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台風に強い家とは


 
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回のテーマは
「台風に強い家」です。
 
2018年には台風21号を中心に、
いくつかの台風が日本各地に
大きな被害をもたらしました。

東海地区では
特に21号・22号の被害が大きく、
当社メンテナンス課も
対応に追われました。

今回は、台風や豪雨、
爆弾低気圧、竜巻など
雨風による住宅被害に対して
家を建てるときに
どのように備えることができるのか、
実際に台風が通過した後には
何をすればいいのか、
被害に遭ったらどうすればいいのかを
中島工務店メンテナンススタッフに
聞いてみました。



この記事でわかること
□ 建築基準法の耐風基準
□ 台風被害の実態
□ メンテナンススタッフが考える
 「台風に強い家」
□ 台風が過ぎた後のチェックポイント

 
目次


1.台風に強い家とは①
  建築基準法は倒壊しない基準

2.台風被害の実態
3.台風に強い家とは②
  メンテナンススタッフが考えるポイント

4.台風が過ぎ去ったらここをチェック

5.台風被害に遭ったらまず写真
6.まとめ


 

 


建物の基準といえば建築基準法で、
風に対する基準も
もちろん書かれています。

その内容を具体的に把握しようとすると
建築基準法施行令87条を
読み解かなきゃいけないんですが、
とても専門的で難しいので、
代わりに住宅性能表示の基準を
見てみましょう。

というのも、
住宅性能表示の耐風等級1と
建築基準法の基準が同等
なんです。

耐風等級1(建築基準法を満たしたもの)
極めて稀に発生する(500年に1度程度)
暴風による力の1.6倍に対して
倒壊、崩壊等せず、
稀に(50年に1度程度)発生する
暴風による力に対して損傷を生じない程度。
(国土交通省「新築住宅の住宅性能表示ガイド」
より抜粋・一部編集)

500年に1度の暴風というのは、
伊勢湾台風の名古屋気象台の記録を
指すそうです。

「伊勢湾台風」級は
台風の特別警報発令の
指標にもなっており(気象庁資料)、
そう頻繁に起こるものではありません。
 
つまり、
フツーに建築基準法を満たす
建物を建てておけば
台風で家そのものが倒壊することはない

といえます。

なお、耐風等級2は
このさらに1.2倍の力に対して
倒壊・崩壊しないという基準なので、
さらに安心できそうです。
 
地域の気候の特性や立地条件によって
台風対策も変わってきますので、
家づくりに際して
特に暴風対策が気になる場合は
早めに設計士に相談しましょう。

※住宅性能表示制度
住宅の品質確保の促進等に関する
法律(品確法)に基づく制度。
良質な住宅を安心して取得できるように
性能に関する表示にルールを設け、
第三者機関が評価する。

※伊勢湾台風
1959年、紀伊半島から東海地方を中心に
死者・行方不明者5,098人、負傷者38,921人、
住宅の全壊36,135棟、半壊113,052棟など
甚大な被害を及ぼした。



 


上記の通り、フツーに建築すれば
構造的な心配はあまりなさそうですが。

実際の台風で件数が多い被害は
雨漏りやモノの飛散
です。
 
住んでいる立場からすれば
「構造的に倒壊しなければいい」
というものじゃないですもんね。

そこで、今回は
メンテナンススタッフが考える
「台風被害を受けにくい家」を
聞いてみたわけですが、
その根拠は
メンテナンススタッフの知識と経験、
すなわち実際に対応してきた事例です。

この項では
よくある事例と原因をご紹介し、
それを踏まえて、
次の項でメンテナンススタッフが考える
「台風被害を受けにくい家」の
ポイントをご紹介します。

2018年台風21号

今回取り上げるのは
2018年台風21号の事例です。

台風21号は2018年9月4日に徳島県に
中心気圧950hPa・最大風速45m/sの
非常に強い勢力で上陸、
その後、兵庫県神戸市に再上陸し、
日本沿岸を北上しました。

全国のおもな被害は次の通り
(消防庁資料)。
死者14人、負傷者1,011人
住宅の全壊59棟、半壊627棟、
一部損壊85,715棟。

住宅は「一部損壊」が
最も多い被害となっていますが、
このおもな内容が雨漏りやモノの飛散です。


中島工務店の事例~雨漏り

中島工務店のお客様宅の事例で
多いもののひとつが雨漏りです。

おもにサッシまわり、
FRP防水の水切りの取り合い、
入隅などで起こりました。
わかりにくいですね・・・。

要するに、
防水処理が難しいところです。

もちろん防水処理はしているんですが、
強い風が吹くことで
普段水が入らないところに
入ってしまうのが原因
で、
壁などをつたって
雨漏りが起こるというしくみです。

なので、台風のときに雨漏りしたけれど、
過ぎてしまえば雨が降っても
なにも起こらないなんてこともあります。

 
中島工務店の事例~飛散

飛散が多いのは、
カーポートの屋根、板金屋根の棟、
カラーベスト、割れた瓦などです。

瓦屋根はきちんとビス留めされていれば
それ自体が飛ぶことはありませんが、
暴風でモノが飛んできて
瓦が割れて飛ぶことがあります。

原因は暴風、それに尽きます。

被害事例 屋根の棟が破損



モノが飛散すると
自分の家が壊れるだけでなく、
近隣の人の家などにぶつかって
ガラスを割るなどの被害を
もたらすこともあります。

我が家にモノが飛んできた!
という被害もあり得ます。

避けられないことも多いですが、
少なくとも屋外に植木鉢など
飛びそうなものがあるときには
屋内に移動したり、
飛ばないように縛るなどしておきましょう。


 

 


雨漏りとモノの飛散の原因はとにかく風。
 
暴風が普段は水が入らないところに
水を運んでいき、
外部のモノを吹き飛ばす!
というわけです。

逆にいうと、
それを防ぐことが
台風被害を抑えるポイントになります。

では、具体的に見ていきましょう。

なお、ここでご紹介するのは
あくまで中島工務店の
メンテナンススタッフが
知識と経験に基づいて考える
「台風の被害を受けにくい家」です。

どのような家でも
被害を受けることはあり得るし、
これまでの事例に基づいて
対策を講じていても想定外の規模や
頻度の災害が起こった場合には
対処できません。

その点をあらかじめご了承いただいた上で
家づくりの参考にしてください。
 
ポイント①
シンプルな形状の建物にする

雨漏りの箇所に入隅がありましたが、
部材と部材の取り合いが
複雑な箇所が増えるほど
雨漏りしやすいところを
たくさんつくってしまうことになります。

外観デザインは重要ですが、
複雑になりすぎると
そんなリスクもあることを
頭の片隅に置いておいてください。

ポイント②
庇は長い方が雨に強い
(ただし風に弱い・・・)

庇が長いと、
サッシまわりに普段と違う角度から
雨が当たるのを抑えられます。

ただし風で飛んでしまう可能性も
高くなるので、
設計士と相談しながら
適切な長さを検討しましょう。

ポイント③
瓦は1枚ずつビス留めする

これまでの事例では、
ビス留めしておけば
瓦が飛ぶことはまずありません。

1枚1枚ビス留めするのを
標準工法にしている住宅会社を選ぶと
安心です。

ポイント④
防水処理を確認する

雨漏りを防ぐ基本は防水処理です。

住宅会社を選ぶ際に、
どのような防水処理をしているか
説明してもらいましょう。

防水シート(ルーフィング)を
きちんと施工しているか、
台風時に雨が入りやすい貫通部
(配管・配線が通っているところ)の
防水処理に専用部材を用いているか
などがチェックポイントです。

被害事例 カラーベストがめくれた




 


どれほど備えていても
台風の被害を完全に防ぐことはできません。

台風が過ぎ去ったら、
まずは我が家の状態を確認しましょう。

 
台風の後の住まいのチェック方法

①家の周りを歩いて、
落ちているものやなくなっているもの、
ぶつかったものがないかチェック。

②少し離れたところから
屋根など見えにくいところをチェック。

屋根は見えないので
被害に気づくのが遅れることも
よくあります。

台風の最中に大きな音や
なにかがぶつかるような音がしたときには
要注意。

少し離れたところや
近隣のマンション・ビルの上から
見てみるのがおすすめです。

見られない場合は「大きな音がした」
「なにかがぶつかる音がした」ことを
建てた会社のメンテナンス担当に
相談するとよいでしょう。




 


台風被害は火災保険で
補償されるケースがあります
(契約内容によりますので、
詳しくはご加入の火災保険証券を
ご確認ください)。

被害が確認できたら、
建てた会社のメンテナンス担当に
連絡すると共に、
火災保険の手続きにも備えましょう。

火災保険の手続きは
一般的に次のような手順です。

火災保険の手続きの流れ

①電話等で保険会社に報告
②写真と見積書を添えて申請書を提出
③保険会社が見積もり内容を精査し
 支払額決定
④保険会社に請求書を提出
(完了写真が必要な場合あり)
⑤保険金の受取

まずやるのは写真を撮ること!

被害状況がわかる全景写真と、
細部がわかる近くで撮った写真の
両方を用意しましょう。

見積書は建築業者が用意します。

ご連絡をいただいたら
現地で原因を確認、
修繕方法の提案と見積書の作成へと
進んでいきます。

ただし、大きな台風が通過した後は
あちこちで被害が生じているので
いつもより対応に
時間がかかる場合があります。
 
また、どのタイミングで
修繕工事に着工できるかは
保険会社や被害の程度によります。


 

 


「台風被害を受けにくい家」について
お話してきましたが、
台風被害を絶対に避けられる家というのは
ありません。
 
ただ立地によって、
例えば周辺に建物が少ない
(雨風を受けやすい)など
被害を受けやすいことが
あらかじめ想定できるケースはあります。

そういったケースでは、
家づくりの際に設計士に
「台風被害が気になる」ことを
相談しておくとよいでしょう。

また、日頃からできることとしては
①住宅会社のメンテナンス部門の
連絡先を把握しておく
(携帯電話に登録しておくと安心!)
②火災保険証券を確認しておく
といったことがあります。

保険証券の写真を
スマホに保存しておけば、
被害状況の写真撮影から
住宅会社・保険会社への連絡まで
スマホ1台でできるのでおすすめ。
 
台風被害は誰にでも起こり得ます。

夏が近づいたら今一度、
連絡先や保険の内容を
確認しておきましょう。