木を植えること 2 (森林の機能と異常気象)

新聞やテレビで、森林が荒廃しているという報道がされることがあります。日本の森林の現状を「荒廃している」という表現が果たして適正なのでしょうか。私は、いつも皆さんを森林に案内して、「人間に例えれば大学3年生くらいでしょう。」と話します。これまで苦労して育ててきた森林を人間にたとえて、「あと少しで社会の役に立つ。」ことを期待しているからです。日本の森林面積は2,500万haで、そのうち1,000万haは私たちの祖先が大切に育てきたスギやヒノキの人工林です。この森林がいま、保育期間を過ぎて最終の間伐(密度調整)が必要ですが、この間伐が進まない現状を「荒れ放題」と表現されているのです。収穫が間近となった貴重な森林の間伐が何故進まないのか。その一番の理由は、1960年代に木材の貿易が自由化され、安い外材が大量に輸入されるようになって日本の林業が成り立たなくなり、森林の保育ができなくなったのです。それでも、森林の多くを森林組合等が整備のために国の補助金を受け、何とか採算のとれるところの間伐を進めています。それは、林道に近い個所に限定され、間伐木の径級が細いものや搬出距離が遠くなると、貴重な資源である木材も放置せざるを得ないのです。さらに重要なことは、間伐などの保育が十分でない森林は、造林木の密度が高まり下層の植生が貧弱となり、降雨などで大切な森林の表土が流亡してしまいます。ましてや、これまで観測されなかった70mmあるいは100mmを超すような集中豪雨が頻繁に発生すると、いくら水瓶の機能を持った森林でもその能力の限界を超えてしまい、地形や地質によっては山崩れなどの災害となるのです。スギやヒノキを植林し過ぎたから災害が起き易くなったと、その原因を全て人工林に押しつけられるのは困ります。地球上ではここ数年、豪雨(洪水)、少雨(干ばつ)、強い台風、豪雪など世界各国で異常気象による自然災害が多発しています。日本でも、相次ぐ台風の接近や、各地で発生している集中豪雨による山地崩壊の災害は、人命までも奪う大きなものとなっています。また一方では極端な少雨で水不足が起きています。これらの異常な気象の現象は、地球温暖化等の地球環境の変化によるものと言われています。こうした激しい気象の変化によって発生する山地崩壊や土石流災害は、私たち国民がつくり上げた人工林で多発するばかりではありません。日本の森林は、歴史上経験をしたことがないほど多くの木材資源ができあがりました。この貴重な資源を有効に利用するとともに、再び私たちの手で国土保全や水源の貯蔵庫となる森林を健全に育てることが、災害のない美しい地球環境を守ることになるのです。