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設計

24時間換気システムを選ぶポイント


 
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回のテーマは
「24時間換気システム」です。
 
2003年の建築基準法改正で
24時間換気設備の設置が
義務付けられました。

空気の質を気にする人が増えた最近では
家づくりに際して確認しておきたい
ポイントのひとつにもなっています。
 
今日は住宅の換気システムの
基本知識を確認した上で、
よりよい環境で暮らすために検討したい
第1種熱交換型換気システムについて
お話しします。

新築のときに気をつけたいこと、
既存住宅に24時間換気システムを
設置する方法も参考にしてください。

 


2003年建築基準法改正で
24時間換気システムの設置が
義務付けられました
(建築基準法第28条の2第3項、
詳細は建築基準法施行令第20条の8)。

住宅の場合、
1時間で室内の空気の半分を
入れ替えることができる
機械換気設備を設置
しなくてはいけません。

もともと建材に含まれる
ホルムアルデヒドなど
人体に悪影響を及ぼす化学物質を
屋外に排出するためにつくられた法律なので
内装材の使用制限なども
内容に含まれています
国土交通省資料)。

現在ではシックハウス症候群の
原因となるような建材を使うことは
ほとんどありませんが、
では24時間換気システムは
不要なのかというと、
実はより必要になっています。

なぜなら高気密住宅が増えているから。

昔の家はすきま風だらけだったので
換気システムなんてなくても
自然と空気が入れ替わっていましたが、
現代の高気密住宅は計画的に換気しないと
室内の空気が入れ替わりにくいんです。

すると家の中に
二酸化炭素が溜まりやすくなったり、
湿気がこもって結露の原因になったり。

室内に二酸化炭素が増えると
眠気が襲ってきますし、
もっとひどくなると
頭痛やめまいを起こすこともあります。
 
結露でカビが発生したら
シックハウス症候群同様に
健康に害を及ぼしますから、
やはり24時間換気システムは必要です。
 
実際の家づくりでは、
設計段階で換気システムの種類と
換気経路を計画し、
換気計算をして規定に達していることを
確認します。

このあと第1種~第3種の違いを
説明しますが、
建物の構造やお施主様の考え方、
それに予算なども考慮して
決めていきます。

 

それぞれの違いは
給気または排気を機械で行うかどうかです。
 

第1種換気
 
給気も排気も機械で強制的にするしくみで、
空気の出入りを機械でコントロールするため
換気量を適切に調整しやすい方法です。
 
後半でご紹介する
「熱交換型換気システム」は
第1種でないとできません

熱交換型なら常時換気をしても
室内の温度を維持できるという
メリットもあります。

デメリットは設備費用が高くなることですが
熱交換型なら初期費用は高くても
住み始めてからの冷暖房費を抑えられます。
このあたりは後半で詳しくご説明します。


第2種換気

機械で給気して自然排気するしくみですが、
住宅ではほとんど使われません
室内を正圧(気圧が高い)状態にするため
外気の影響を受けやすく、
外気温によって空調効率が落ちたり、
湿気を取り入れてしまって
結露の原因になることがあるからです。
 
おもに手術室やクリーンルームなど
外部の汚れた空気が
入らないようにしたい場所で使われます。


第3種換気
 
自然に吸気し機械で排気するしくみで、
最もたくさん採用されていると
いっていいでしょう。

中島工務店で第3種を採用する場合は
各居室に給気口を設置し、
トイレなどに換気扇(パイプファン)を設け
そこから排出しています。
 
多くの住宅会社でも同様に、
各居室に給気口+ファンをまわしても
気にならない場所に
排気設備を設置しているはずです。
 
こんなやつ、お部屋にありませんか?
画像は三菱電機様サイトより拝借
第3種のメリットは、
第1種に比べて簡単な設備なので
設置費を抑えられること。

一方、デメリットは
換気の際に室内の気温を
維持できないことです。

このタイプでは
パイプファンという扇風機のような
羽根が回っているだけなので、
熱交換型のように室内の熱を
回収・再利用できません。

夏や冬にはせっかく
エアコンで冷やしたり温めたりした
空気を逃がしてしまい、
空調効率が下がってしまいます。

また、一部では
「排気ファンの音が気になる」
と感じる人もいて、
「寒い」「うるさい」といった理由で
電源を切ってしまうケースもあります。

そうするともはや
24時間換気できていません・・・。

住む地域や人によりますが、
室温と音を気にせず
常時動かしておけるなら
第3種はコストを抑えて
計画換気できるよい選択肢
だといえます。

 

 


さて、音はともかく、換気しつつ
室温を維持する方法はあります。

第1種熱交換型換気システムです。

熱交換とは排気のときに
室内の暖かさや涼しさを回収して
再利用するしくみ
です。

「熱を回収???」ってなりますよね。

排出する空気に含まれる熱だけを
素子という部材で回収して、
給気に移動させて室内に戻す
というものです。

詳しくは
第1種熱交換型換気システム
ロスナイ公式ページの説明をご覧ください
(ロスナイは弊社が第1種を
採用する場合の標準機種です)。

長久手Studioにも
ロスナイが設置されていますが、
特に真夏や真冬にはありがたさを感じます!

画像は三菱電機様サイトより拝借
熱交換型換気システムには、
熱交換のしくみとして
「全熱式」と「顕熱式」があり、
設備には「ダクト式」と
「ダクトレス式」があります。

全熱式は温度と湿度を両方交換するもの、
顕熱式は温度だけを交換するもの。

ダクト式とダクトレス式は
文字通りダクトを使用するかどうかの
違いです。

それぞれにメリット・デメリットがあり、
どちらがよいかには様々な意見がありますが
それについては別の機会に検討します
(専門的で長くなるから!!!)。

このあと
新築住宅・既存住宅それぞれに
換気システムを設置する場合の
注意点を見ていきますが、
今回は、第1種熱交換型としては
ロスナイ(全熱式・ダクトレス)を
取り上げます。

※ロスナイにもダクト式がありますが、
今回はダクトレスを取り上げます。

 


まずは気になる
ロスナイ(ダクトレス)と
第3種のお値段の違いから。

当たり前ですが、
ロスナイの方が機器そのものの
お値段が高くなります。

ロスナイ1台あたりのお値段は、
パイプファン(トイレ設置用)の
3~6倍といったところ。

機種によるので
ちょっと幅がありますね・・・。

ちなみに第1種熱交換型の中では
ロスナイは最も安価な機種のひとつです。

第1種でも第3種でも、
ダクト式でない限り
各居室に機器が必要です。

ロスナイなら各居室に1つずつ、
第3種ならパイプファン2台程度
+各居室に自然給気口。

つまり
「1台あたりの金額の差×お部屋の数」
となるので、
家1軒分だと結構な違いになります。

ちなみに、ダクト式だと
一式で50万円~となりなかなか高額です。

 


第3種を設置するときには
排気口のシャッターの有無にも
気を付けましょう。

第3種にはシャッター付のものと
そうでないものがあり、
シャッターがないものは台風のときに
強風が排気口を逆流して
入ってくることがあるので
注意が必要です
(長久手Studioで実際に起こったことがあり、
排気口のホコリが
トイレ内に飛散しました・・・)。

第3種ならシャッター付排気口を選ぶのが
おすすめです。

また、強風が予測されるときには
忘れずにシャッターを閉じましょう
(長久手Studioはシャッター付いてるのに
閉じてなかったんです・・・)。

給気口は通常閉じられますので、
忘れずに閉じましょう。

 

 


第3種の自然給気口からは
意外と風を感じます。
「寒い」と閉じてしまう人が
いるくらいですから。

自然給気口は人がよくいる位置、
特に顔や体で風を感じやすい場所を
避けて設置するのがおすすめです。
 
自然給気口は、その部屋の中で
排気口に遠い方に付ける必要があります。

排気口はトイレなどにある場合が多いので
通常は各居室のドア
(=排気口があるトイレにつながる経路)
の対角の壁などに給気口を設置します。

こうすることで
給気口から入った空気が
しっかり室内を横切って
排気口へと流れていくわけです。

逆にいうと、
このために室内でのおよその位置は
決まってしまいます。

そこが人がよくいる位置だったときには
身長より高いところに設置するなど、
体で感じにくいような工夫をした方が
いいでしょう。

 

 


2003年の24時間換気システムの
義務化前に建った家や
第3種を設置している家にも
ロスナイ(ダクトレス)を
設置することができます。

まずは住宅会社に
必要な換気容量を
計算してもらいましょう。

換気容量によって
設置する機器が決まります。

実際に設置するために必要なのは、
電源と給排気のための穴をあけること。

とはいえ、完成した住宅では
どこにでも穴をあけていいわけでは
ありません。

気密などに配慮しつつ、
設置位置を決定します。

設置したい場所の近くに
電源がない場合は
どこかから配線してこなくてはいけません。

住宅会社に相談すれば、
そうした点を含めて計画してくれます。

ロスナイを設置すれば
窓が開けられないときにも
しっかり換気ができ、
空調効率も上がって
快適な室温を維持できるようになります。

が、それなりの費用がかかるので
全室にとはいかない場合もありますよね。

そんなときには、
例えばLDKなどよく使う部屋にだけ
設置する方法もあります。

ただし、設置した部屋だけ
室温を維持しやすくなるので、
ほかの部屋と温度差ができてしまうのは
避けられません。
 
また、気密性が低い住宅では
そもそもすきま風が
たくさん出入りしているので、
ロスナイをつけても
効果は限定されますのでご注意ください。

 

 


数年~10数年前に建った住宅で
第3種を採用している場合は、
パイプファンを取り替えるのもおすすめ。
 
換気扇は数年でずいぶん進化しているので
音が静かになり、換気性能もよくなります。
 
センサー付きの製品も増えています。

●人感センサー
トイレなどに設置され、
人がいると強運転に、
いなくなってしばらくすると弱運転に
自動で切り替わる。

●湿度センサー
設定湿度を超えると自動的に強運転に。
洗面室や室内干しに最適。

●温度センサー
設定温度を超えると自動的に強運転に。
夏にぴったり。

●雑ガスセンサー
タバコの煙を感知して自動的に強運転に。
製品代+工事費が必要ですが、
今あるファンを取り替えるだけなので
工事費はそんなにかかりません
(天井設置、ダクト式の場合を除く)。

音や性能が気になっているなら
ぜひ検討してみてほしいと思います。


 


第1種熱交換型なら
確実に換気できるほか、
室温を快適に維持できます。

第3種は音や室温の変化が
気になる場合はありますが、
低コストで常時換気できます。

それぞれに
メリット・デメリットがありますが、
どちらにしても
24時間換気システムがあれば
それだけで2時間に1回
家全体を換気できます。

極端な話、まったく窓を開けなくても
換気できるわけなのでとっても便利です。

最後に「こんなものもあるよ」という
製品をご紹介しましょう。

まずは給気口付のサッシ。
サッシに換気框(かまち)が付いていて、
スリットを開けると換気できます。

24時間換気に対応した製品もあり、
適切な換気容量を満たせば
給気口をつけなくてよくなります。

「見た目的に給気口がイヤだなぁ」
という場合は検討の余地ありです。
画像はYKKap様サイトより拝借
においが気になる場所では
脱臭機能「ヘルスエアー」を付加した
ロスナイという手もあります。

0.1~2.5μmの粒子を
除去する機能もあるので、
花粉やPM2.5対策にも有効です。

換気システムに
これらの機能を付加すれば、
よりよい空気環境で生活できます。

空気環境にも気を配る時代、
気になることがあれば
住宅会社や設計士さんに
相談してみてください。