天然更新・その力
(私たちが目にする森林は人工林ですが、昔から森林は全て自然の力で)

今回は、森林が自然の力で蘇ることについてお伝えします。森林が人間によって伐採されたり、山火事で燃えてしまったりして裸地になったあと、自然の力で森林に再生することを天然更新といいます。私たちが住む地球では年を通して雨が降らない砂漠地帯を除いて、森林は自然の力でできあがります。樹種によって結実(実をつける)の周期があり、例えばブナは7年、ヒノキは4年に1回の豊作年に実をつけます。こうした種子が地表に供給され、その多くを熊やリス、鼠などの動物や鳥、虫に食べられるものもありますが、翌年に発芽するもののほかは土壌の中で眠って(休眠状態)います。森林が伐採され、陽光が射し込むなど種子が芽を出しやすい環境になると、これらの種子が育って森林が再生するのです。日本の針葉樹のなかで最も天然更新が容易に行われる樹種はアカマツで、日当たりのよい斜面ではアカマツ林の跡地に再びアカマツの稚樹が一斉に発生します。一般的には最初に発芽してくるのはパイオニア植物で、中部地方ではクマイザサ等が一斉に繁茂します。時間の経過とともに植物が移り変わって森林が回復します。先日、私の山からシイタケ原木のナラを伐採したいと木材業者さんがやって来ました。この山は、私が子供の頃まで祖父や父が採草地として毎年萱を刈っていました。祖父や父が亡くなり草を刈らなくなって40年以上経過し、その間に採草地になる前のナラ林になったのです。標高は600~700mで、こうして回復した森林がすべて元と同じかどうかは、また別の問題がありますが、一般的には本州中部のこの山は、里山ですからミズナラやコナラが中心の落葉広葉樹林が多かったのでしょう。それよりさらに昔はおそらくミズメ、トチノキが混じった木曽ヒノキの森林であったと考えられます。祖先が伐採し、繰り返し草が刈られ、その間に土に埋まったナラ類の種子は眠っていたもの、発芽してもそれを草と一緒に刈り取られるものがあったのでしょう。草刈りを止めて長い期間が経過し、ようやく芽を出したもの、毎年刈り取られていたナラの株から萌芽(切株の脇から出る枝)でナラ林となり、シイタケの原木の大きさに成長したのです。原木代金をいただく代わりに、再びミズナラやコナラが育ち易いように、伐採した木の枝や葉を整理し、雑草も刈払う手入れをお願いしました。40年以上の長い時間をかけてできたナラの広葉樹林が伐られても、再び素晴らしいナラ林に蘇るように。
(中島工務店 総合研究所長 中川 護 )