プロが教える家づくりのヒント HINT

設計

住宅模型のつくり方と役立て方


 
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回は「住宅模型のつくり方と使い方」を
ご紹介します。

住宅会社にもよりますが、
注文住宅の場合、
設計中に模型をつくることがあります。
 
平面で書かれた図面から
実際の建物のイメージをつかむのって
なかなか難しいですよね。

そこで模型の登場です。

小さいとはいえ立体でお見せすると、
お客様には「よくわかる!」と
喜んでいただけます。

最近は模型の代わりに
3DCGで見せる住宅会社も多いようですが、
目的は同じ。

一生に一度の家づくりで、
できるだけお客様の希望を
叶えたいからです。

完成してから
「言いたかったことはこうじゃない」
となってしまったら、
お客様はもちろん、私たちつくり手も
とても悲しい思いをすることになりますから
つくる前にできる限り
イメージを共有する
ための
努力のひとつなんです。

今日はそんな模型づくりに密着。

家づくりの仕事の一端をご覧ください。

また、出来上がった模型を
どんなふうに役立てればいいかも
ご紹介します!

★今回は実際に建築中の
お住まいの模型づくりを
お施主様のご了承のもと
レポートさせていただきます。
快くご協力いただいたお施主様に
心よりお礼申し上げます。


目次


1.住宅模型のつくり方
2.いろんな角度から見てみよう
3.設計に役立てよう


 


 


図面から必要な情報をプリントする
 
今回は、実際の建物の
100分の1サイズの
カラー模型をつくります。

設計図面から
必要なデータを抜き出して、
外壁や屋根、軒天など
外装部分に色を付けて
プリンタで印刷します。

こちらのお住まいの外壁は
ガルバリウム鋼板で
ブラックパールという色が
採用されていますが、
模型では敢えてやや薄い色を選択。

ガルバリウム鋼板の特徴である
縦のラインをわかりやすく
表現するためです。


図面をスチレンボードに貼る
 
模型はスチレンボードでできています。

ので、先ほどプリントした図面を
スプレーのりで
スチレンボードに貼っていきます。


写真を見てもらうとわかりますが、
この作業だけは屋外でやります
(長久手Studioスタッフ用玄関の前です)。
 
実はスプレーのりってめちゃくちゃ強力で、
万が一、室内で床やデスクに
付いてしまったら
わりと大変なことになるんです・・・。


パーツを切り抜く
 
デスクに戻って、
パーツを丁寧に切り抜きます。

ここでまっすぐ、キレイに切れていないと
組み立てたときにちゃんと納まらず、
隙間ができたりくっつかなかったりします。



一緒に写っている定規やさしがねと比べると
だいたいの大きさがわかりますね。
 
こちらのお住まいは約32坪の平屋なので、
100分の1の模型としては
「大きいなぁ」という印象です。


家の中から組み立てる

実際に家を建てるときは、
柱や梁などの骨組みをつくってから、
屋根・壁をつくり、
それから内装へと進んでいきますが、
模型の場合は反対で
家の中から組み立てます。

模型用のスチのり
(スチレンボード用ののり)で、
1階の床部分に壁をくっつけていきます。


室内に壁が少ないと思いませんか?
 
中島工務店の家の特徴のひとつ、
必要のない廊下を設けず
空間を一体とする
“空間のつながり”
が感じられます。

建物の真ん中に立っている棒は大黒柱。

最近は大黒柱のない住宅も
増えてきているようですが、
当社では大黒柱として
6寸・8寸を使用することが多いので、
模型にも大黒柱が立っています。

別につくったロフト部分を載せると
こんな感じ。

主要な設備をつくる

お客様に家のイメージを
つかんでもらいやすくするために、
大きな設備をつくって取り付けます。

今回つくるのは階段とキッチン。

まずはロフトへ上がる階段ですが
下の画像の左の方にある
ちっちゃな白い直方体が階段になります。

ピンセットでひとつずつ丁寧に・・・。

階段、できました!
ちょっとかわいすぎるのは、
ロフトへ上がる階段だからです
(2階へ上がる階段だと
いろんな規制があって、
もう少しごつくなります)。

こちらのお住まいのこだわりのひとつ、
吹き抜けのキャットウォークも
取り付け完了。

下の写真の手前の方、
宙に浮いているかのような
細い廊下状のところが
キャットウォークです。

ちっちゃなキッチンも取り付けます。

キッチン前のカウンターも付きました。
 
リビング・ダイニングと
キッチンのつながりがよくわかります。

キッチンの入口側(写真では右側)に
壁がありますが、
この壁があるのとないので
空間の雰囲気は
まったく違ってきますから、
こうやって模型で見ることによって
壁をつくった方がいいか
つくらない方がいいか
検討しやすいのではないでしょうか。


外壁を取り付ける

出来上がった室内部分に
外壁を取り付けていきます。


リビングの外にウッドデッキも付きました。

 
屋根を載せて、建物本体完成
 
別につくっておいた屋根を載せると・・・

建物本体完成です!

敷地の上に建物を置く

 
敷地全体と建物の関係も重要ですから、
建物と同じようにスチレンボードに
配置図を貼って敷地をつくります。

その敷地に建物を置けば模型の完成です!

 


南東側からみるとこんな感じ。

北側から。
 
外壁のアクセントカラーの赤は
できるだけ実際の色に近づけました。

赤い部分をどのくらいの面積にすると
きれいなのか、
これを見ながら考えます。

西側から見てみます。
 
うん、シンプルで素敵。

黒い外壁と屋根に軒先のラインが
1本スッと通っていてきれいですね。

室内について検討したいときには、
屋根をはずして見られます。

今回使用したスチレンボードは
厚さ1mmと2mmの2種類です。
 
100分の1ということは、
実寸だと10cmと20cmですね。

模型では壁も床も柱も
この2種類でつくりましたが、
もちろん実際の建物の部材は
それぞれ違うサイズです。

模型づくりのプロセスでは
いろいろなサイズの部材を
2種類のスチレンボードで組み立てるために
敢えて図面どおりではなく
サイズや造りを微調整しています。

例えばロフト部分には
本当は天井がありますが、
この模型で天井を張ってしまうと
ロフトがどんな感じなのか
わからなくなってしまうので
省略しています。

大切なのはお客様に
建物のイメージをつかんでもらうことなので
模型は必ずお客様にとって
わかりやすい状態
に整えてあり、
実際の建物とまったく同じ
というわけではありません。

でも、だからこそ
お客様にとっては役に立つんですよね。

住宅会社から模型をもらったら、
じっくり眺めてまだ見ぬ我が家の
イメージを膨らませてください。

 

 


こんなふうに、
まだ存在しない我が家を
いろんな角度から見て
検討することができるのが
模型のいいところです。
 
最後に、模型を設計に役立てる方法を
ご紹介しましょう。


①空間のつながりやデザインを検討する。

ここまでにもお話ししてきたとおり、
空間のつながりや動線、
ボリューム感、デザインなどを
考えましょう。

立体になったことで
1階と2階のつながりなども
わかりやすくなったはずです。


②高さや見え方を検討する。

平面から立体になったことで
一番わかりやすくなったのが高さです。

天井の高さ、窓の位置や高さ・大きさ、
設備(今回ならキッチン)の高さなどが
全体のバランスの中で見えてきました。
 
模型を持ち上げて
実際の身長くらいの位置からのぞきこむと
住んだときの室内の見え方の
参考にもなります。