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設計

新築時の照明の種類と選び方


 
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回のテーマは「照明」です。
 
照明選びは家づくりの中でも
楽しいプロセスのひとつです。

照明は色やデザイン、配置で
空間全体のイメージが変わりますから
「こだわりたい」という方が
たくさんいらっしゃいます。
 
一方で、実際に住み始めてから
「思ったより暗い」
「ここに照明がほしかった」とか、
逆に「この照明全然使わない」などと
後悔するケースもあります。

ほとんどの場合、
光の当たり方や広がり方、
動線との関係等が
予想と違っていたのが原因です。

新築は出来上がってみないと
わからないものですが、
特にあらかじめ考えるのが
難しいもののひとつが
照明だといえるでしょう。

そこで今回は
おもな照明の種類と選ぶときの注意点、
照明計画の考え方をお話しします。

今回取り上げるのは
シーリングライト・ペンダントライト・
ダウンライト・ブラケット・間接照明。

照明は設計時に位置を決め、
上棟後まもなくだいたいの位置まで
配線しなくてはいけません。


 

シーリングライトは
天井に直接取り付ける照明です。

天井にペタっとくっついている
こういうやつです
 

スポットライトタイプもあります。


特に上の画像のような
円盤型シーリングライトは
天井にぴったりくっつくので
スッキリとして見え、
天井に影ができないため
部屋全体を明るく照らせるという
特徴があります。

一方、スポットライトタイプは
光が当たる部分が限られること、
天井が暗くなることに注意が必要です。

のちほど詳しくお話ししますが、
最近は「多灯分散(たとうぶんさん)」
といって複数の照明を組み合わせて
生活シーンに合わせて
光をコントロールする
考え方が
主流になってきました。

多灯分散型の照明計画において
シーリングライトは
メイン照明の役割を果たします。


 

 


ペンダントライトは
天井から吊り下げた照明のこと。

ダイニングテーブルの照明などで
よく見られますね。
 

キッチンカウンターなどにも用いられます。

特徴は、目線の高さにあるため
インテリアのアクセントになる、
照らす範囲が限られるので
メイン照明にはならない、
といったところ。

上のダイニングテーブルの画像のように
傘をかぶっていると
傘の下の範囲しか照らしませんし、
下のカウンターの画像のような照明では
ひとつひとつは明るさが限られているため
ほかの照明と組み合わせて
明るさを確保することになります
(詳しくはのちほど)。

中島工務店では
MAYUHANA(まゆはな)シリーズの
大きなペンダントライトを
リビングなどでよく採用しています。
 

吹き抜けなどの大空間には
デザイン性が高いペンダントライトを
配置するととても印象的。

ただし、これひとつでは
明るさが不足する場合があるので、
ほかの照明とうまく組み合わせて
メインとなる照明の美しさを
引き出すのがポイントです。


 

 


ダウンライトは
天井埋め込み型の照明で
小型のものを指します。

メイン照明の補助として使ったり、
複数のダウンライトを組み合わせて
使ったりするほか、
飾り棚などピンポイントの照明としても
使われます。
 



天井埋め込みだし小さいので、
照明そのものを目立たせたくないときに
おすすめです。
 
天井面はスッキリしますが、
下しか照らせないため
天井は暗くなるので注意しましょう。

なお、のちほど詳しくお話ししますが、
ダウンライトは構造にも影響するため
つけたいなら早めに相談しましょう。


 

 


ここまでに紹介した照明が
すべて天井に設置するものだったのに対し
ブラケットライトは壁付の照明です。

壁の反射を利用するので、
照明のデザインによって
陰影を楽しめます。

周囲全体を照らす、
最もシンプルなタイプ。
 
このタイプは正面に立つと
光が直接目に入るので
配置に注意しましょう。
 


光の方向が限定されたタイプ。

どこを照らし、
どんな陰をつくるのか
センスのみせどころです。
 



おもに補助照明として使われますが、
ロフトなど天井が低いときにも
ブラケットは重宝されます。

吹き抜けの階段など天井が高いところでも、
ブラケットを選ぶことがあります。


 

 


間接照明は、光源が直接目に入らず、
壁や天井を照らした
反射光を利用する照明です。

空間をほんのり明るくするので、
寝室の雰囲気づくりやトイレなど
小さな空間の照明に適しています。
 



天井や壁の反射光で明るさを確保するので
光を当てる天井・壁を
白っぽい明るい色にするのがポイント。

以前は間接照明は
電球の交換がたいへんでしたが、
LEDが普及した現在は
あまり心配する必要はないでしょう。


 

 


これから家を建てるなら
多灯分散型がオススメ。
多灯分散型のメリットはおもに2つ。

①複数の照明を生活シーンによって
使い分けることで光環境を楽しめる
②不要な照明を使わないことで省エネになる
です。
 
最近は色を変えられる照明も多いので、
宿題や作業をするときは白っぽい照明で
周囲をまんべんなく明るくする、
くつろぐときはオレンジっぽい照明を
少なめにつける・間接照明にするなど
使い分けると居心地よく、
しかも省エネになるということです。

多灯分散型では、
いろいろな種類の照明を
どのように組み合わせるかがポイント。

実際、ここまでに紹介した画像でも
ひとつの空間に
複数の照明が配置されていますよね。



なお、多灯分散型でも
基本的には天井照明をメイン、
壁付け(ブラケット)はサブと
考えましょう。

また、サブ照明をつけたり
スタンドを持ってくるのが
面倒になることもあるので、
基本的な明るさはメイン照明で
確保しておいた方が安心です。

メイン照明を決めた上で、
その部屋で何をするか考えて
必要な場所にピンポイントで
サブ照明を追加していくと
使いやすいはずです。

全体の統一感とバランス、
使い勝手を考えながら
照明を配置するのは簡単ではありません。

どんなイメージにしたいかを
早めに設計士に伝えて、
提案してもらいましょう。


 

 


リビングや寝室は雰囲気重視の
照明計画がよいかもしれませんが、
キッチン・洗面・トイレなどでは
雰囲気より実用性を優先しましょう。

キッチンやトイレでは
作業しやすい明るさのほか、
手元に影ができないような配置も重要です。
 


キッチンの失敗あるあるは、
吊戸棚を開けると照明に当たるというもの。

吊戸棚をつけるなら、
扉を開いたときの照明との位置関係を
今一度確認しましょう。

洗面台やドレッサーを置く場所の照明は、
明るく白っぽい光が基本です。

薄暗いところやオレンジの光の下で
メイクしたり髪をセットするのは
難しいですよね。

照明で実用性を重視する分、
洗面台を造作にするなど
空間全体でおしゃれな印象を目指すと
よいでしょう。


 

 


よく言われることですが、
スイッチの位置は
動線を考えて決めましょう。

基本は、
その部屋から出るとき最後に通る場所
=その部屋に戻るとき最初に通る場所
にあると使いやすくなります。
 
特に夜暗いときをイメージして、
どこで照明がつけられるとよいか
図面の中を歩いて考えてみましょう。

玄関や廊下、
ウォークインクローゼットなどでは
人感センサーを検討することも
あると思います。

多くの製品で人感センサーの設定時間は
3分くらいが上限です。

玄関やトイレなど
3分以上の使用が考えられる場所では
使いにくい場合があるので
注意しましょう。
 


注意というほどではありませんが、
飾り棚のスイッチはメイン照明と
連動させるのがおすすめです。
 
というのも、
飾り棚単体でスイッチを用意していると
結局使わなくなってしまったという話を
よく聞くから。

メイン照明と連動しておけば、
いつまでも設計したときの意図通りに
素敵な空間が続くはずです。


 

 


冒頭でも言いましたが、
照明は設計時に位置を決め、
建て方後まもなくだいたいの位置まで
配線されてしまいます。
 
つまり、比較的早い段階で
どこにどんな照明をつけるか
決めなくてはいけません。

特に、中島工務店のように
構造材が見える家では
ピンポイントで決める必要があります。

というのも、梁に照明を取り付ける場合、
梁の上部に配線のための溝があり、
その溝はプレカット(構造材の加工)時点で
つくらなくてはいけないから。

天井を張る家なら
建て方後にも多少の変更はできますが、
構造材を見せる家では
ピンポイントで決めなくてはいけません。
 


ダウンライトの場合は、
さらに早めに
決定しなくてはいけないことも。

なぜなら、ダウンライトは
天井埋め込み=天井より上に
照明本体があるため
断熱材や気密シートの施工に
関わることがあるから。

ダウンライトを埋め込むためには、
薄いものでも10センチくらいは
天井裏にスペースを
確保しなくてはいけません。
 
それが外部に接する場所
(上に部屋がない天井)だと
断熱材や気密シートの施工方法が
変わってくるんです。

さらに勾配天井だと、
勾配天井対応のダウンライトに
しなくてはいけません。

ダウンライトは特に
後から増やせないタイプの照明です。

ピンポイントでどこにいくつつけるのか、
しっかり検討しましょう。


 

 


最後に、
照明のコストの抑え方を考えてみましょう。

といっても、中島工務店の場合で
延床面積35坪の家の照明費用は
30~50万円なので、
ン十万円も抑える
というわけにはいきません。

その点はご理解いただいた上で、
となりますが。

やるとしたら、
メイン照明にのみこだわって
ほかの照明はシンプルにまとめること。

多灯分散型の照明計画では
照明器具をたくさん配置します。

ダウンライトやシンプルなブラケットなど
器具の費用が控えめなものを
サブ照明に多用すれば、
全体的な費用削減につながります。
 
照明は空間のイメージを左右するので
安ければいい
というものではありませんよね。
大事なのはメリハリです。

やはり早いうちに
予算と叶えたいイメージを
設計士にしっかり伝えるのが大切です。