってしまうのに対して、
布基礎では立ち上がりとフーチング
(立ち上がりの下の部分)の
コンクリート打設後に
区分けされた部分ごとに
施工していかなくてはいけません。

上の図(右側の布基礎の図)の
白い部分にひとつひとつシートを
張っていくということです。

こちらもずいぶん手間が増えたことが
わかりますよね。

なお、このようにシートを分けて張ると
その分隙間もできやすくなり、
それが布基礎の方が防湿性に劣る
一因でもあります。

ほかにもベタ基礎の方が
鋼製束(大引きを支える部材)が
設置しやすいなど、
プロから見た施工性は
ベタ基礎の方が優れています。

一方で、布基礎の場合は
掘り起こした土の大部分を
埋め戻すのに対して
ベタ基礎はほとんどの土を
処分しなくてはいけませんから、
土の処分費はベタ基礎の方がかかるのが
一般的です。

これらを考え合わせると、
布基礎の方が鉄筋やコンクリートが少ない分
コストが抑えられると
いわれることがありますが、
手間にかかるコスト等を鑑みると
布基礎の方がコストを抑えられるとは
限らない
といえそうです
(具体的には諸条件によって異なります)。

基礎の選択や費用に疑問がある場合は、
住宅会社になぜその基礎を選ぶのか、
何にいくら費用がかかっているのか
説明してもらいましょう。


 

 


次に、最近増えている
基礎一体打ち工法を取り上げましょう。

中島工務店も
ベタ基礎一体打ち工法を採用しています。

基礎一体打ち工法とはその名の通り、
通常、ベース(底面)部分と
立ち上がり部分の2回に分けて
コンクリートを打設するところを
1回で打設し、
コンクリートを一体に仕上げるものです。

2回打ちの場合は
ベース部分のコンクリートが乾いてから
立ち上がり部分を打つため、
どうしても「打ち継ぎ」と呼ばれる
つなぎ目ができてしまいますが、
一体打ちだと打ち継ぎができないのが
ポイントです。
画像は株式会社NSP様サイトより拝借


打ち継ぎがない分、強度が増し、
外部から水が浸入しづらく耐久性が増す

というメリットがあります。

当社は株式会社NSP様の
ベタ基礎一体打ち工法を採用していますが、
同社による強度比較試験でも2回打ちより
優れているという結果が出ています
(詳細はこちらのp59をご覧ください)。

また、ベース部分のコンクリートが
乾くのを待たなくていい分、
2~3日ほど工期も短縮できます
(1階の面積が20坪くらいの場合)。
 
画像は株式会社NSP様サイトより拝借
ただし、一体打ちには制限があり
すべての建物で
できるわけではありません。

一体打ちではまず外周部分、
次にベース部分という順番で
コンクリートを打っていきますが、
外周部分をすべて打設し終わった時点で
最初に打設したところが固まっていたら
たいへんです。

つまり、外周部が乾かないうちに
ベース部分の打設に進めることが
一体打ち工法適用の条件ということ。

具体的にはコンクリートの打設量や
ポンプ車が配車できるかどうかなどで
判断します。

また、1日でコンクリートを
ならす(表面を整える)ところまで
やってしまわなくてはいけないので、
そうした点も考慮して
一体打ちでやるかやらないかを
判断しています。
 


なお、一体打ちでなくても
設計通りに施工すれば
構造上必要な強度は備わっていますので
ご安心ください。

工期が短縮される分
コストダウンになると
思われることもありますが、
2回打ちに比べて
必要な金物などが増えるので
コスト的なメリットは
特にないといえるでしょう。


 

 


続いて基礎につきものの
アレコレを見ていきましょう。

まずは先ほどから登場している防湿シート。

地面からの湿気を防ぐシートで、
砕石を転圧した地盤の上に張ります。
 


防湿シートを張っていても
コンクリートから湿気が出るんじゃ・・・
と思われますよね。

コンクリートからは
1年くらいは湿気が出ますが、
そのせいですぐに不具合が起こる
といったことはありません。

徐々に乾いていくので
気にしなくて大丈夫です。


 

 


続いて基礎パッキンをご紹介します。
 
基礎と土台のあいだに使用する部材で、
床下の換気の役割があります。
 



古い家で基礎に換気口が設けられているのを
見たことがある方もいるでしょう。

基礎パッキンを採用すれば
基礎に穴をあけて
換気口をつくらなくてよくなるので
施工の手間が減りますし、
家全体をぐるっと一周しているので
換気口よりまんべんなく
換気できるようになります。


 


人通口は基礎の立ち上がり部分につくる、
人が通れる開口部です。

床下点検をしやすくするのが目的です。

下の画像の立ち上がり部分が
途切れているところが人通口で、
これを辿っていけば
床下を自由に移動できるのが
わかりますよね。
 


こんなふうに基礎を切り取って
強度は大丈夫!?と
思われるかもしれませんが、
土台の継手(つなぎ目)の位置にしない等、
十分検討して配置していますし、
人通口まわりは鉄筋を補強しています。

また、中島工務店では
浴室の下の人通口には
断熱タイプのフタ(基礎点検口)を採用。

というのも、当社は床断熱ですが
浴室だけは基礎断熱にしているからです。

建物の断熱性能を
きちんと確保するためには、
断熱材が途切れることなく
施工されていなくてはいけません。

それはつまり、
ユニットバスまわりにも
しっかりと断熱が必要だということ。

ユニットバス部分には床がなく
基礎の上に直接載っている設備なので
(といっても床下空間があり
配管があります)、
この部分だけは基礎の位置で
断熱しなくてはいけません。

そこで人通口も断熱タイプに
しなくてはならないというわけです。
 



住宅は基礎ひとつとっても
いろいろ細かい点を
考えないといけないことが
おわかりいただけたのでは
ないでしょうか。
 
これらがしっかりできているかどうかでも
建物の耐久性や住んでからの快適さが
変わってきます。

各社のパンフレット等
会社資料を比較したり、
建築現場を見るときには
こうした観点からも
検討してみるとよいでしょう。