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2022年最新版!施主支給の注意点

住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。

今回のテーマは
「施主支給」です。

以前の記事では
施主支給に向いているもの・
向いていないものを紹介しました。

こちらの記事で解説した通り、
基本的に施主支給に向いているのは
照明器具、カーテン、エアコンなど
製品を取り付けるだけ
のもの。

配管・配線などが複雑で
住み始めてから故障した場合に
原因の追究が難しいものは
施主支給に向いていません。


ですが、
最近では衣類乾燥機やキッチンなど
配管・配線が必要な製品を
施主支給したいという要望も増えています。

そこでこの記事では
特に人気のある幹太くん、
サンワカンパニー製品の施主支給の注意点、
さらに施主支給で設備工事が必要なケースで
起こりがちな失敗例をご紹介します。

中島工務店で実際に起こった事例も
紹介しますので
施主支給を検討中の方は
参考にしてください。




この記事でわかること
□ 幹太くんを施主支給するときの注意点
□ サンワカンパニー製品を
  施主支給するときの注意点
□ 施主支給でよくある失敗例と注意点



 
目次


1.施主支給とは
2.幹太くんを施主支給するときの注意点
3.サンワカンパニー製品を
  施主支給するときの注意点

4.施主支給でよくある失敗例と注意点

5.施主支給を成功させるために
  住宅会社からのお願い


 


施主支給とは
住宅設備機器や建材などを
お施主様が自分で購入して
住宅会社・工務店に支給することです。

<施主支給の役割分担>
■お施主様
製品の購入、現場への運搬手配・受取・検品
■住宅会社・工務店
製品の取付


住み始めてから
万が一故障した場合のメンテナンスも
施主支給品はお施主様が
直接メーカーや販売店に
修理・メンテナンスを
依頼することになります。



最近の幹太くん人気はすごいですね!

幹太くんを施主支給するときに
注意したいのは
設計の早い段階で
住宅会社に相談すること
です。

幹太くん設置には
このあと解説するような
いくつかの注意点があります。

これらの注意点を
あらかじめしっかり相談して
設計に組み込んでおけば設置で
ほとんど問題は起こらないはずなので
とにかく早めの相談が肝心です。
幹太くんの施工上の注意点は
次の4点です。


<幹太くん施工上の注意点>
①ガス配管(ガスコンセント)
②排湿ダクトスペースの確保、
 天井を通る場合は点検口も必要
③本体左右と上に45mm以上のスペース確保


幹太くんは電気で動くガス衣類乾燥機なので
電気とガス両方のコンセントが必要です。

電気コンセントは位置さえ決めれば
特に問題ありませんが
ガスコンセントは
どこにでも設置するものではないので
あらかじめ設計に組み込んで
ガスを配管
しなくてはいけません。

さらに幹太くんは
乾燥で生じた湿気を配管を通じて
外に排出するため、
直径80~100mmの排湿ダクトを
本体から上へ抜く
必要があります。

洗濯機の上に幹太くんを設置したら
そのさらに上へ、
床置きならその上の家事スペースや
収納スペースの一部に
排湿ダクトを通すスペースを
つくらなくてはいけません。

ダクトが天井を通る場合には
点検口も必要です。

また、防火上の理由で本体の左右と上に
45mm以上のスペース
も必要です。

もうひとつ、外部の排気位置にも
注意しましょう。

外壁のどこかに排湿ダクトが出てくるので
隣家との関係や外壁の色などとのバランスも
あらかじめ考慮する必要
があります。

施工上の注意点に加えて
間取り・動線・インテリアデザイン、
さらには外観も含めて
検討しなくてはいけないので
設計への影響が大きいといえます。

これらの打合せがしっかりできていれば
幹太くんの施主支給では
大きな問題は起こりません。

ところで
施主支給でなくても私たち住宅会社に
「幹太くんを取り付けたい」と
言っていただければ、
もちろんフツーに設置できます。

幹太くんは住宅会社を通す場合に比べて
施主支給が必ずしも安くなるとはいえません。


できれば
①通常通り住宅会社を通じて手配する場合
②施主支給の場合
の両方の見積もりをとってみる
のが
おすすめです。



サンワカンパニー製品も人気があり、
施主支給したいという
お客様が増えています。

比較的安価でシンプルなデザインと、
水まわりから家具・照明・床材・
内装材・エクステリアまでカバーする
幅広いラインナップが人気の理由でしょう。

しかも一般のお客様も
オンラインショップを通じて
簡単に購入できるので、
施主支給が増えるのも納得です。
サンワカンパニー製品を施主支給するときに
注意したいのは部品・部材の確認
です。

設備機器はお客様が思っている以上に
たくさんの部品・部材を使用して
設置します。

お客様にとって
「キッチン一式」に見えるものも、
実際にはワークトップ、シンク、
水栓、コンロ、収納、扉など
たくさんの部材の集合体で、
さらにそれらを取り付けるための
たくさんの部品が必要です。

施主支給では部品・部材の
なにかが足りないケースがよくあります。

中島工務店で実際にあった事例を
3つご紹介します。


事例①
キッチンのコンロの左右位置が誤っていた


サンワカンパニーで購入した
キッチンが現場に届いてみたら、
コンロの位置が左右違っていたケースです。

これは現場ではどうすることもできません。

いったん返品して正しい製品を
再納品してもらうしかなくなりますが、
発注が間違っていた場合は
交換にかかる費用は
お施主様が追加負担するしかありません。


事例②
キッチンの水栓の穴が開いていなかった


サンワカンパニーのミニキッチンを
「水栓なし」で購入したケースです。
購入したキッチンに
もともと所有している水栓を設置したい
というのがお施主様の希望だったのですが
水栓なしで購入したキッチンには
水栓を設置するための穴が
ありませんでした。

となると
現場で穴をあけることになるんですが
水栓も一緒に購入していたら付属する
配管カバーもありませんでした。

穴をあけて配管カバーをつくるところまで
現場で対応しましたが、
いつでもどんな製品でもそうできるとは
限らないので注意が必要です。


事例③
タイルの施工用モルタルが合わなかった


サンワカンパニーのタイルを
施工用モルタルもセットで
購入したケースです。

モルタルを塗った上に
タイルを貼っていくのですが、
セットで届いたモルタルが現場の下地には
しっかりくっつかないことがわかり、
タイル施工業者が用意した
モルタルを使用して設置しました。

先ほどの水栓の事例と逆で、
関連部材まで一緒に買ったのが
逆に無駄になったケースです。

なおタイルを購入するならタイルのみで
モルタルは施工業者に任せた方が安心です。
 
普段よく購入するもの、
例えば衣類なら素材やサイズ、洗濯表示など
買うときに見るべきチェックポイントが
よくわかっていますが、
おそらくは人生で初めて購入する住宅設備で
必要なことをすべて確認するのは
とても難しいものです。

特に注文住宅は1軒1軒状況が違い、
すべてを最適な状態で揃えるのは
特に難しいといえます。

サンワカンパニー製品を含めて
設備機器を施主支給するなら、
部品・部材を住宅会社に相談してから
発注しましょう。

中島工務店は設計の一環として
そうした相談にも対応しますが、
会社によっては施主支給品の相談は
別途費用がかかる場合もありますので
ご注意ください。



ここからは施主支給でよくある失敗例として
当社の事例をご紹介します。

住宅会社として
お恥ずかしい事例もあるのですが
施主支給ではあり得ることなので
参考にしてみてください。


■照明の取付部材が製品と合わなかった

施主支給された照明と取付部材が
合わなかったケースです。
天井にガチャっとはめるアレです。

取付部材には種類がいくつかあり
それが支給された製品と合わず
そのままでは設置できませんでした。

このくらいであれば
なんらかの方法で設置しますが
部材が合うならその方がいいので
あらかじめ住宅会社と
しっかり確認しましょう。

なお、そもそも取付部材が
別売りのものもありますので
注意してください。


■コルクタイルの施工方法を間違えた

これは中島工務店のミスです。
施主支給されたコルクタイルの
施工要領書をよく読まずに
ふだんと同じように施工したところ
施工方法が誤っていて
接着が不十分で貼り直しになりました。

初歩的なミスでお恥ずかしい限りですが
実はよくあること。

どの施工業者もよく使う製品と
やりなれた施工方法があり、
ふだんと違う製品でも
ついついよく確認せず
いつも通り施工してしまいがちです。

これは住宅会社側の問題ですが
起こりえることとして
知っておいていただくとよいと思います。


■エアコン配管の径が合わなかった

エアコンには配管がありますが
実はエアコンの容量
(6帖用とか12帖用とか)によって
配管の径(大きさ)が違います。

お客様がエアコンを施主支給する場合、
配管だけは工務店が先に
施工しておくことがあります。

特にあとから配管するのが難しい
2階ではそうすることが多いのですが、
あるお客様のお住まいで購入された
エアコンの容量が大きく、
配管の径が合わなかったことがありました。

もちろんやり直しましたが、
あらかじめ綿密に打ち合わせをしておけば
防げたケースだといえます。

なお、ダイキン工業のエアコン
「うるるとさらら」は
加湿機能のためのホースがあるため、
一般的なエアコンより
大きな配管が必要です。

うるさらを設置したいなら、
特に早めに伝えましょう。

■タオル掛けの取付位置に下地がなかった

タオル掛けやペーパーホルダーなど
小さなものをつけるのにも
下地が必要なのですが
事前に「だいたいこのあたり」と
聞いていた位置に
下地を入れていたにもかかわらず
実際に製品が届いたら取付位置が
変わってしまったケースです。

オンラインショッピングでは
現物を見ていないので、
現物を見たときに「こっちの方がいい」
となるのはあり得ることです。

が、下地がないところには
取り付けられません。

もともと予定していた
下地のあるところに
取り付けるしかありませんので、
ちょっとだけ希望と違いますが
ご理解いただきました。
 
このように施主支給では
思わぬ不都合が起こることがあります。

こうした不都合は、
住宅会社・工務店が
詳細を把握していないために
起こることが多い
ので、
施主支給ではとにかく
住宅会社・工務店と
十分打ち合わせをするのが大切です。



最後に施主支給をスムーズに行うために
住宅会社からのお願いです。

①早めに・具体的に相談を
繰り返しになりますが
とにかく住宅会社に
早めに・具体的に相談してください。

住宅会社が専門家です。
「こうしたい」という希望を聞けば
よりよい対応策を考え、
施主支給よりよい案を
出せることもあります。

②検品はお施主様ご自身で
輸送中に製品が破損するのは
めずらしくありません。

施主支給の場合、
破損した製品の返品・交換も
お施主様自身で
やっていただくことになります。

輸送中に破損したのか
現場で破損したのかわからないと、
住宅会社とお施主様の
トラブルの原因になります。

届いた製品はお施主様自身が
受け取り検品までしていただくと、
お互いに安心できます。

なお特に高価なものや一点ものは、
現場までの運搬も
お施主様にお願いしたいところです。
 
「おしゃれなものを使いたい」
「コストダウンしたい」と
増えている施主支給ですが、
やり方によっては
住宅会社との信頼関係に
ひびを入れる恐れもあります。

特に私たち住宅会社が
見積もりを提出した後に
同じ製品を施主支給にしたいといわれると
正直いって困ってしまいます。

また配線や配管が多く、
のちのち故障したときに
トラブルになりやすいものも
できれば施主支給は避けてほしい
と思ってしまいます。

施工費まで入れると
必ずしも施主支給が安いとは限らないのも
念頭に置いていただき、
率直に・早めにご相談いただくのが
家づくり全体をうまく進めるコツだと
いえます。