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現場

「工事監理者」の役割と
具体的な仕事内容


 
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回のテーマは「工事監理」です。
 
『工事監理(こうじかんり)』
という言葉。

聞き慣れない方も多いと思いますが、
建築工事をするときには
必ず工事監理者を置かなくてはいけない

建築基準法で決められています。

建築主は(中略)建築士である
工事監理者を定めなければならない。
(建築基準法 第5条の6 第4項)

つまり建築士の資格を持った
工事監理者を置かなくてはいけない
ということで、
建築確認申請の際に
工事監理者を明記した書類を
添付しなければいけませんし、
建築物の用途や規模によって
必要な建築士の資格も
定められています(建築士法)。

なんだかとても重要なものっぽいですよね。

でも、設計士や現場監督と違って、
工事監理者ってどんな役割があるのか
あまり知られていません。

今回は工事監理者の役割を
法律にもとづいて確認し、
中島工務店の工程を例に
具体的な仕事内容をご紹介します。



目次


1.工事監理者の役割
2.設計者が工事監理者を兼ねる
  メリット・デメリット

3.工事監理の具体的な仕事

4.住宅会社を決めるときには
  工事監理の体制も確認してみよう



 

 


建築士法では工事監理を
次のように定義しています。

「工事監理」とは、
その者の責任において、
工事を設計図書と照合し、
それが設計図書のとおりに
実施されているかいないかを
確認することをいう。
(建築士法 第2条第8項)
 
要するに設計通りに施工しているかを
確認するのが工事監理者のお仕事

というわけです。

「え?設計通りに施工するって
当たり前じゃないの!?」
って思いました?

ハイ、その通りです。

その当たり前をきちんと確認することで
設計通りの仕様・性能の建物であることを
担保しようというしくみなんです。
 
ちゃんと確認する人がいなければ、
現場で納めやすいように変更する
なんてこともやろうと思えば
できちゃいますから
(普通はやりませんよ!)。

あるいは
「それって現場監督の仕事だと思ってた」
という方もいらっしゃるでしょう。

現場監督の仕事はざっくり言うと
工程管理・品質管理・予算管理・安全管理で
施工側の立場から現場を
滞りなく進める役割を担っています。

その施工を確認するのが
工事監理者なのですから、
まったく異なる役割だといえます。

また、
工事中に設計変更が必要になったとき
変更してもよいかどうか判断するのは
設計者ではなく工事監理者
です。
 
現場監督が工事監理者に相談
→工事監理者は設計者と相談の上、
変更してもよいか判断する
→工事監理者が了承すれば変更OK、
という流れになります。

工事監理者が重要な役割を
担っていることがよくわかりますね。





 


設計・施工を一貫して請け負う
住宅会社や工務店の場合、
その家を設計した建築士(=設計者)が
工事監理者も兼務することがよくあります。
当社でも基本的にはそうしています。

設計者と工事監理者が同じ場合のメリットは
設計の過程と内容を熟知しているので
変更の判断がしやすい
ところです。
 
その変更がほかに
どこに影響するかなどを
判断する上で
設計内容を詳しく知っていた方が
より迅速に決定できますから。
 
箇所によっては
「お施主様の強い希望だから変更できない」
といったこともありますが、
この点もそれまでの打ち合わせを
自分で担当していると
経緯がすべてわかるので素早く判断でき、
適切な代替策も考えやすくなります。

一方で、設計者と工事監理者が同じでは
客観的に見れないのではないか、
施工者と工事監理者が
同じ会社に所属しているのでは
適正な監理が行われないのではないか
という意見もあります。

確かにこの指摘にも一理ありますので
当社では「工事監理日誌」を作成し、
お施主様に納得してもらえるよう
検査箇所の写真を添えて提出しています。


 

 


工事監理の業務は、
建築士法と国土交通省告示第15号に基づいて
以下のように定められています。


工事監理者の法廷業務(建築士法)
①工事と設計図書との照合及び確認
②工事と設計図書との照合及び確認の
 結果報告等
③工事監理報告書の提出


「法廷業務」を行う上で欠かせない
3業務(告示第15号)
④工事監理方針の説明等
⑤設計図書の内容の把握等
⑥設計図書に照らした施工図等の
 検討及び報告


最も重要な仕事は
設計通りに施工されているかどうかを
確認して報告することで、
そのために必要な業務も
付随して行うということですね。

具体的なチェック項目は
国土交通省の「工事監理ガイドライン」
参考にするのがよいとされています
(あくまで参考例という位置づけです)。

このガイドラインにもある通り、
確認方法は工事監理者自身による
目視や立ち会いのほか、
現場監督など工事監理者以外の人から
検査記録を提出してもらって
その内容を確認する
という方法でもかまいません。

それでは、中島工務店を例に、
具体的にどのようにして
工事監理を行っているのか
見てみましょう。

当社では工事中に原則として
全15回の社内検査がありますが、
そのうち5回で
工事監理者による検査を行っています。

工事監理者による検査のタイミングと
おもな内容は以下の通りです。


1.配置確認
着工前に敷地に
建物のカタチに地縄を張って
お施主様立会いのもと
工事監理者が確認します。
・隣地との距離
・設計上の地盤面(GL)の高さ
など


2. 配筋検査
基礎配筋が完了後
コンクリート打設前に、
JIO(日本住宅保証検査機構)による
検査結果を工事監理者が確認します。
・基礎の形状、寸法、配置
・鉄筋の規格、種類
・鉄筋、アンカーボルトの材質
・アンカーボルトの位置、本数
・鉄筋の連結部分の重なりの長さ
など

配筋検査の検査項目の一部。
このような検査写真を添えて
報告書を提出します。


3.躯体検査
上棟後、JIOによる検査結果を
工事監理者が確認します。
・土台、床組、柱などの位置、接合状態
・耐力壁や筋交いの位置、向き、金物の状態
・耐力面材の釘の種類、ピッチ
など

なお防蟻処理については、
施工時の写真付き報告書で
処理済であることを確認します。

中島工務店では
安全性と効果の持続性を考慮して
ホウ酸塩を主原料とする防蟻剤
エコボロンを使用していますが、
エコボロンは無色・無臭で
現場で見ても確認できないからです。
 
躯体検査の検査項目の一部


4.断熱検査
各部位の断熱材施工完了時に
施工課長または現場監督が検査し、
検査結果を工事監理者が確認します。
・断熱材の規格、種類、形状、寸法
・下地材の状態
・固定方法、すきまの有無
・結露対策
など


5.完成検査
完成後お施主様による確認前に
住宅部部長が検査を行い、
検査結果を工事監理者が確認します。
・内外装の仕上がりの状態
・給水・給湯設備、排水設備の状態
・照明、エアコンなど設備類の位置
・照明、エアコンなど設備類の動作確認
など

社内完成検査とは別に
確認検査機関による検査もありますが、
工事監理者はこの検査にも立ち会います。

これらの検査の結果を報告するのも
工事監理者の義務です。

当社では検査後、
お施主様に工事監理日誌を提出しています。

工事監理日誌には
検査状況報告書も添付しており、
検査状況報告書には検査した箇所の
施工状態がわかる写真を掲載し、
お客様の目にもどのような状態なのかが
よくわかるようになっています。

また、万が一是正事項があった場合は
是正後に現場監督から工事監理者に
是正状況の報告があり
(もちろん写真付き)、
工事監理者はお施主様に
是正が完了した旨を伝えます。

竣工後、
お施主様に「工事監理報告書」を提出したら
工事監理のお仕事は完了です。


 

 


建築工事が適切に行われているかどうかは
お施主様にはわからないことも多く、
不安なこともあると思います。

それをプロとして確認・報告するのが
工事監理者の役割です。

家づくりにおいて
工事監理が重要な理由が
おわかりいただけたのではないでしょうか。

途中にも述べた通り、
工事監理者は必ずしも自分で
現場を確認する必要はありません。

当社でも一部の検査は施工課長などが行い、
工事監理者はその報告書を確認しています。

住宅会社によって
工事監理のやり方は様々で、
中には工事監理者が
一度も現場に行かないという
ケースもあるようです
(現場に行かなくてもほかの方法で
施工状況を確認していれば
問題はありません)。

どんなやり方でもかまいませんが、
お施主様にとっては
大切な我が家の施工状況を
責任を持って確認してもらう
重要な役割です。

住宅会社を決めるときには
工事監理の体制も確認しておくと
安心して工事を任せられる
でしょう。