私たちの国・日本は、「木の文化」といわれるほど木材を通じて生活や文化を継続して発展させてきました。しかし、せっかく豊富な森林資源が収穫期を控えているにもかかわらず、採算性がとれないことから山林は手入れされず、国民も木材使用から遠ざかっている現状があります。世界的にも優れた日本の木材を利用することこそ、地球環境にも有効であり、持続可能な社会を維持につながるはず。そのためにも、国産材を有効に活用できるよう努めていきたいです。

公共・民間、双方の立場から山を見守ってきた人生。

中島工務店に入社する以前、私は国家公務員として長年森林・林業行政に関わり、森林づくりに携わってきました。現在日本はかつて経験のないほどの森林蓄積を持つまでになっています。しかしそれに反して、森林・林業等の木材に関する業界は低迷し続け、山村では高齢化とともに限界集落が生れてきました。私は常々、これは単に林業の問題ではなく山村問題であると認識し、山村を元気にするためにはこの貴重な森林資源を有効に使うことが必要であると訴え続けてきました。そして、再び山村が振興し、森林にも還元されることを願って、木造建築を主として地域に貢献する中島工務店で、残りの人生を送りたいと考えたのです。生涯のほとんどを森林に関わって過ごしてきましたが、動物、植物、地形や地質などさまざまな分野で、山はまだまだたくさんの感動や不思議を与えてくれます。それまで公務員として人生を送ってきた私が再びこの会社に就職したことで、民間の立場から山に関わることができる大きな勉強の場を与えられたことに、日々感謝しています。

木は人と地球をより豊かにする。

木材の良さは、すでに多くの研究が進み、他の材料と比べて人間の生活上、最も優れていることが明らかになってきました。中でも木材の主たる利用は、なんといっても木造住宅。木造住宅での暮らしは、たんに防音や防湿、断熱等の機能に優れているだけでなく、住宅が住まいという道具を超えて豊かな人間形成の場になるほど、人に及ぼす計り知れない効果があると考えています。加えて、現在異常気象をはじめさまざまな現象を生んでいる地球温暖化についても、森林・木材は問題解決において欠かせない存在です。理学的性質だけでなく、私たちの生活になくてはならないものとして、木材や森林を考えていかなければならないと思います。

木とともに生きる地域を守り続けるために。

加子母地域は、太平洋側と日本海側の両方の気候的要素を兼ね備えており、植物層も非常に厚く豊富です。ことに加子母はヒノキの郷土と呼ばれるくらい、ヒノキが古くから生息。現在の人工林ヒノキにおいても他地域に比べて良好な生育を示し、優れた品質のヒノキの生産と国内屈指の成長量につながっています。またヒノキが生育する立地は、傾斜こそ急峻なものの積雪量は少なく、一年を通じて仕事がしやすい環境にあります。この自然産物を有効的に享受し、産直住宅産業として地域振興を図ることはとても理に適っており、住民の就労の場を確保していくことこそ、社会貢献だと考えます。

木は人と地球をより豊かにする。

日本では、木材供給量の約20%程しか国産材が使われていませんが、今では外国から木材を輸入しなくても、供給量は国産材でほぼ賄える蓄積ができました。いま、持続可能な社会の維持が求められています。森林を大切にして、いつまでも木材がなくなることがないように上手に利用することによってそれは実現します。 私が生まれ育った家は100年を超え、子供の頃に祖父が天井に使われている木材の1本1本を、「あの木はどこの山から伐って来た、どのようにして出してきた」と話してくれました。木材の年輪でできた模様が今でも思い出されて懐かしい。童謡の「柱の傷は一昨年の」とあるように、柱や壁に付けられた傷が生活に馴染んでいました。私たちが、大切に守り育て磨き上げてきたことを「文化」とすれば、「木の文化」または「木のある文化」をさらに引き継ぎて行きたい。森林や木材が私たちからは遠ざかってしまいましたが、生活に木材を取り入れ、快適で文化的な生活の再生を生涯の仕事としたいと思います。