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瓦家族の物語。

投稿日/ 2010年11月19日

2010年11月19日(金)

引き続き好天に恵まれ、瓦工事日和が続いています。「愛宕Ark」では、今週始めから始まった瓦工事も今日が大詰めです。それでは順を追ってご紹介します。

まず瓦の素材から。瓦には、大きく分けて二通りあります。「いぶし瓦」と「陶器瓦」です。日本家屋の瓦屋根の大半は陶器瓦です。表面に釉薬(ゆうやく)を塗って焼成する瓦で、中身はレンガ色です。こちらが比較的安価。

一方「いぶし瓦」は、その名の通り艶のない灰色です。こちらは中身も同じ色です。陶器瓦に比べ焼成温度が高く、寿命が長い。社寺建築ではほとんどがいぶし瓦を採用しています。もちろん「愛宕Ark」でもいぶし瓦を採用しています。

次に仕様。軒先瓦、袖瓦、棟瓦と、数ある特殊部分の瓦の仕様は果てしなくあります。その中で「愛宕Ark」の軒先は「一文字」と言い、そのシンプルなラインが特徴の上質な仕上げです。一文字瓦は既製品の瓦を削り合わせる加工が必要な場合がありまして、予め工場で削り合わせ現場で伏せて仕上げます。安江瓦店さんの一文字職人と言えばこの人、美和子会長!

瓦の屋根大部分を「平部」と言い、何も細工や加工をせず伏せていく瓦です。この部分は応援を頼んで人海戦術。こちら熊沢孝樹(こうき)さん。先日まで愚渓寺さん(可児郡御嵩町)の屋根を手掛け、この後は妙光寺さん(愛知県一宮市)へ向かいます。ちなみに弊社の屋根瓦は全数ステンレスビス留めが標準。阪神淡路大震災後の神戸市周辺でお仕事をさせて頂いてきた安江さんと弊社の拘りの一つです。

こちら袖瓦。職人さんによって伏せ方もまちまちですが、安江瓦店さんの場合、一枚一枚削りつけて伏せて行きます。 

「このラインが揃わないと嫌なんです。」とジョージ君。 選択肢があると必ず手間の掛かる方を選んでいると言っても過言ではありません。

そして昨日から、瓦工事の最終段階とも言える棟積みが始まりました。棟積みには欠かせない安江瓦店さんオリジナル製品「雨シャット」。瓦工事専用の土を南蛮漆喰(なんばんじっくい)と言いまして、砂・石灰・マニラスサ・シリコンで構成されています。この「雨シャット」は寒冷地用に配合を調整したものです。色は白と黒があり、いぶし瓦の色に合わせて調色中。

美和子会長とジョージ君。そのコンビネーションはなかなかのもの。美和子会長曰く、「旦那と喧嘩しなくなったと思ったら今度は息子と」とニコニコ。

少々時間を巻き戻しまして、紹介したい部材があります。通称「耐震棟」。文字通り地震に耐える棟を造る芯です。

耐震棟を屋根の野地板にビス留めし、鉄筋を通し、鉄筋に銅線を結び付け、のし瓦を一枚づつ結束して行きます。

  

通常の棟は、のし瓦を南蛮漆喰で固め、野地板に止め付けた銅線で棟全体を結んでいる場合がほとんどです。しかし地震で揺すられると、露出して劣化している銅線が切れ、棟ごと屋根をゴロゴロ転がって来た事例が報告されています。見た目ではそれほど違いのない棟であっても似て非なるもの。耐震棟は、被災時にその真価を発揮するでしょう。安江さん、不謹慎ながら「早く地震来ないかな」なんて思ってません? 

これは瓦工事専用の水平器。専ら社寺建築の屋根瓦工事に用いる道具です。十数段もある社寺の大きな棟では、より高い施工精度が求められます。弊社の社寺建築の屋根も手掛ける安江さん。「水平器を使いだして、住宅の棟もよりきれいにふけるようになった」とジョージ君。社寺の屋根瓦の技術が住宅の屋根瓦にも活かされています。

こちらが「愛宕Ark」の鬼瓦。「カエズ」鬼と言います。サイズは7寸(約21cm)です。最もシンプルな鬼の一つですが、弊社の「現代民家」のシャープな瓦屋根には必需品です。 

さて、クライマックスは棟積み。4段の「透かし積み」です。のし瓦相互に隙間を設け、そのラインの存在感を楽しむ積み方です。一段一段に矢をかって隙間を造りながら積んで行きます。

透かし積みには機能的な利点もあります。のし瓦に降った雨が毛細管現象で瓦の間を伝ってしまう場合がありますが、透かし積みではのし瓦の隙間が水を切るように働きます。

ざ~っと紹介しましたが、瓦揚げからここまでで約1週間。シンプルな切妻屋根で、応援のおかげもあり、屋根面積の割に比較的手早く工事が終わりそうです。

瓦工事。今回ご紹介したのはそのほんの一部です。これまた奥の深い仕事です。

最後に。美和子さんには「会長会長ってからかうな!」と怒られました。この業界で、できたオカミさんを「会長」と称するのは私だけじゃないですよ。ねっ、会長!

中島 大地