プロが教える家づくりのヒント HINT

家づくり

住宅の工場見学・産地見学は
行った方がいいの?


 
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回のテーマは
「住宅の工場見学・産地見学」です。
 
住宅の工場見学というと、
まず大手ハウスメーカーさんを
思い浮かべるでしょうか。

量産型メーカーでは
工場で製造した部材を現場で組み立てるので
工場はまさに家づくりの現場です。

工場見学用の施設や
プログラムも充実しており、
製造工程はもちろん、
構造や性能についてもわかりやすく
知る機会になっています。

一方、木造軸組工法で建てる
地域工務店でも工場見学を
実施している会社があります。

何を見学するのかというと
木材加工の工程、
すなわち山の木が家になるまでの
プロセス
です。

山にある木が住まいの柱になる
といわれても、
実際にそのプロセスを見ることは
ありませんよね。

それを自分の目で見ることができるのが
地域工務店の工場見学なんです。

自然素材である木を建築用材に加工するには
工場生産の部材を組み立てるのとは
まったく異なる技術が必要で、
その技術を見ることができる機会
というわけです。

そして、その木材が立っている
山を見るのが産地見学会です。

木の家づくりの始まりは山なので、
近くの山の木を使っている工務店では
産地見学も行っていることがあります
(遠くから取り寄せている場合は
見に行くのが難しいですから)。

木の家を建てるなら
一度は参加したい
工場見学会・産地見学会ですが、
初めての家づくりですから、
実際にどんなふうに開催されていて
何を見ればいいのかよくわかりませんよね。

今回は、
中島工務店の「水と緑の勉強会」を例に
どんな内容で、どんなところを
見ればいいのかご紹介します。


 

山の木が家になるまでのプロセスを見るのが
産地見学会・工場見学会の目的ですが、
じゃあ、それって家づくりを考える上で
何の意味があるの?というと。

これから何十年も暮らす住まいを
建てる会社が信頼できるかどうか
自分の目で見て判断してください

ということです。

工務店にとって
産地や工場を公開するというのは、
自分たちのすべてを
さらけ出すようなものです。

どんな材料を使っているのか、
どんな人が木を育てているのか、
どんな工場でどんな人が
木材を加工しているのか・・・。

建築現場で家づくりが始まる前の
ふだんお客様が目にすることがない
工程を全部見ることができるので、
本当にその会社に託していいのかを
考える機会にしてほしいと思います。


 


 

それでは具体的に
どんなことをやっているのか、
当社を例に見ていきましょう!

中島工務店の「水と緑の勉強会」は
年に2回、春と秋に
本社がある岐阜県中津川市加子母で
1泊2日で開催します。

山も製材所も木材加工工場も
すべて加子母にあるので、
すべての工程を
加子母の職人が担っている様子を
実際に見ていただきます。
 
例えば、前回2017春の行程は
こんな感じ
(※開催ごとに多少異なります)。
 


一般的な産地見学会・工場見学会で
訪れる場所に加えて、
木曽ヒノキ備林など
中島工務店ならではの
プログラムが盛り込まれています。

今回は、
一般的な産地見学会・工場見学会で
訪れる場所をまず見ていきましょう。


 
産地見学に当たるのがここ。
我が家を建てる木が
どんなところで育っているのかを
しっかり見てください。

見るべきポイントは、
手入れが行き届いた森かどうか。

間伐がされているか
(木と木の間に適度な空間があるか)、
枝打ちがされているか
(下の方の枝が伐り落とされているか)、
木の根元まで陽射しが入って
下草が生えているか・・・などです。

例えば枝打ちが適切にされていないと
建築用材にしたときに節が多くなるなど、
手入れの具合によって
材料の質が変わってきます。

木の生育のためには間伐が重要ですが
(根元まで陽射しが入らないと
十分育ちません)、
間伐のときにはよい木を選んで残すので
材料を選抜する意味もあります。

これらが適切に行われていると
質のよい材料だといえるので、
ぜひよく見てみてください。



大黒柱の森では
桧の伐採実演も行います。

50年以上かけて育てられてきた木を
伐るところから家づくりが始まる、
そう実感できる瞬間です。


●原木市場
伐採された木が
競りにかけられるのが原木市場です。

ここでは杉や桧が
実際にいくらで売られているのかといった
国産材市場の実態をお話しします。

何十年もてまひまかけて
育てられた木がいったい
いくらで売られているのか・・・
これを聞くと木の家を建てる意味が
またひとつ納得できるはずです。


●製材工場
原木市場で売られた木材は
まず製材工場で加工されます。

製材工場では、
丸太が皮をむかれて
建築用材になる工程を見学します。

山の木が職人の手で製材機械にかけられ、
きれいな建築用材になる様子を
ご覧ください。


●構造材加工工場(プレカット工場)
製材工場で製材された木材は
プレカット工場で
構造材として加工されます。

プレカットとは、
構造材を接合するための仕口を
あらかじめ機械加工しておくこと。

昔は大工さんが
ひとつひとつ手刻みしていましたが、
現代では加工精度が高く
工期短縮につながるプレカットが
一般的になりました。

工務店の多くは
外部のプレカット工場に
加工を依頼していますが、
中島工務店では
自社プレカット工場で加工しているので
その工程を見学していただきます。

仕口の加工はもちろんですが、
工場内が整理整頓されているか、
工場スタッフが
きびきびと働いているかなども
チェックしてみてください。

仕上げた材料も見ることができますので、
表面にカンナをかけた材料(化粧構造材)と
そうでない構造材の違いなども
ここで確認できます。
 

●造作材加工工場(造作工場)
製材工場で製材された木材が
加工されるもうひとつの場所が
造作工場です。

造作工場では、
床板、枠、家具など構造材を除く
すべての材料を加工しています。

完成したら見えなくなる部材の加工状態や
そのための様々な設備をご覧ください。

一般的に見学するところを
取り上げていますが、
他社の工場見学会では
造作工場を見学する機会は
少ないかもしれません。

工務店の中には造作材の加工は
大工さんに依頼しているところも多く、
その場合は大工さんが自分の作業場で
加工しているからです。

中島工務店ではその加工を
造作工場で一手に行っているため、
工場見学の一環として見ることができます。


●住宅施工事例
山→原木市場→製材工場→
プレカット工場→造作工場という順番で
山の木が建築用材として
加工されるプロセスを見てきました。

最後に見学するのが住宅施工事例です。

加子母にある、
当社が実際に建てた住宅を
見学していただきます。

水と緑の勉強会に参加されるお客様は
ほとんどが当社のモデルハウスや内覧会に
来場されたことがあるので
完成した住宅を見たことがあるわけですが、
ここまでの流れを知った上で見ると
また違った角度から
木の家が見えてきます。


 

 


ここまでは一般的な
産地見学会・工場見学会で
見学するところと見学ポイントを
ご紹介してきました。

次に、
中島工務店の水と緑の勉強会ならではの
見学先を簡単にご紹介します。


●懇親会
1日目夜の懇親会は
見学先ではありませんが、
中島工務店を知るために
とても有効な機会です。

お客様と当社のスタッフが
みんなでバーベキューや
加子母の郷土料理を楽しみながら
ゆっくりとした時間を過ごすので、
参加したお客様からは
中島工務店の社長やスタッフが
どんな人なのか、どんな社風なのかが
よくわかると言われています。

住まいのことだけでなく、
様々な話題で盛り上がるひとときです。

楽しみながら、
中島工務店に触れてください。


●社寺工場
中島工務店では社寺建築も行っており、
その加工場となっているのが社寺工場です。

住宅とは関係がないと
思われるかもしれませんが、
木造建築の根本である
伝統的な大工の手仕事が見られる施設です。
 
当社では新卒の大工見習は
必ず社寺建築から修業を始め、
大工のいろはを覚えます。

よそではあまり見ることができない
施設でもあります。


●木曽ヒノキ備林(神宮備林)
加子母にある国有林・木曽ヒノキ備林は
明治以降、伊勢神宮の式年遷宮の
御用材を供出する神宮備林として
大切に保護されてきた森です。

現代では式年遷宮の御用材のほか、
文化財の補修や
学術研究に寄与するための森林として
管理されており、
許可なく立ち入ることはできません。

水と緑の勉強会では
この木曽ヒノキ備林を訪れ、
樹齢数百年の桧など
貴重な森林を見学します。
 

水と緑の勉強会ではほかにも
天然記念物「かしも大杉」を見学したり、
地元の特産品が並ぶ
「かしも産直市・木端市」で
お買いものを楽しむ時間もあります。



 

 


当社の水と緑の勉強会を例に、
産地見学会・工場見学会の
おもな内容をご紹介してきました。

モデルハウスや見学会などでは見られない、
建築現場より前の家づくりを
知ることができるのが
産地見学会・工場見学会というわけです。

信頼できる会社かどうかを
判断するためだけでなく、
我が家のふるさとを
見るような機会ですから
「この住宅会社にお願いするかも」
と思うならぜひ参加するのがおすすめです。