プロが教える家づくりのヒント HINT

家づくり

太陽光発電・家庭用蓄電池・EV充電ポストを
後から設置する準備


 
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回のテーマは
「ZEH仕様の装備の後付け」です。
 
ZEH(ゼッチ)という言葉、
最近よく聞くようになりましたね。

ネット・ゼロ・エネルギーハウス
(Net Zero Energy House)の略称で、
経済産業省・環境省・国土交通省が
協同で推進しているこれからの住宅です。

経済産業省によると
ZEHとは「快適な室内環境」と
「年間で消費する住宅のエネルギー量が
正味で概ねゼロ以下」を
同時に実現する住宅
だそうです。
 
高断熱で、
LEDなど省エネ性能に優れた
設備機器を取り入れ、
さらに太陽光発電など
創エネ設備を備えた家。

単に高性能なだけでなく
住む人の快適さを
重視しているところもポイントで、
「省エネのために
エアコンを使うのを我慢しよう」
というような生活ではなく、
快適な暮らしと
省エネを両立しようというものです。

国土交通省は2015年にとりまとめた
「ZEHロードマップ」の中で、
2020年までに新築戸建住宅の過半数を
ZEHにする
という目標を掲げています。

ZEHが当たり前の時代が
もう目の前に来ています。
ZEHのイメージ
(同じく資源エネルギー庁サイトより)

ZEH推進のために、
経済産業省・環境省・国土交通省が
連携して補助事業を行っていますが、
2018年には補助対象として
従来のZEH、Nearly ZEHに加えて
ZEH+(ぷらす)、Nearly ZEH+、
ZEH Oriented
という3つが
ZEHシリーズに加わりました。

う~ん・・・
いっぱいあって、
ちゃんと整理しないと
違いがよくわかりません。

今日はまず、ZEHシリーズの違いを
カンタンにまとめるところから
始めたいと思います。

そして、太陽光発電など
ZEH関連設備を後付けする場合の
準備もご紹介します。

というのも、ZEHにするには
それなりにお金がかかります!

上の図を見てもらうとわかるように、
ZEHにするためには太陽光発電やHEMS、
蓄電システムなどいろいろな設備を
搭載しなくてはいけませんから当然です。

なので、新築のときに
断熱性能や消費エネルギーは
ZEH基準をクリアするものにしておいて
太陽光発電だけ後から(お金ができてから)
載せるといった選択をする場合もあります。

予算の問題に限らず、
高性能な住宅が当たり前になりつつある今、
将来的にこうした設備を
取り付けられるように備えておく
というのはアリですよね。

そういうわけで、
後半では太陽光発電・家庭用蓄電池・
EV充電ポストといった
ZEHで求められる各種設備を
後付けするために
新築のときに準備しておきたいことを
お話しします。

なお、今回取り上げるのは
すべて戸建住宅の場合です。

 


早速、ZEHシリーズそれぞれの基準を
確認していきたいところですが。

専門的な用語がたくさん出てくるので、
最初にそのへんを確認しておきましょう。


UA値(外皮平均熱還流率)
断熱性能を測るための計算方法。
建物から逃げ出す熱の量を計算・表示。
数字が小さいほど断熱性能が高い。
 
一次エネルギー消費量
家庭で消費するエネルギーの量を
一次エネルギーに変換して表示したもの。
石油・天然ガス・太陽光など
自然から直接得られるエネルギーを
一次エネルギー、
家庭で使う電気・ガスなどを
二次エネルギーといいますが、
それぞれ単位が異なる電気やガス
(電気ならkWh、ガスなら㎥)を
同じ単位(J / ジュール)に統一して
わかりやすくするために
一次エネルギーに変換します。

一次エネルギー消費量の削減率
あらかじめ定められた基準
一次エネルギー消費量に対して、
その住宅がどれだけエネルギー消費量を
削減しているかを計算したもの。

実際の消費エネルギー量は
家族構成や生活スタイルなど
様々なことに左右されるため、
設計時に理論上算出される値で考える。


ごめんなさい、難しいですよね。

でももうひとつ、
地域区分も知っておいてください。

地域区分は省エネ基準で定められたもので、
気候などによって全国を市町村単位で
8つの地域に分けています。

断熱地域区分
暑いところと寒いところで
求められる断熱性能が違うというのは
納得ですよね。

愛知県は一部を除いて6地域、
岐阜県は5~3地域まで分かれています。

ここまで踏まえたところで、
ZEHシリーズの違いを見ていきましょう!


 
●UA値の基準を満たしている
1~3地域は0.40W/㎡・K、
4~7地域は0.60W/㎡・K
(これをUA値のZEH基準といいます)
●太陽光発電搭載前で、
一次エネルギー消費量の削減率が20%以上
●太陽光発電搭載後、
一次エネルギー消費量の削減率が100%以上

Nearly ZEH
寒冷地や低日射地域、多雪地域限定。
太陽光発電を搭載しても
一次エネルギー消費量の削減率を
100%にするほどの発電が
見込めない地域を対象に、
75%以上削減すれば
補助金の対象にする
としたものです。
 
●UA値のZEH基準を満たしている
●太陽光発電搭載前で、
一次エネルギー消費量の削減率が20%以上
●太陽光発電搭載後、
一次エネルギー消費量の削減率が
75%以上100%未満
ZEH+
ZEHより高い省エネ性能を備えた住宅。
●UA値のZEH基準を満たしている
●太陽光発電搭載前で、
一次エネルギー消費量の削減率が25%以上
(ZEHより削減率5%アップ!)
●太陽光発電搭載後、
一次エネルギー消費量の削減率が100%以上
●自家消費を意識した
太陽光発電の促進を図る措置として、
次の①~③のうち2つ以上を満たしている
①さらなる強化外皮基準
(UA値:1~2地域 0.30W/㎡・K、
3~5地域 0.40W/㎡・K、
6~7地域 0.50W/㎡・K)
②高度エネルギーマネジメント
HEMS設置。
HEMS・冷暖房設備・給湯設備・
燃料電池システム・蓄電システムを
設置する場合、
ECHONET Lite AIF認証を
取得したものであること。
③電気自動車を活用した
自家消費の拡大措置
電気自動車(EV)・
プラグインハイブリッド車(PHEV)の
充電設備、
EV・PHEVと住宅間で充放電する設備

※HEMS(Home Energy Management System)
家庭で使うエネルギーを
節約するための管理システム。
エネルギー消費量や太陽光発電の発電量などを
モニターで見える化したり、
使用量を自動制御する。


Nearly ZEH+
ZEH+のNearlyバージョン。
寒冷地や低日射地域、多雪地域限定。
ZEH+の条件を満たして
太陽光発電を搭載しても
一次エネルギー消費量の削減率を
100%にするほどの発電が
見込めない地域を対象に、
75%以上削減すれば
補助金の対象にするとしたものです。

太陽光発電搭載後の
一次エネルギー消費量の削減率のほかは
ZEH+と同じ条件です。
 
●UA値のZEH基準を満たしている
●太陽光発電搭載前で、
一次エネルギー消費量の削減率が25%以上
●太陽光発電搭載後、
一次エネルギー消費量の削減率が
75%以上100%未満
●自家消費を意識した
太陽光発電の促進を図る措置として、
次の①~③のうち2つ以上を満たしている
①さらなる強化外皮基準
②高度エネルギーマネジメント
③電気自動車を活用した自家消費の拡大措置


ZEH Oriented
都市部の狭小地に建てられる住宅が対象
(平屋を除く)。

ZEHの要件は満たしているけれど、
屋根面積が小さすぎて太陽光発電を
有効に搭載できない建物について
創エネを免除して
補助金の対象とする
ものです。

狭小地の定義は
北側斜線制限の対象となる用途地域で
敷地面積が85㎡未満の土地。

●UA値の基準を満たしている
●太陽光発電搭載前で、
一次エネルギー消費量の削減率が20%以上
太陽光発電は搭載しなくてよい


ZEHに関する情報は
資源エネルギー庁のサイト
よくまとまっています。

補助金情報などもありますので
参照してください。



ZEH関連設備を後付けするために

 


こうやって見てみると、
国がZEHの普及に
とても力を入れていることがわかります。

寒冷地や都市部狭小地など
ZEHの普及が進みにくい地域に
次々と補助金適用要件を設定して、
なんとかして省エネ性能が高く、
災害時に必要最低限の電力を
自ら供給できる住宅を
増やしていこうとしています。

これから新築するなら、
住み心地や省エネ性、
光熱費の節約などを考えても、
できればZEHにしておきたいところです。
 
が、太陽光発電など
各種設備を備えるには
それなりの費用がかかってしまう・・・
ということで後半のお話。

断熱性能など後から手を加えるのが難しい
構造部分は新築時に
ZEHレベルでつくっておいて、
太陽光発電などは後から載せよう!
という選択肢です。

太陽光発電・家庭用蓄電池・EV充電ポストを
後付けするために備えておきたいことを
まとめましょう。


太陽光発電を後載せするための準備

できるだけ南向きの
大きな屋根をつくっておくことに尽きます。

これから新築する家で強度的に
太陽光発電を載せてはいけないような
建物はまずありえませんから、
その点はあまり心配する必要はないでしょう。

向き、勾配(キツすぎると載せにくい)、
広さに配慮しましょう。

なお、分電盤も太陽光発電対応のものにし、
回路に空きを残しておきましょう
(蓄電池、充電ポストも同じです)。
 
屋根が大きいと
太陽光発電をたくさん載せられます



家庭用蓄電池を後付けするための準備
 
あらかじめ必要な
配線・配管をしておくといいでしょう。

蓄電池を設置するときには
対応した分電盤や
メーターコントローラーも必要になります。

あらかじめ配線しておかないと
その部分の配線が
むき出しになってしまいます。


EV充電ポストを後付けするための準備

こちらもあらかじめ配管しておくことと
電圧は200V、主幹ブレーカー容量は30Aまで
想定しておきましょう。

あらかじめ配線用の配管がされていないと、
分電盤から外部の設置場所まで
結構な距離を壁や天井、床下などを通す
配線工事をしなくてはいけなくなります。

もちろん費用もかかります。

それに対して、
新築時の配管工事なら
数万円もかかりません。

なお、これらはいずれも
数年先を想定したお話。

10年以上先となると
様々な規格が変わってしまう可能性があり、
今の時点で準備しておいても
意味がなくなってしまう恐れがあります。

家づくりはとても楽しい時間ですが、
限られた予算をどのように使うか
悩んでしまうこともたくさんあります。

ZEHがこれからの住宅の
ひとつのカタチになっていくのは
間違いありませんが、
かといってそのために
ほかの希望が犠牲になってしまっては
本末転倒です。

これから新築を考えるなら、
暮らしの希望に加えて、
ZEHやIoT住宅など
次世代住宅の可能性も考慮しながら
優先順位を考えていきたいところです。

※IoT住宅については
下記の記事をご覧ください。
IoT住宅ってなに?