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中庭のある家のメリット・デメリット


 
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回のテーマは「中庭のある家」です。
 
いま、住宅の事例検索といえば
InstagramかPinterestです。

試しにインスタで
「中庭」と検索すると10万件がヒット、
「中庭のある家」でも2.6万件の
投稿があります(2020年2月現在)。
 
さらに住まいとインテリアの
ポータルサイトHouzzで
「中庭」と検索すると
58万件がヒットします。

暮らしを豊かにする選択肢のひとつとして
中庭は人気があります。

ですが、実際には中庭のある家って
それほど多くはありません。

というのも、中庭はどうしても
コストアップにつながりますし、
うまく使えないと
もったいないことになりがちなんです。
 
そこで、まずは
中庭のメリット・デメリットと
採用するとよい敷地条件を確認。

中島工務店の施工事例の中から
中庭のある家をピックアップし、
それぞれ中庭を設けた目的と
こだわりポイントを確認。
 
さらに中庭をつくるときに
気をつけたいことを確認します。

結論としては、中庭をつくると
プラスアルファの費用がかかる
→やるのなら目的をしっかり考えて
設計士に相談しよう!です。


この記事でわかること

 

□ 中庭のメリット・デメリット
□ 中庭を採用したい敷地条件
□ 中庭のある家の事例


メリット①
光や風を取り込める

中庭があると、
暗くなりがちな家の中心部にも
光と風を取り込めます。

特に住宅密集地の細長い敷地では
中心部の採光・通風が課題ですが、
中庭をつくればそれを
解決しやすくなります。

 
メリット②
外とのつながりとプライバシーを両立

自然を感じて暮らしたい
という人はたくさんいますが、
前庭や裏庭で過ごしていると
近隣や通りがかる人の目線が気になります。

そんなときに中庭があれば、
周囲の目線を気にせず
外で存分に過ごせます。

子どもを安全に遊ばせたり、
人目に触れずに洗濯物を干したり
という用途にも最適です。


デメリット①
建築費用が高くなる

中庭をつくるためには四角い建物を
わざわざ凹にしなくてはいけません。

その分、外壁や窓が増えるので
どうしても建築費用が高くなります。


デメリット②
光熱費が高くなる

採光や通風が目的である以上、
中庭には大きめの窓を
つけることが多いです。

窓は日射熱や涼しい風を
取り入れるのに役立つ一方で、
室内の暖かいor涼しい空気を
逃がしてしまう断熱の弱点でもあります。
 
そのため中庭があると、ない場合に比べて
冷暖房費(光熱費)が
余分にかかりやすくなります。

 

建築費用も光熱費も高くなる・・・。
 
なかなか大きなデメリットですが、
それでも中庭を採用したくなるのは
中庭のメリット
=採光・通風、プライバシーを
取り入れたい敷地
です。

具体的には
①都市部
②住宅密集地の細長い敷地
です。

都市部や住宅密集地では
前面道路に人通りが多かったり、
隣家が近かったり、
近隣のマンションやビルから
庭が覗き込めたりなど
プライバシーが気になる敷地が
めずらしくありません。

そんなときに三方あるいは四方を
自分の家で囲まれた中庭なら
周囲の目を気にすることなく過ごせます。

細長い敷地では、
採光・通風にもとても有効です。
まあ、だいたい想像通りですよね!
でも、実際に
そんな家を見たことがありますか?

中庭は建築費用と光熱費両方が高くなるので
実際につくる人はそれほど多くありません。

ということで、
中島工務店の施工事例の中から
中庭のある家をいくつか取り上げて、
その目的と設計のポイントを
見ていきましょう。
 

まずは最も中庭を有効活用できる、
細長い土地の事例をご紹介。

道路のある南側に
リビングを配置するのが
常道かもしれませんが、
そうすると北側の使い勝手が
限られてしまいますし、
道路からの目線も気になります。

そこで敢えて少し奥に玄関を配置。

中庭を設けて、北側のリビングに
光と風が届くようにしました。

中庭に面したリビングを吹抜けにしたので
部屋全体に明るい光が射し込んできます。

中庭のウッドデッキは
リビングの床と同じ高さ。

木塀と建具で囲んでいるので、
周囲の目を気にせず過ごせる
アウトドアリビングになりました。

玄関とのつながりはこんな感じ。

中庭を上手に利用して
間取りに活かした事例です。



鑑賞用の中庭をつくりたい
というケースもよくあります。

まずはこちら。

玄関アプローチから
中庭へのつながりを重視し、
「旅館のような家にしたい」という
希望をカタチにしました。

このアプローチの奥に
こんな中庭があります。

見てもらうとわかる通り、
この庭はリビングなど
主要な部屋には面していません。

採光や通風のためでなく、
本当に「自分が帰ってきたときに
こんな風景に迎えてほしい」
という願いだけを叶えたものです。
 
中庭を演出に活用した事例だといえます。

 

こちらも観賞用の庭の一例ですが、
「お風呂から庭を眺めたい」
という希望を叶えたケース。

お風呂という場所の性質上、
庭が外からの目線を遮るように
できていなくてはいけません。
 
裏庭で周囲を木塀で囲むといった
方法もありますが、
こちらでは中庭を活用しました。

中庭と浴室、
ほかの部屋の位置関係はこんな感じ。

実はこの家には中庭が2カ所あり、
上図でピンクの方の中庭が
浴室に面しています。

まわりにウッドデッキを設えて、
リビングからも出入りが
できるようになっています。

リビング側から見たところが
こちらです。

少しわかりにくいかもしれませんが、
画像右端が中庭です。

お風呂側から見るとこうです。

入居後に中庭に木を植えられたので
今はお風呂から緑を楽しめます。

ところで、この配置だと
リビングからお風呂の中が
見えるんじゃ???と
心配になりますよね。

実際に行くと、絶妙な位置関係で
お風呂の中は見えませんので
ご安心ください。

こちらのお住まいには
もうひとつ中庭があるので、
ご紹介しておきましょう。

先ほどの簡単な配置図で、
色がついていない「中庭」の方です。
矢印が道路から家へのアプローチですが、
インナーガレージと中庭を通り抜けて
玄関に至ります。

上の画像は
ガレージ側から玄関を見たところ。

手前の格子戸がガレージの戸で、
そこから玄関までのあいだが中庭です。

この画像では少しわかりにくいですが、
ここにも植栽があって
気持ちのいい空間になっています。

中庭が奥行を演出している事例です。

 

 


リビングや和室、各居室を
中庭に面して配置することで
空間のつながりをつくった事例です。

リビング側、和室側から見ると
それぞれこんな感じ。


中庭の向こうにお互いが見える、
ほどよい距離感になっています。

2階の居室もすべて中庭に面していて、
家族の存在がほんのりと感じられる
位置関係です。

 

 


ここまでに見てきた
メリット・デメリットと事例を踏まえて、
中庭を考えるときに気をつけたいことを
まとめておきます。

一番言いたいのは、
目的と完成イメージを
はっきり持っておこう!

です。

デメリットのところでもお話ししましたが
中庭をつくると
建築費用も光熱費も高くなりがちです。

具体的な使い方を考えずにつくって
使わなくなってしまうと、
もったいない空間になってしまいます。

中庭には植栽やウッドデッキを
配することが多いですが、
これらもお手入れをしないと
残念な見た目になってしまい
「つくらない方がよかった」
という結果になりかねません。

まずはとにかく何のために
どんな中庭をつくるのかをよく考えて、
設計士に相談しましょう。

その上で、
もう少し細かい注意点を見ていくと
 
①近隣との距離感、位置に注意しよう

中庭の位置が隣の家のリビングの前などに
ならないよう注意しましょう。

特に鑑賞用や
アウトドアリビングとして使う場合には、
中庭を眺めたりそこで過ごしたりするたびに
お隣さんと目が合う・・・
なんてことになってしまいます。
住宅密集地ではそれほど
位置が選べない場合もありますが、
そのときには木塀や植栽で目隠しするなど
お互いのプライバシーが保てるように
配慮しましょう。

②西側は西日に注意しよう

西側に中庭をつくると、
西日をまともに受けてしまいます。

どのくらい隣家の陰になるかにもよりますが
陽当たりがよさそうな場合には
避けた方が無難です。

周辺環境しだいですが、
南北に長い家なら
できれば東側を優先的に検討した方が
使いやすい空間になるでしょう。
 
③日陰に強い植栽を選ぼう
 
中庭は陽射しが入る時間が限られているため、
植栽は日陰に強い種類を選びましょう。

事例②でご紹介した
鑑賞目的のお庭には比較的日陰に強い
モミジが植えられています。
照明と相まって、
旅館っぽさが増していますよね。

どんなイメージにしたいかと
合わせて検討しましょう。

また植栽がある場合は
水やりをしなくてはいけませんので、
水栓も必須です。

事例②のモミジの現在
大きく育っています
④ロの字の中庭は
特に陽当たりに注意しよう

今回ご紹介した事例は
すべて建物がコの字型の配置でしたが、
ロの字型で真ん中に
中庭をつくる方法もあります。
 
ただ、ロの字のときには
コの字のときよりさらに
陽当たりが悪くなりやすいので
注意が必要です。

それなりに広さがないと
暗くて寒い空間になってしまうことも。

コの字の場合もそうですが、
ロの字の場合は特に、
住宅会社に陽当たりと風通しを
シミュレーションしてもらいましょう。